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チー坊の音

久しぶりに、チー坊の夢をみた。
チー坊は、数年前に飼っていたハムスター。
プディングハムスターという種類で、明るいベージュの毛色がきれいな、まんまるハムスターだった。

ハムスターは、両手で持って食べる仕草とか、くりくりの目とか、まんまるの体型とか、かわいいポイント満載なのだけれど、私がとりわけ好きだったのは、その音だった。

ひまわりの種を器用にパリパリとむく音、回し車をブンブン回す音、突然起き上がってトイレに駆け込むソソクサとした音。
チー坊のいろんな音がするたびに、ああ今私は一人じゃないと、じんわり心があたたかくなる。

チー坊は、誰にも教わらないのに、小さいころから回し車を回していた。
最初は、加減がわからないのか、回しすぎて足が間に合わなくなり、遠心力に負けて(?)、落ちてしまうこともしばしばだった。
青年になると、ブンブン力強く、一晩中回していた。
老年になると、あまり回すこともなくなり、寝床で丸まっていることが多くなった。

最後の夜、チー坊が珍しく回し車を回した。ゆっくりゆっくり、カラカラ、カラカラ。
それが、私が最後に聞いたチー坊の音だった。

あのカラカラという静かな音を、今でも思い出す。

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