「おなかでキック」てどういう意味?
キックも難しい。キックも水泳独特の動きで、地上ではこんな動作は不要だから、慣れてないのは当然だ。クロールで見ていこう。
「股から動かして」とか、「太ももを意識しましょう」、「おなかでキックしましょう」などとインストラクターさんは言うが、これが難しいし、そもそも意味がよくわからない。
有効なキックのためには、たしかに大腿を動かす必要がありそうだ。サッカーでボールを強く蹴ろうとすると、足先からではなく、まず太腿を動かそうとするだろう。引き続き下腿、足を動かして、無事足でボールを蹴ることになる。陸上ではこんな当たり前のことが、なぜ水中ではできないのか。結論から言うと、「水は空気とは違う」から同じやり方が通用するはずがないからだ。
陸上と同じように蹴ろうとすると、足の甲だけではなく、大腿前面やスネにも水が当たる。抵抗が凄まじいので脚全体を動かすのは困難だ。無理矢理動かそうとすると骨盤も動いてしまう。これでは力は胴体に伝わらない。コアを締めて胴体(胸郭+骨盤)を一体化し、股関節が骨盤に伝えた力を胴体の運動に使わせないといけない。こうしてキック力が泳ぐための力になる。
これが「おなかからキック」の意味のようだ。つまり、まずコアに強く力を入れ、足先に向かって強く力を入れていかないと水には勝てず、水中では蹴れないのだ。
理解を深めるために代表的なNGキック達を詳しく見てみよう。
①膝下キック:
膝下だけでバチャバチャするキック。これは、大腿を動かすのをあきらめて、膝の屈伸に頼ったキックだ。足の甲でそれなりに水を後ろに蹴れるので推進力は発生するが、膝を曲げたときにふくらはぎに水が当たるので大きな抵抗も発生する。その結果、アクセルとブレーキを交互に踏んでるようなもので、進んでは止まりを繰り返す効率の悪いキックだ。
②自転車こぎ:
名前どおり自転車をこいでるように見えるキック、特に背泳ぎで目立つようだ。腸腰筋と臀筋で大腿だけを曲げ伸ばしする。下腿や足をも動かそうとすると水に負けてしまうので、それをやめて膝関節を緩めて膝から先はブランブラン状態になっている。当然、肝心の足の甲の蹴りも入らない。抵抗は少なそうだが推進力も無い。
③けいれんキック:
脚全体が硬直し一本の棒のようになり、細かく素早く振動するもの。からだの表側は腸腰筋以下、裏側は臀筋以下がすべて緊張して、関節がロックされている。脚全体で強くキックしようとして叶わず、代わりに振動数を増やして帳尻を合わせようとして発明されたもの。エネルギー消費が激しくて脚の疲れがひどいだけで推進力はない。
いずれのNGキックもサッカーボールを蹴る要領を水中にも適用して無理矢理やろうとして、水の力に屈伏して出来ずに、代わりに発明されたキックだ。水の中でも、陸上のやり方をそのまま適用しようとしたのが間違いだ。
おなかに十分に力を入れて胴体をしっかり一体化し、脚は少しだけ力をいれて静かに柔らかく動かす、必要なら速く動かすのが良いということのようだ。結論はインストラクターさん達の教えと同じだが、理屈がわかってきたので、うまくやれそうだ。
これが良いキックの基本型で、ElegantSwimtとしてはこれで十分満足だ。より良いキックの打ち方になると、メチャメチャ難しくなるので、また機会があれば別稿で探ろう。