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刀ステ維伝 曲考察

※個人の考察です

維伝の音楽には、肥前忠広を表す音、土佐の町・南海太郎朝尊を表す音、そして陸奥守吉行と龍馬を表す音がある説を推しています。
維伝BGM深読み考察です。(本編ネタバレあり)

楽器や旋律に登場人物や場面・状況を当てはめることで意味を与える手法は、ライトモチーフといったりもします。
それに当てはめていくと、以下3つの項目が見えてきました。


ストリングスorストリングス+尺八
『あさきゆめみし』の旋律
=「肥前忠広」を表す音


琴、ギター、ピアノ
=「土佐の町」「南海太郎朝尊」を表す音


クワイア
=「陸奥守吉行」を表す音



以下各項目についてです。


まず、

ストリングスorストリングス+尺八
『あさきゆめみし』の旋律
=「肥前忠広」を表す音

彼の名前を冠するこの曲をまず聴いてみます。
『肥前-hizen-』
奏でられるのは『あさきゆめみし』そのもの。
楽器はストリングスと、要所要所に鋭く優しく尺八が入ってきます。
まず衝撃だったのが、彼の名前がついたこの曲が『あさきゆめみし』の旋律だったこと。
この曲は歌詞からしても、志士たちへ捧げる曲。
この曲が肥前を表しているってよりは、肥前もまたこの曲が根底にあるひとりって意味だろうなと思いました。

この旋律は外伝のBGMと同じでもあるんですよね。(これはなにか意味があるのかな?)
冒頭の「悲しむの言承を飲み」「慈しの言承は咲き」という歌詞は、それまでの物語を生きてきた山姥切の声のようでもあるので、彼が歌う曲として捉えるのも納得。
けどそのあとの歌詞的に、個人的には維伝を生きた志士たちへの曲だと思っています。 志士たちを見送る鎮魂歌だと。

そして、ストリングスがメインでこの旋律を奏でつつ、途中で鋭く尺八が入ってきます。優しく大らかなストリングスと鋭いけど柔らかい尺八、どっちもすごく肥前らしいなと思いました。
なので今後の曲でもし、
・『あさきゆめみし』の旋律
・ストリングス、またはストリングス+尺八の組み合わせ
が出てきたらそれは「肥前忠広」を表していると仮定します。
そうして聴き進めると、その後の曲でこれを裏付けることができました。


『天誅-tenchuu-』
曲名からして以蔵を表す曲。
冒頭は歪な金管の音がサイレンのように鳴りますが、そこにストリングスで『あさきゆめみし』の旋律が入ります。
ストリングスでこの旋律…肥前だね…肥前がきたね…?ここから肥前との掛け合いが始まった…と感じました。 なんというか、肥前が以蔵の心に呼びかけている、叫んで呼びかけているという感じ…
すると、それまで歪な金管だった旋律が、ストリングスが入った後は、はっきりと旋律をもった木管(たぶんオーボエ)に変わるんです。
奏でる旋律は、『あさきゆめみし』のAメロの部分。
以蔵が肥前(『あさきゆめみし』)に応え、この瞬間に以蔵と肥前の旋律になったのかもしれない。

そして、ストリングス+尺八の組み合わせが肥前を意味しているのを強く感じたのがこの曲です。
『護衛-bodeegaado-』
最初はギターソロで優しく旋律が奏でられる。
ここでの護衛は以蔵のことなので、このギターソロは以蔵な気がします。優しい旋律が以蔵の優しさそのものでまずここでぐっとくる…
そこにまた入ってくるんです。ストリングスとそのあとに続く尺八の音が。
この楽器は『肥前-hizen-』と全く同じ。奏でる旋律は『あさきゆめみし』ではなく、ギターソロに優しく寄り添い大きく包み込むような旋律。ひとりでいる以蔵のもとに心を寄せる肥前、という感じがします。

この曲、肥前も意味していると思った理由はこれだけじゃないんです。
それは本編の音はめ。
本編で、龍馬と陸奥守が「以蔵さん、頼む!!」と護衛を頼む場面でこの曲流れるんですがなんと…
龍馬が「わしの刀を使うてくれ」って肥前忠広を渡した場面で、ちょうどストリングスが入ってくるんです…!

