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ロシアの憲法改正による大統領権力強化と愛国主義的な軍事侵攻

プーチン大統領が国民の支持を集める理由は
【安定】と【愛国心】です。

▼ソビエト連邦が崩壊した後の大統領
第1代(1991-1999) ボリス・エリツィン
第2代(2000-2008)ウラジーミル・プーチン
第3代(2008-2012)ドミートリー・メドヴェージェフ
第4代(2012-)ウラジーミル・プーチン

2008年まで大統領を務めたプーチンは、
憲法が定める大統領任期の
上限4年(3選禁止)を達していました。

そのため、
2008年-2012年の間、大統領ではなく
首相を務めざるを得なかったプーチンは、

2008年、
大統領任期を6年(3選禁止)に延長し、

2012年の選挙当選者から適用する
ロシア連邦憲法改正を実施しました。

プーチン大統領のより一層強固なものにする
前兆といえる出来事でした。

2008年、プーチンから大統領を譲り受けた
当時42歳の第3代大統領メドヴェージェフは
今でも「プーチンの犬」と呼ばれています。

そして、2012年には、
プーチンが3期目の再選を果たしました。

次に、2020年のロシア連邦憲法改正では、
今までの大統領任期をリセットとしたため、

2024年に任期が終了するはずの
プーチン大統領がさらに最大12年、
2036年まで就任することが可能となり、


直近の2024年5月7日、
プーチンは5期目の再選を果たしました。

21世紀のロシア連邦はプーチンの思想が
長きにわたり反映されている国家といえます。

ちなみに、
大統領と首相がいる大統領制の国は、
フランス、韓国など数多く存在し、
選出方法や役割は国によって様々です。

【ロシアの大統領】
国民の直接選挙によって選出され、
国家元首(国の代表)であり軍の最高司令官。
かつ、政治・軍事・外交などの最高権力者。

内閣議会(国会)解散の決定権もあり、
2014年に行った憲法改正では、
司法の権限も持つことになりました。

【ロシアの首相】
ロシアの首相は議会(国会)の同意を得て
大統領から任命されます。

国内ではナンバー2の立場にありますが、
政府幹部会議長として基本指針決定や活動内容を
大統領に伝達するなど、権限は限られています。

また、大統領が辞任・罷免、職務遂行不可の場合、
3ヶ月以内に実施される大統領選挙まで
大統領代行を務めることができます。

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ロシアには、
三権分立という考え方は存在しますが
大統領が全ての権限を有するため、
かなり形骸化していると思われます。


・行政(内閣)※政治を行う
・立法(議会)※法律を作る
・司法(裁判)※法律を適用する


日本では、政治の中核を担う内閣が、
議会の多数派の支持を基盤に構成され、
議会に対して連帯責任を負っています。
これを「議院内閣制」といいます。

内閣総理大臣や国務大臣などは
 内閣不信任決議を出されないように
議会からの信任を必要とします。

アメリカでは、大統領は行政権を持ち、
立法権とは厳密に分けています。
これを「大統領制」といいます。

ロシアの大統領の場合、三権の枠に入らず、
「上」または「枠外」などに
位置する特別な存在となっているようです。


要するに、ロシア連邦の特徴は、
大統領の権限が極めて強い「超大統領制」です。

ロシア憲法は、元から大統領の権限が強く、
プーチン大統領は、
憲法で定められた大統領権限を活用しながら、
憲法改正を実施することで権力を強めています。


2020年の憲法改正では、
・現職大統領だけでなく経験者にも不逮捕特権適用
・大統領経験者は終身上院議員とする
など権力強化の内容が加えられています。

プーチン政権は2018年以降、
年金支給開始の年齢引き上げ問題で支持率が低下し
政治的な影響力が弱まっていましたので、

2020年の憲法改正は
権力強化のために必要だったと考えられます。

議会の上院下院のトップが参加している
安全保障会議(最高意思決定機関)も、
「大統領に協力する機関」と位置づけられ、

軍事侵攻におけるプーチンの思想を示す
『愛国主義・保守的な条項』が追加されています。


この条項が国民のナショナリズムを高め、
ウクライナへの軍事侵攻を助長し、
正当化した可能性が高い
と言われています。

『愛国主義・保守的な条項』
千年の歴史によって団結し、我々に理想と、
神への信仰、ロシア国家発展の継続性を授けた
祖先の記憶を保持する。歴史的真実の保護を保障する。

『国外に居住する同胞の権利行使、利益保護の保障』
国際組織の決定は、
ロシア連邦憲法と矛盾すると解釈された場合、
ロシア連邦において執行されない。

条項だけではなく、大統領がロシア軍の部隊を
国外で展開するためには議会の承認が必須ですが

度重なる憲法改正によって形骸化していたことも
ウクライナへの軍事侵攻に拍車をかけています。

ウクライナへの軍事侵攻が長引く今でも、
プーチン大統領に高い支持率があるのは、

ロシア連邦の新たな思想
・心理的な混乱が渦巻く時代の保守主義
・祖先や同胞を保護する愛国主義

これらの思想によるものと考えられます。

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