はちみつパワー

母から、はちみつを送ってもらった。
地元で作られているもので、混じりっけなしの濃さが魅力。

夜、くたくたになって帰ってきて、ずっしりと重いはちみつのびんを抱え、長いスプーンを差し込み、ひとさじ取り出す。
長く伸びる金色の蜜は、新体操のリボンのように、ゆらゆらと落ちていく。
なめると、しびれるほどに濃い。
到底、ひとさじしかなめられない。

小さい頃、祖母の家の近くの玉ねぎ畑に、交配のために蜜蜂の箱がたくさん来ていた。
はちみつを味わいながら、そんな光景を思い出す。
玉ねぎの花で作ったはちみつは、玉ねぎのにおいがするらしい。

私は昔から、味の薄いものが好きだった。
目玉焼きの白身とか、トーフとか、こんにゃくとか。
栄養的に、明らかにいろいろと足りない。
母はとても苦労したそうだ。

負担をかけて申し訳なかったけれど、私自身もつらかった。
味とか栄養とか、濃いものを食べると、途中で疲れてしまう。そのうち、食べる前から後の疲れが想像されて、先走って疲れてしまうのだった。

はちみつは濃いけれど、私を疲れさせない。
蜜蜂たちのパワーが私を助けてくれるのかと、都合のいいことを考える。

はちみつは私の味方。
今日も帰って、ひとさじ掬おう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?