こ…これは…
本体の肥前忠広の動き、以蔵の手に渡る動きに合わせて奏でられたストリングスと、それに続く尺八…
この楽器2つは彼を意味しているな…と確信しました。

余談ですが、
『人斬二人-hitokirifutari-』も感慨深い曲です。
以蔵と肥前、ふたりが合わさると、ピアノのこんな優しい旋律になるのか…と。
『以蔵-izou-』という曲は、分かりやすい旋律があるというよりは音の羅列。1人では空虚で空しい以蔵だけど、肥前と一緒なら物語を奏でられる。
そしてそれは肥前も同じで、彼も以蔵がいるから物語を紡げる…


次の項目にいきます。


箏、ギター、ピアノ
=「土佐の町」を表す音


まずこの音が出てくるのが、
『幕末-bakumatsu-』
城下町を幕末の刀たちが歩く場面で流れる曲です。市井の人々と土佐の空気を表す音。
なので今後の曲でもしこれらの音のいずれか、または組み合わせが出てきたらそれは「土佐の町」を表している、とここで仮定しました。
するとこれも、後の曲を聴いていくと納得できました。


『朝尊-chouson-』
もちろんこれは南海先生の曲。
先生の曲に土佐の町の音…?というのは、彼がどんな刀剣男士なのかを考えると分かってきました。
南海先生は自称しているとおり、刀工の逸話を濃く受け継いで顕現した刀剣男士。
刀工とは、その土地の水や空気に馴染ませながら刀を打つ存在、つまり土地に根差した存在なので、彼を打った刀工南海太郎朝尊という人物は、土佐の町に生きそこで刀を打った、土佐に根差した存在。
彼を強く受けて顕現した先生の曲は、だから土佐の町を思わせる音なのか、と思いました。
なのでこの曲は『幕末-bakumatsu-』とテンポ感もよく似ている。
そして、 終盤の3:30頃~、ピアノであるリズムが奏でられます。

「よっちょれよっちょれよっちょれよ…」

よさこい鳴子踊りのリズムに聴こえる…
もちろんこの時代にはまだない旋律なので時代錯誤ではあるけど、それが刀剣乱舞らしいなと思ったりもしました。
この歌詞の続きには、「高知の城下へ来てみいや…」と続いたりもするので…高知の城は維伝においてとても意味のある場所ですよね。

そのあとの『罠博士-wanahakase-』ももちろん先生の曲ですがこれはまた全然違う雰囲気。笑
弾いてみたりもしたけどこれはめっちゃ楽しいです。あれは肥前も踊るし、兼さんもステップ踏むし陸奥守もゲッダンするし、あの2振りはエア楽器もするわ。さすが先生だなぁ!!


『朧町-oboromachi-』
箏がすごく印象的な曲。
豹変して動き始めた土佐の町を表すように、前述した2曲、後述する1曲と曲調やテンポ感は大きく異なる。
けどこの箏の音があることで、これまでと同じ土佐の町を表していることを伝えている。低いところからは箏やギターの仲間である通奏低音のように撥弦楽器のベースの音も聴こえる。

『高知城天守最終戦 舞台刀剣乱舞ver.』
冒頭はボス戦アレンジ、中盤はクワイアで彼らへの鎮魂と旋律が畳みかけられ、終盤は一転して、穏やかな箏、ギター、ピアノになります。
鶴丸と小烏丸がなお戦うその場面は、戦っていながらも穏やかで、2振りが高知の町で語る場面は、冒頭の肥前が合流してすぐの、幕末の刀たちが城下町を歩く場面とよく似ている。
この曲、曲名にそもそも場所の名前が入ってる。高知城も土佐の町の一部。だから、土佐の町を表すこれらの音が使われた。
戦いが終わり、穏やかさを取り戻した土佐の町を表している。テンポ感も、『幕末-bakumatsu-』『朝尊-chouson-』とよく似ている。

これらの音は、土佐という町がもつ田舎特有の穏やかさや、熱気や活気、そこで生きた人々や刀工を表した、素朴な感じと熱さを内包した音だと思いました。すごくぴったり。


最後の項目です。


クワイア
=「陸奥守吉行」を表す音

こうして肥前忠広と南海太郎朝尊、2振りの刀が音楽の中で描かれてるけど…あれ、陸奥守吉行は?
そういえば、肥前と先生のはあるけど、彼の名前がついた曲ないな…?彼の楽器や旋律はないのか…?

