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習近平政権の経済思想と、経済回復に向けて求められる国有企業離れ

中国は2013年から、
一人っ子政策を緩和していきましたが

2024年現在、
労働力不足により国内総生産は減速し、
人手を確保するために人件費は高騰。

輸出事業の大半を占める
製造業の国際競走力は低下していきました。

また、国民への住宅購入規制や
デベロッパーに対する融資規制により

不動産の価格が上がらず、
バブルが弾けたことで、

デフレ(物価安)に転じたのが今の中国です。
(企業が儲からず、所得も増えない状態)



第5代国家主席の習近平(シーチーピン)は、
2024年5月23日、山東省での座談会で、

「不動産や雇用の分野で改革の突破口が必要」
と強調したものの、経済を立て直す
実効性のある政策が見えていません。

中国では、民営企業や外資企業の他に、
社会主義特有の「国有企業」が経済を支えています。


2024年1-4月、
国有企業の売上総額は、
568兆3742億1200万円(前年同月比3.2%増)

国有企業の利益総額は、
29兆9746億4400万円(前年同月比3.8%増)

国有企業の予定納税額は、
44兆2178億3300万円(前年同月比0.9%増)

国有企業数は中国全体の10%もいませんが、
売上総額や利益総額、雇用者数では
中国全体の20%〜30%を占めています。

また、国有企業は、
1社ずつの企業規模は大きいのですが
利益率が低いのが特徴です。

・民営企業 10%強
・外資企業 8%強
・国有企業 3%程度

利益率の低さが問題視されていた1990年代、
国有企業の民営化などの改革が
中国政府によって進められましたが、

習近平政権(2013-)においては、
共産党の指導体制こそが「奇跡の高成長」の
原動力として考えられているため、
国有企業により中国経済の統制を進めました。


さらに、習近平の経済思想を盤石にしたのは、
2018年、アメリカのトランプ大統領が
アメリカ・ファーストを掲げ、

中国製品に25%の関税を適用すると
決定した「米中貿易摩擦」からです。

中国からアメリカへの製品供給が滞るとして、
製造に必要となる半導体などの部品は
海外からの供給制約を受けることになりました。

そのため、習近平政権では、
国内での半導体内製化を一気に進めるなど、
海外依存のサプライチェーンを見直して、
内需で完結できる「自力更生」にこだわりました。

[習近平の経済思想][米中貿易摩擦]により
中国政府の影響力が直接的に及ぶ
国有企業を経済発展において重視する
「国進民退」の傾向が強まっていきました。


共産党の支配下にある中国においては、
国営企業は民営企業との競争で有利であり、
民営企業は競争で不利な立場にあります。

近年の中国では、
不動産の購入規制や融資規制による
景気停滞が大きく影響し、
民営企業の経営不振が目立ってきています。

中国政府はようやく、
国家全体の経済的発展に向けて、

「民営企業」の健全な発展を目指し、

市場参入障壁の除去と、
私有財産権の保護を中心に、

国営と民営に生じていた
差別是正に取り組み始めました。

2023年7月19日に総合対策を盛り込んだ
「民営経済の発展と成長の促進に関する
党中央・国務院の意見」を発表しました。

国有企業重視の経済思想と、
既得権益層の抵抗が妨げになっており、
目標実現までの道のりはまだ長いですが

民営企業数は、
2023年5月末時点で、5092万7600社に達し、

2012年末時点の1085万7000社と比べると、
約4.7倍、爆発的に増加しています。

中国における民営企業の割合は、
2012年79.4%→2023年92.4%に上昇しました。

また、「外資企業」も中国経済を支えています。
日系企業の2022年度関連企業数ランキングでは


1位 ローソン    720社 3575億7100万円
2位 ファミリーマート601社 3754億8100万円
3位 日産自動車   354社 3兆2406億1800万円
4位 ゼンショー   270社 2563億4400万円
5位 サイゼリヤ   262社 1011億2600万円
6位 セブンイレブン 243社 8630億2500万円
7位 ファストリ   229社 2831億6500万円
8位 ヤクルト    183社 1767億8700万円
9位 三菱電機    163社 2兆7121億6500万円
10位 日立ビルシステム139社 2561億6800万円

コンビニ、飲食、衣類などの販売サービス業
自動車、昇降設備などの製造業が中心に
売上や利益を増やし中国に良い影響を与えています。

※広大な国土を持つ中国でビジネスを拡大する際、
 各地に支店や支社、子会社などの
 関連企業を設立する必要があり、
 この数が企業の活動レベル指標となります。

とはいえ、
政府がデフレからの経済回復に向けて、
実効的な政策を示せていないことから
各企業における給与減少の加速が止まりません。

2023年、3分の1の雇用者が給与減となり
2024年も、さらに深刻化しています。

一時期、花形職業と言われてきた
銀行員の給与も下がっており、

政府の支援が厚い国有企業も同様で、
特に、鉄鋼業界にあたっては給与減に加えて
支払い遅延が急増しているようです。

習近平政権には、
実効性のある経済政策が求められています。

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