音量やノイズに困ってる方へ 〜ミキサー/オーディオインターフェイスの基礎設定〜

「配信やってみたくてなんか分かんねぇけどオーディオインターフェイス買った」
「USBマイクからミキサーに乗り換えた」
「うまい設定方法が分からん」
「音が小さい」「ノイズがでかい」

とかいう方向けの基礎解説です。

音響いじるなら最低限このぐらい知っておこう。

※そもそも「機材の名前とか役割とか知らねぇよ 」という方はまずこちらを読んできてください。

音の流れを把握しよう

・ミキサーの構造は意外と単純

音響用のミキサーには、配信用の小さなミキサーから、コンサートで使う30chを超えるどでかい卓までいろんなものがありますが、どんなミキサーも基本構造は同じです。
みなさんが「オーディオインターフェイス」と呼んでいる機材は、ほとんどの場合オーディオインターフェイス内蔵ミキサーなのでミキサーの扱い方を把握しておく必要があります。
基本構造さえ分かれば怖いもんなんてありません。

ミキサーの最小単位は「チャンネル(ch)」です。
入力1系統のこと。すっごい雑に言えばマイク突っ込むところからボリュームつまみまでのセットのこと。
ちっちゃいミキサーはこのchの数が少なく、でかい卓ならchの数がすっごく多い。それだけ。
ほんとに基本はこれだけ!

ミキサーは、各入力chとマスターボリュームで構成されています。これだけ分かっときゃおおかた大丈夫です。

そして、入力された音は
マイク
→入力端子
→ゲイン調整
→イコライザー(EQ)
→各chのボリューム
→マスターボリューム
という流れで通っていきます。

・入力チャンネルの構造

1つのchの基本構成は以下の通り。
・入力端子
・入力ゲイン調整つまみ
・(あれば)イコライザー
・ボリュームフェーダーorつまみ
※ある程度ちゃんとした卓ならEQのつまみが多かったりAUX出力つまみがあったりすると思いますが、配信用にはまず使わないと思いますんで今回は無視しときましょう。

・入力端子
→マイクや楽器を突っ込むところ。キャノン(XLR)やLINE入力(モノラルフォン)なんかを突っ込むところです。音の入り口。コンデンサーマイクを繋ぐときはここからファンタム電源を供給します。

入力ゲイン調整つまみ
最初に入ってきた音声信号の強さを調整するところ。音が歪まないよう、声を張った時にすぐ側にあるclipランプがギリギリ点灯しないぐらいに調整します。
ここを決めたら後から触らないこと!
音量調節の際にここを触ってはいけません。

・イコライザー(EQ)
→3バンドEQであれば高音、中音、低音の量を、2バンドEQであれば高音と低音の量をコントロールして音色を決めます。
マスター出力後の混ざった音を分解して各chの音色を調整することはできないので、あらかじめ微調整してあげるためのEQです。複数の音源を扱う時に重宝します。

単純に好きな音にするためにいじってもいいですが、基本的には出過ぎている音や、いらない音域を削っていい感じにするのに使います。
高めの音を拾いたい時や低い音のノイズが乗りそうな時は低音をすっぱり切っちゃうとか、BGMの音が声と被って聴き取りづらくなるならBGMのミドルを切っちゃうとか、そういう使い方をします。

・ボリュームフェーダー or つまみ
→ゲイン調整とEQで整えた音の音量を決めるところ。各chの音量はここで調整します。
複数の音源を扱う際のバランス調整に使います。
基本は0dbあたりまで上げときましょう。それより上げるとノイズが増えやすくなります。
バランス調整の際は、うるさいchのボリュームを下げてやります。

以上が1つのchの構成要素です。
ミキサーとは、これがいっぱい束になったものだと思ってください。この束をまとめて最終的に出力するところに全体の音量を調整するためのマスターボリュームがあります。


ボリューム調整のやり方

ここまでのおさらいを兼ねてミキサーの扱い方を説明していきます。

これを正しく設定することで、可能な限りノイズが少ない音を取り出すことができます。

1.まず入力ゲインを決めます。

clipランプが点灯しないギリギリに設定します。
clipランプが点灯するのは「設計上これ以上のゲインにすると音声信号が歪む(音が割れる)」というサインです。
ギリギリに設定することで音が割れない範囲で最大の音量を取り出せます。