と最初は思いました。

けど曲をよく聴いていくと、ストリングスやアコギに負けないくらい、すごく印象的な音があるやないか…と気付きました。
陸奥守吉行を表す音はきっとこれじゃないかなと。

直接名付けられてはいないけど、
『幕末之刀-bakumatsunokatana-』
『家宝-kahou-』
『本能-honnou-』
『龍之心-ryuunokokoro-』
という、陸奥守のことを表しているだろう曲に必ず出てくる音。

それが、歌声(クワイア)です。

維伝では、勇ましい男声と繊細で美しい女声(ソロ含む)のどちらも出てくる。
この音は厳かなイメージを与える音なので最初はパッと陸奥守と結びつかなかったけど、今では、
・クワイアの厳かな感じは、歴史を正す使命をもった刀剣男士、特に、この物語で「首謀者を倒す」役割を最初から与えられていた陸奥守にぴったり
・男声、女声という幅の広さが、陸奥守の器の広さや、龍のしなやかな動き、故郷の桂浜がみせるいろいろな表情などの彼にまつわるいろいろなものをよく表している
・坂本龍馬の逸話を受け継いだ陸奥守は、とても「人」に近い人間らしい存在だから、人の声であるクワイアは彼の音としてぴったり
と思います。


ちなみに『家宝-kahou-』は、クワイアメインでありながら伴奏はストリングスで、尺八も出てきます。肥前も、坂本家の大事な宝だから…

そして同時に、このクワイアは龍馬も表しているのだろうと思いました。

まず『魑魅魍魎-chimimouryou-』という曲。
魑魅魍魎は、先生が言っていたとおり朧の志士たち、つまり龍馬たちのこと。この曲はクワイアの曲です。だからこれは志士たちの音…

そして、『高知城天守最終戦 舞台刀剣乱舞ver.』の龍馬たちが散るところでクワイアが流れます。
彼の魂を見送る陸奥守と、新たな時代に想いを馳せながら地から去っていく龍馬の両方を表しているんじゃないかと思います。

龍馬と陸奥守、とってもよく似ているふたりはその心もとても似ていた。穏やかさも優しさも強さももっていた…とクワイアの音を通して思います。




他にもぐっとくる曲しかないのですが、一部考察。

『大舞台-oobutai-』
これは曲名からして鶴丸が思い浮かびます。
そのとおり、この曲の構成はストリングスとブラス。ストリングスは肥前の時のような穏やかさではなく、鋭く速く演奏する。それに低いブラス。
これまでの刀ステの曲らしさを一番感じました。
鶴丸国永、この物語に必要な刀、刀ステの物語において大事な役割を背負い続けている刀の曲にぴったり。劇中でも、彼と謎の遡行軍との交戦、小烏丸との共闘の場面で流れます。


『寂三日月-jakumikaduki-』
メインは電子音(キーボード?)、そしてそこに寄り添うストリングス。
電子音メインにストリングスが入るこの構成は、慈伝の『惜慈』という曲と全く同じです。
慈伝のときも、三日月からのどんぐりを受け取る山姥切のシーンでこの曲が流れたので、シンセ=山姥切、寄り添い離れていくストリングス=三日月だと感じましたが、
この曲が流れた場面も山姥切のような遡行軍の独白なので、これが当てはまるなと思いました。
テンポ感もよく似ている。




そして維伝は全編、これらの曲と物語がぴったり合うのがすごかった。
多少いじってる場面はあったけど(真剣必殺の曲は1小節か半小節分くらい長かったり)、基本、この曲の長さ流れに合わせて本編でも台詞や感情の流れがあったり、場面の転換があったりしたので、音ハメすごい…台詞の言う速さとか殺陣のスピードとか合わないと無理…と感動しました。
『影戦-eisen-』は特にすごいと感じました。(殺陣→陸奥守と和泉守の語り→肥前の登場。少しでもずれると雰囲気と曲が合わなくなる)




長々と書きましたが、要は、

維伝の曲本当にすごい。聴かせどころ多すぎる。 

※2020.6.3のふせったーより転記&推敲

#刀ステ #ネタバレ

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