台にアニバーサリー【毎週ショートショートnote】

「なぁに？これ」
「開けてみて」

「指輪！」
「アニバーサリーのスイートテンダイヤモンド」

いわゆるデキ婚というやつで、妻が憧れていたウエディングドレスを着ることやヨーロッパへの新婚旅行は叶えることができなかった。だからこそ、記念日には何か特別なことを考えていた。結婚10周年には思い切ってダイヤの指輪をプレゼントした。そして今年は20周年を迎える。息子は20歳になり立派な成人だ。

妻は仕事に家事に育児に忙しく会話は少なかったが、まあ普通の家庭だろう。一度、「家事を手伝うよ」と言ったら「手伝う？」とキレられたので、それからは率先して家事を行うようになった。どうも自分は不用意な発言が多いようなので、なるべく妻に負担をかけないように自分からの要望は伝えないようにしていた。

「ただいま」

最近は「おかえり」のあいさつもなくなっていたので特に気にもしなかったが、本当に誰もいないようだ。寝室の化粧台にアニバーサリーの指輪が置いてある。

（410文字）

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