ビターなチョコレート事件
「だれだよ、おれの机にチョコレートなんか入れたやつ」
バレンタインデー。女の子が勇気を出して好きな男の子にチョコレートをあげる日。
キョウキはさけびつつ自分の机に入れられていたきれいに包装をされた箱をもちあげる。その一部は透明で中身のチョコレートが見えていた。
「おいおい、自慢かよ。今日はバレンタインだろうがお前を好きな女子が」
「おれはチョコアレルギーなんだよ!」
えー! う、うそでしょう。どうしよう。
「マジかよ。初耳だわ」
教えとこうよ! そういう大事なこと!
「それで犯人の目星はついているのか?」
まさか、好きな人にチョコレートをあげることが罪になるなんてマジかよー。
「いや、ぜんぜん分からない。つーかそもそもおれを好きな女子とかいたんだな」
「本当、物好きにもほどがあるよね、その子さ」
「うん? おお、ワタか。そーなんだよ。物好きがおれにチョコレートくれちゃったんだよね」
その物好きは目の前にいますよーだ。
「ちょっと見せてよ。そのチョコレート」
「お、おう」
キョウキがワタにきれいに包装された箱を渡す。
「すごっ。これ、お店のラッピングじゃないっぽいよ」
「マジ。なんで分かったんだ?」
「ほらっ、この包装につかっている。内側になにか書いてあるみたいだからさ」
そ、そうだ。包装紙の手紙のことを忘れてたー。
「ラブレターってやつかな? 随分とロマンチックな女の子みたいだね。んー?」
「おいおいワタ。そのへんにしとけよな。もう全部バレているんだぜ」
にやつきつつキョウキはきれいに包装された箱をワタから回収した。
「なんのこと?」
「このチョコをくれたのがお前だってことですよ。物好きのワタさん」
「いや。わたしじゃないよ。ほらっ、義理チョコをもってきているし」
ワタは自分の鞄の中から市販品のチョコレートを取りだしてキョウキに見せる。
「すり替えようとしたとか?」
「だったら包装紙の内側に文字が書いていることを言わないと思うけどな。ミスリードの可能性もあるけどそんな面倒くさいことする前に、さっさと回収をしたほうがはやいような」
「それも……って。あれ、おれのチョコは?」
「そういえばジツワもいないね。トイレかな?」
「あっぶね。もうちょっとでバレるところだった」
つーか、だれだよ。バレンタインデーが女子だけの特別な日って決めたやつ。
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