記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

タニス・リー『冬物語』を読んでの感想。

ロマサガ2をプレイしている時に、ネットであれこれ見てたら「オアイーブはタニス・リー『冬物語』に出てくるオアイーヴがモデル」と書いてあったので興味が惹かれ、読むことにしました。
(原文ではOaiveらしいですね)

・冬物語とは

『冬物語』(ふゆものがたり)は、原秀則の漫画。1987年から1990年まで『少年ビッグコミック』およびその後継誌『ヤングサンデー』にて連載された。第33回小学館漫画賞を受賞している。

違う違う、こっちじゃなくて。合ってるけど合ってない。

・あらすじ(ネタバレあり)

海辺の小さな村で祭壇を守る若き巫女オアイーヴは、村人たちの庇護を受け質素で敬虔な生活をしていた。ある日、一人の旅人が祭壇を訪れたため、来訪を受け入れる。狼の毛皮をマントのように羽織った灰色髪のその男はグレイと名乗り、オアイーヴに代々秘密にされてきた聖遺物のひとつである聖骨を見せるよう提案する。聖遺物は指輪・宝石聖骨の3つ。
祭壇の秘密の部屋に隠してある、代々の巫女しか知るはずのない聖遺物について、なぜ知っているのか問うも答えることはなく、一度は立ち去るグレイ。
だがその夜再び、グレイは祭壇を訪れる。
グレイは魔法で封印されているはずの扉を、魔法で解除しオアイーヴの魔法にも怯えず、その瞬間に狼に姿を変え、聖骨を奪い逃走した。

オアイーヴはグレイを追う。
グレイは「魔女に追われている被害者」を装い、オアイーヴは訪れる村で邪見にされたり、村人達に猟犬を放たれたり散々な目に合わされる。
オアイーヴはグレイの着ていた服の切れ端から魔法の力でグレイの足取りを追っていたが、グレイもそれに気づいたのか、服を着替えるというシンプルな方法で対処し、オアイーヴは途方にくれる。

改めて、オアイーヴはグレイを追う方法を考える。
「兄を探している妹」を演じ、周囲の同情を引く作戦。なんとかグレイと対峙した際に魔法の新しい可能性・・・呪文詠唱がなくても意思だけで魔法が使える事を知る。グレイに聖遺物を盗むよう命令した大魔法使いナイワスと出会い、グレイの人生の片鱗を知る・・・。

この小説のすごいところは情景描写。まさに「冬」というか、寒々と閑散とした状況を描写しているのですね。冒頭の部分から。

冬の海は、そのうえをわたるカモメたちの声のように灰色につめたく、けれどもその祭壇が海を見下ろしているあたりは入り江になっていて、水はそこではあざやかなさみどり色に変わっているのだった
祭壇をかこう外壁から水際に降りる石段も、下の方はほとんどが磨かれていないエメラルドの板のような暗い緑色をしていた。
潮がみちると海がそこまでひたしてしまうからである。

(冬物語1pより)

さみどり色、ってなんだろ。ってググったら「早緑色」と書くようです。
緑色の海は、日本だと沖縄の海だったり岩手県宮古市の海が緑ですね。同じ三陸なのに、なんで宮古の海は緑で普代の海は青いんだろう・・・?
(水深が関係してるようです)

彼女は冷気にめざめた。
目を開けてみると、樹が、無数の真白いリボンの渦のただなかを天めがけて舞い上っているような気がした。
すぐに彼女も気づいた。樹が翔りのぼっているのではない。雪が降ってきているのだ。
外套を頭からひっかぶってまるくなる。雪は、かなり前から降りつづいていたものらしかった。
くろぐろとしたヒラマヤスギもすっかり白く綿帽子をいただいている。

(冬物語97pより)

雪が降って樹に積もっている、って文章をなんてロマンチックに書くんだろう。この物語、本当に描写が丁寧なのです。訳者のセンスもとっても素晴らしいのです。(タニス・リーの他の作品もオススメなので、是非!

話がそれました。
物語のネタバレをすると。

聖遺物である聖骨を取り返すことに成功したオアイーヴだったが、ナイワスの手によって命を奪われそうになる。オアイーヴが思い描いたのは、自分がかつて住んでいた海辺の村、祭壇。かつての巫女たちの祈りの声。聖遺物の力があれば勝てるはず、と魔法で過去の世界に戻ったオアイーヴ。
だが、握りしめていたはずの聖骨は姿を消していた。

過去の世界、どこか見覚えのあるような漁村で魔女として生活をするオアイーヴ。人々に薬草の作り方を教え、村人と打ち解ける。
ところが、ナイワスとグレイも過去の世界に追ってきた事を知る。

海辺の洞窟内で過去の世界に飛んできたナイワスを撃退したオアイーヴは、ナイワスのつけていた指輪と、勝利の代償として吹き飛んでしまったグレイの宝石、自らの指のですべてを悟ることとなる。

わたしたちはここの人びとに聖遺物を残してしまったわ。だからきっと、すべてはもういちど始まるんだと思うの。(中略)
この洞窟でふたたびあなたとともにあいつと戦うことになるわ。そうして、あとにはまた指輪と宝石と聖骨が残る。村人たちがやって来て塵にまみれたそれらを持ち帰って聖遺物にする。いつまでも果てしがないのよ、グレイ。わたしたちは永遠にまわりつづける時の車輪のとらわれびとなんだわ。

(冬物語122-123pより)

『永遠にまわりつづける時の車輪のとらわれびと』
これ見た時に、なんて美しい表現なんだろうと思いました。タイムループに対してこういう表現、本当にすごい。
ファンタジーなのにタイムループ、すごい。

一旦閑話休題。
ロマサガ2の話になります。

ロマサガ2では、オアイーブは皇帝レオンに「伝承法」を伝授します。
自らが死ぬ時、次の後継者に記憶や思考、能力を引き継がせる。
これ、改めて面白いシステムだと思います。

歴史モノのゲームなどで数十年~数百年間隔でプレイする時、中の人(プレイヤー)は同じ感覚でプレイしていますが、キャラクターはそうではないはず。主人公の子供、孫、子々孫々が同じ思想なのか?って話です。
(ゲームにそこまで考えるのはヤボかもしれませんが)
現実の世界、例えば徳川歴代将軍が全員、全く同じ思想だったのかと言われると。歴史の詳細な知識がなくてもこれはNOと言えるでしょう。
(今Wiki見たら、7代将軍:徳川家継って8歳で亡くなってるんだ。。)

同じ思想であり続ける方法として、「伝承法」があるのかな、と。

さて、元ネタ?となっている本題の冬物語。
この物語には「伝承の書」というものが存在します。
(pixiv図鑑には伝承法って書いてるけど、どこ・・・?)
ただし、この伝承の書は古語で書かれた、事象に関する記載(作物の収穫時期とか、漁の方法)や薬草の作り方、礼拝に関する記載などであり、おそらくその呪文のひとつに、転生を促すものがあるのかな、と考えました。古語なので、祭壇に務めている巫女にしか読めません。オアイーヴは毎日、古語の呪文を唱え、祭壇に祈りを捧げていました。

それを意訳・オマージュしたのかなぁ、とロマサガ2をクリアした後、この本を再度読み直して。なんとなくボンヤリ考えて殴り書きした次第です。

・・・。
ちなみに「冬物語」のラストはとても美しいです。
同時に収録されている「アヴィリスの妖杯」はホラー要素もあり、これはこれで面白いのです。2つ合わせても260pくらいなので、長い話でもありません。

閲覧、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?