皇帝の着物

最近、アンデルセン童話集(岩波文庫)を読んでいる。
親指姫とか人魚姫とか、知っているお話もあるけれど、全く知らないものもある。

先日は、「皇帝の新しい着物」を読んだ。
初めて読むと思っていたけれど、途中で、「これって、裸の王様か!」と気がついた。

タイトルが違うと、ずいぶん印象が違う。
それに、私の遠い記憶では、裸で練り歩く王様に、子どもが「王さまは裸だ!」と言い放ち、とたんに民衆が笑いだす、といった感じだった気がする。
でも、改めて読んでみると、ずいぶん印象が違う。

「だけど、なんにも着てやしないじゃないの!」と、その時、一人の小さな子供が言いました。
「こりゃ驚いた、おまえさん、無邪気なものの言葉を聞いてやってくれ。」と、その子の父親が言いました。そして、子供の言った言葉が、それからそれへとひそひそ伝わってゆきました。

完訳アンデルセン童話集1(大畑末吉訳・岩波文庫)

ひそひそ伝わっていくというあたりが、なんだかリアルだ。
そして、王さまも、行列をやめるわけにもいかずにそのまま練り歩き、侍従は、ありもしない裳裾をささげて進み、物語は終わる。

今さら、あとにひけないよね。
なんだか身につまされる、苦いお話。

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