おまえに愛されなくても


「おまえ」
という言葉は本当に良くないと思う。
支配の匂いがする。

対象を「おまえ」呼びにする事で満たされる何かがあるからわざわざ使っているのかもしれない。

叶わぬ相手に「若い子」「かわいい子」と名前をつけないとやっていられない感じ。対等に接する事を回避した「おまえ」

辞書から言葉を借りると
「お前」は「御前」と書くのだが、古くは、神仏や貴人の前を敬っていう語であった。

そんな、今おまえの女はティーチャーズハイボールを呑んでいて手巻きタバコを器用に巻きながら吸っとる。中野坂上で、或いは阿佐ヶ谷で。

おまえが居なくても随分楽しいらしい。
何錠か分からん炭酸リチウムと。

向精神薬はおまえの脳みそを痛めます。おまえは緩やかに自殺を試みるのです。

本来言葉が持っている力、意味が変わってゆくのを、私は見ている。

私はお前の事を愛しているのに。
そしてその言葉の力が失われていくのを
私はただ見ている。

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