2102:不妊治療再開どころか腫瘍見つかる①

2021年2月の上旬。
休日のある日、お気に入りのカフェで私はひとり手書きのノートと対峙していた。

このままでいいのかな。やりたいことってなんだろう。何かはじめようかな。そもそも私って何が好きなんだろう。

私の場合2ヶ月に1度くらいのペースでこの「現状を打破して何か新しいことを始めたくなる」病がやってくる。
自己啓発本は読みすぎて、もう新しい本はいいから一個でも実行してみろという感じだし(朝5時起きとか、ネガティブなこと言う友人とは距離をおけとか、瞑想とか読書とか感情を書き出せとか自分を肯定しろとか体を動かせとか)、習い事も某感染症でどうも門を叩く気になれない。

25で結婚して、夫婦仲は悪くない。高くはない給料だが共働きでなんとか不自由なくやっていけそう。
子どもはいなかった。
自分たちが不妊だと認識したのは28のとき。
自分よりあとに結婚した友人たちはあっと言う間に出産。不妊治療の後輩でアドバイスした友人2人も私を追い越しめでたく妊娠し今や2児の母。
私自身は30で体外受精に踏み切ったものの妊娠に至らなかったところで戦線離脱。
「妊娠おめでとうレース」からリタイアしてみたら不思議と気持ちが楽になった。結局周りに置いていかれたくないという意地もあったのだろうなと今なら思う。(産んだら産んだでそんなにキッラキラした日々ばかりではないのにね)

戦線離脱してからは身の丈に合った贅沢(週末のアイスとかたまの外食とか)や、趣味の舞台鑑賞などしながら夫と二人の生活を楽しんでいた。
楽しんでいたのだけど、2ヶ月に1回はやってくるのだ。この己の中の「意識高い系の私」が。
過去には日本人として漢字は忘れるなかれで毎日ドリルをやろうとか、数字が苦手なので学生時代の数学をやり直そうとか、やっぱ英語っしょ!と何度目かの英語ブームがきてどれも3週間くらいは続くのだけど気づけば飽きている。

そんな私が今回打ち込もうと思ったもの。それが「不妊治療再開」だ。上記の学習系とは全くタイプが異なるが今年はいよいよ35になる。35からは高齢出産となり妊娠も出産も一般的にはリスクが上がる歳だ。
死ぬ前に「やっぱりやっときゃよかった」と後悔しないように、ダメ元で最後の体外受精に挑戦しようという気持ちになったのだ。
これでダメなら仕方なし、これも運命。子どもがいたらそれはそれは楽しく充実した人生となるだろう。しかしいなくたっていないなりの楽しい人生は送れるはずだ。少し寂しいかもしれないけど、子どもによって失うものや苦労もあるはずだ。
少子化に貢献できなくて申し訳ないが悠々自適に消費と納税でなんとか許してくだせえという感じだ。

そんなわけで私はぬるくなったコーヒーを一気に飲み干すと数年振りにクリニックに電話を掛けて診察の予約を取った。

手帳にひとつ予定が追加書き込まれた。

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