親イラン派フーシの拠点攻撃の報道を受けて、日本への影響
現在、WTI価格は73ドル近辺で推移している。
英・米がイエメンの親イラン派フーシの拠点を攻撃したとの報道を受け反発したようだ。
さて、本稿の焦点は今後の日本への影響である。
フーシ拠点攻撃に至るまでの経緯
今回の攻撃の契機は、現在中東で発生しているガザ地区への攻撃に反発したフーシが紅海を航行する商船を拿捕したという事件である。
これを受け、昨年は英大手の船舶会社が紅海の航行を取りやめるなどのニュースがあった。
(しかし、原油市場に対する影響として、ホルムズ海峡を航行して輸送される原油量が日量約1800万バレルと言われているのに対し、紅海航行して輸送される原油量は日量約700万バレルと小規模であることから、市場への影響は限定的である見られていた。)
しかし、米国は商業用船の保護を目的に他国間で取り組み(繁栄の守護者作戦)を開始していると言う状況であった。
今年に入り、フーシの拠点を攻撃するという緊張は高まっていたが、繁栄の守護者作戦にサウジアラビアやUAEは参加しておらず、また、1月6日の時点ではイラクも米軍の駐留には賛同しない旨を示していた。
今後予想されうる事態 アラブの春の再来
フーシは12月19日時点で、米を中心とした連合軍結成を受け、「米軍の攻撃には反撃する」と表明している。
もし、反撃が始まった際、標的になるのはどこだろうか。
最も危惧すべきは、サウジアラビアの公営企業 サウジアラムコの石油施設ではないだろうか。
遡ること約5年前のフーシによるサウジアラムコへの無人機攻撃は記憶に新しい人も多いのではないだろうか。
当時は2つの石油施設への攻撃で日量約570万バレルの生産が停止し、市場に大きなショックを与えた。
今回も報復措置として石油施設への攻撃が行われた場合、市場への供給懸念の発生から原油価格がさらに上昇する可能性とサウジアラビアに対する市場の信用低下が発生する可能性がある。
さらに、報復措置のみで一時的に原油価格が高騰するだけならまだしも、思わぬ事態でその火花が中東地域全体に広がった場合、2011年に発生した「アラブの春」が再来する可能性もある。
当時、きっかけはチュニジアの青年の焼身自殺だったが、予想不可能な事態が発生すれば「第二のアラブの春のきっかけ」が発生する可能性もある。
アラブの春では4か月程度で1バレル=30ドル以上上昇し、市場と世界に大きな影響を与えた。
では、サウジアラムコに向けた報復措置がとられた場合、日本が受ける影響はどの様なものだろうか。
日本が最もダメージを喰らう可能性がある 「令和6年版オイルショック」
私は、前章で提起した事態が発生した場合、最も経済的ダメージを被るのは日本であると考えている。
日本の中東産石油依存度であるが、令和5年11月時点で全体の94.6%を占めている状態だ。
原油価格が上昇するだけでなく、アラブの春が再来した場合、中東産石油の約95%の輸入に支障をきたす場合がある。そうなった場合、事態はまさに「令和6年版オイルショック」である。
エネルギーの高騰とエネルギーショックは全てに影響する。
とにかく、オイルショックに発展しないことを願うばかりである。
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