なお、マイクから離れすぎていてマイク入力が不十分だと入力ゲインを過剰に上げるハメになりますが、ゲインを上げすぎるとノイズが増えます

ここをきっちり追い詰めないと音量不足やノイズに苦しむことになりますので、マイクのセッティングからゲイン調整までに一番気を使ってセッティングしてください。

2.EQとボリュームを調整します。

EQは適宜かけてやりましょう。調整不要なら全て±0のフラットにしておいていいです。
ボリュームは0dbあたりに設定します。これ以上に上げるとやっぱりノイズが増えます。

複数の音源を入力する場合、ここで各chのバランスを調整してあげます。

3.マスターボリュームを調整します。

最終的に出力する音量は基本的にここで調整します。
入力ゲインをいじると音が割れますし、各chのボリュームをいじると全体のバランスが崩れます。
よって、トータルの音量調節はこのマスターボリュームのみで行うのが基本です。

最低限ミキサーを扱うのに必要な知識はこれだけ。
つまみの数が多いだけで、構造的にはそんなに難しいことはないのです。


ボリューム調整とノイズ量の関係

・S/N比について考えよう

機材由来のノイズに困ってる方はまず考えないといけないS/N比。聞き馴染みのない方が多いと思いますが、
S(サウンド)とN(ノイズ)の比率のことです。

まず大前提として、音響機器からは大なり小なりノイズが出ます。このノイズは入力信号の大小に関わらず一定の音量で発生します。
それに加えて、ゲイン/ボリュームの大きさに応じて各chからノイズが出てきます。
このノイズ量は使用する機材によって変わってきますが、必ず出るものなので仕方ないものとして考えます。

我々にできることは比較的ノイズが聞こえづらい音を作ること。相対的にノイズ量が小さければよいのです。

マイクへの入力が弱かった場合、たとえば

S(マイク入力) : N(一定量のノイズ)
=5:1
だったとしましょう。

このバランスで「音が小さい」と感じたら、後段の処理で音量を稼ぐことになります。
シンプルに音を2倍の大きさにするとしましょう。

音を大きくする時にこの比率は変わらないため、

S(マイク入力) : N(一定量のノイズ)
=10:2
というようにノイズも2倍になります。

このノイズは声の後ろで鳴っているので、「一定音量以下になったらミュートする」という仕組みのノイズゲートでは切れません。
収録データのノイズを解析して対処するプラグインならなんとかなるかもしれませんが、生配信中に対処するのはなかなか難しいと思います。
ホワイトノイズは帯域が広すぎて「特定の周波数を切る」という方法も難しいと思われます。


逆に、マイクからの入力信号が十分に取れていたとしましょう。

S(マイク入力) : N(一定量のノイズ)
=20:1
だったとします。

「これでは音が大きい」と感じて、PCで受ける感度を半分に絞った場合、やっぱりこの比率は変わらないので、

S(マイク入力) : N(一定量のノイズ)
=10:0.5
になります。

同じ音量でもノイズの割合がぜんぜん違いますね?

つまり、充分な音量で入力できていれば、相対的にノイズを減らせるのです。

逆に言えば無理やりゲイン調整とボリュームで音量を稼ごうとすると、その分相対的にノイズが増えるわけです。


・ノイズの少ない音を録るためには

ここまでミキサーの調整方法とS/N比について書いてきました。
これらを踏まえて、ノイズに困ってる方に伝えたいことはひとつだけ。

ちゃんとマイクに近づいて充分な音量を確保してください。

音は距離の2乗に反比例して減衰します。
マイクから離れれば離れるほどマイクに入る音量は減衰します。

特にダイナミックマイク使ってる方。
マイクの性能を過信しすぎです。
ちゃんと近づけ。

バンドのボーカルの人ってマイクに口がつくぐらいの距離感で歌ってるでしょ?
あれがダイナミックマイクの適正距離だと思ってください。
離してもこのぐらい。

(Wikipedia 「SM57」より "スピーチの際にSM57を使用するバラク・オバマ大統領")


ちゃんとマイクに近い距離でしゃべる。

たぶんこれでほとんどの人の問題は解決するんじゃないかな。

そう感じる今日この頃であります。

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