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【スクープ】松本山雅、観客にマスク着用強要、国やJリーグのルールを逸脱、「過剰対応」との批判相次ぐ

サッカーJ3の松本山雅(長野県松本市)が、スタジアムで試合観戦中の観客に対し、「いかなる時でもマスクを着用しなければならない。できないなら退場すべきだ」とルールに基づかない説明を行い、マスク着用を強要していたことが1日、信州デイリーニュースの取材で明らかになった。国やJリーグは、周囲への配慮や発声を控えることを条件に試合観戦中のマスクの取り外しを認めている。松本山雅はこうした条件を満たした観客に対してもマスク着用を強く迫っていた。ルールから逸脱した過剰な対応であり、有識者の間で批判が相次いでいる。

関係者によると、松本山雅所属の警備員が観客に対してルールを逸脱したマスク着用を要求したのは、今年6月26日にサッカースタジアム「サンプロアルウィン」(松本市)で開催された、いわきFCとの試合。

日が沈みかけた19時半ごろ、ホーム自由席の中ほどで家族らと観戦中だった観客の男性(37)のもとを警備員が訪れ「なぜマスクをしていないのか。周囲はあなたの未着用を苦々しくみている。着用できないなら退場すべきだ」と迫った。男性が「周囲に十分配慮している状況ならば未着用でも構わないという国や県のルールがあり、現にそれを守っている」と説明したが、警備員は「それはあくまで行政のルールにすぎない。日が暮れたので熱中症のリスクはなくなった。着用するのが筋だ。できないなら退場してもらう」と重ねて要求した。この警備員は「上長の指示で動いている」と男性に説明したといい、松本山雅は観客に対するこうした措置を組織的に行っていたとみられる。

男性は信州デイリーニュースの取材に対し、「こちらが冷静に説明しても警備員は『上長の指示だ』と言うばかりで聞く耳を持たなかった。声を出さないようにするなど周囲には配慮していたが、受け入れられず、悔しかった」と話している。

「会話をほとんどしない場合はマスクを外してよい」とした政府の事務連絡の決定を踏まえ、Jリーグは6月6日、「Jリーグ来場時のマスク着用の考え方について」との方針を公表した。それによると、観戦時にマスク着用が身体に負担となる場合は「周りのお客様とお客様ご自身の双方の感染予防にご配慮のうえ、会話・歓声・発声のない場所で外していただき、マスクを外している間は、会話・歓声・発声を控えていただくようお願いします」としている。感染に配慮した抑制的な表現にはなっているものの、「条件付きでのマスク未着用を容認」(Jリーグ関係者)した格好だ。

これに対し、男性に対する松本山雅の要求は無条件にマスク着用を義務づけるもので、Jリーグの方針とは相容れない。感染症対策を専門とする東京都内の男性医師は「感染症対策の観点からみて松本山雅の対応は行き過ぎている。熱中症のリスクがなくなったからマスクを着用せよ、という論理は理解できない。周囲の無言の圧力が松本山雅を誤った方向に走らせたのかもしれない」と指摘。企業法務に詳しい長野弁護士会所属の男性弁護士は「公益性の高いサッカークラブチームが観客に対し、こうしたルールに基づかない要求をすることは異常だ。国、県、Jリーグの方針と異なる奇妙な対応であり、松本山雅は説明責任を果たすべき。ルールを破ったのは男性ではなく、むしろ松本山雅の方ではないか」と話している。


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