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Kindle Unlimitedで今なら読める 2023.12-02 文芸(グーテンベルグ21)

今回は、グーテンベルグ21という出版元に焦点を絞った内容にしようと思います。

全体に古めの作品が多いのですが、必ずしも著作権切れという訳でもないようで、パブリック・ドメイン作品をインターネット上で無料公開することから始まったグーテンベルグ・プロジェクトとは共通性もあるようで違ってもいるようで・・・。

知っていれば非常に貴重な作品・名作が転がっているのですが、ある程度文学史の知識がないと、知らない作家ばっかり~、ということになるやも知れません。私も部分的にしか分からないのですが、、知っている範囲で分類整理してみようと思います。

含まれている作品を、読者目線でざっくり大分類してまとめてみようと思います。


クラシックSF

SF作品についは、過去には早川書房か創元推理文庫でリリースされていた作品が多いです。いや、推理小説もかな?

一角獣・多角獣 Kindle版 シオドア・スタージョン (著), 小笠原豊樹 (翻訳)

「この本を読む前に、あなたは静かに発狂するがよろしい。それがこの本を完全に楽しむための唯一の方法である。あなたが現代人であり、合理主義者であり、不可知論者であり、科学精神のもちぬしであることを忘れなさい。あなたの心の奥深く隠れたもろもろの本能を、原始的な欲望を、解き放ちなさい。あなたの礼儀作法という名のバンドをゆるめ、あなたのスーパー・エゴの抑制を解きなさい」このグロフ・コンクリンの言葉に尽きる。

なんと!!!、こんな短編集が先月電子書籍化されて、今月読み放題だと!!!
大事件です。今月はこれ1冊で気分は大満足という事件です。

60年代に早川書房の「異色作家短篇集」という叢書で翻訳が出ました。ところが70年代に新装版となった時にはラインナップから外れてしまったのですよね。そのため80年代から2000年代までずっとプレミア価格が付いていました。

2005年に遂に再刊されました。

しかし電子書籍もなく、やはりそれほど入手が容易とは言えませんでした。

そこからさらに18年! 今なら実に安価で容易に入手できます。
これは日本国内においても、60年にして一度目の大チャンスなのです!

現在Amazonのカタログで見つかる原書は以下のものです。

元々の出版は1953年。

この短編集には「ビアンカの手」というとても有名な短編が収録されているのです。あちこちでスタージョンの名前と「ビアンカの手」という作品名を目にするのに、実物が手に入らない・・・。80年代、90年代のSFファンの多くは似たようなやきもきした気持ちを味わっていたのではないでしょうか?

ついでに、スタージョンの代表的な長編である「夢見る宝石」も今なら読み放題です。

夢みる宝石 Kindle版 シオドア・スタージョン (著), 永井淳 (翻訳)

里親のひどい折艦をのがれた捨て子のホーティ少年は、愛する人形とともにサーカス団の一座に保護される。団長は、へんてこな人間を集めるかたわら、不思議な能力をもつ水晶を探していた。一見なんの変哲もないその水晶は実は生きていて、痛みや憎しみなどさまざまな感情を表出できる。そして水晶が夢みるとき、土の塊から花や昆虫や、小鳥や犬が生まれるのだった…。幻想SFの巨匠の手になる処女長編。

これまた奇妙で奇怪で美しくて怖い、忘れられない作品です。

発狂した宇宙 Kindle版 フレドリック・ブラウン (著), 稲葉明雄 (翻訳)

とにかくこれは多元宇宙SFの決定版である。多元宇宙SFのあらゆる面白さとテクニックを全部ぶちこんだ、いわば集大成であり、さらにこれによってブラウンは、多元宇宙SFを確立させたといえる。そのかわりSF作家にとってはこれ以後、多元宇宙の面白いネタを見つけるのが困難になった。処女長編とは思えぬ、完成された作品である。ブラウンの長編の最高傑作は? という問いに対して、『発狂した宇宙』をあげる人と、『火星人ゴーホーム』をあげる人がいて、好みが二種類にはっきりわかれてしまう。ぼくは『発狂した宇宙』をとるが、星新一氏などは『火星人ゴーホーム』組である。シュール・リアリスティックなドタバタが好きな人と、ブラック・ユーモアの方が好きな人とにわかれるのではないか、と、ぼくは思っている。…以上、筒井康隆氏の紹介文だ。

火星人ゴーホーム Kindle版 フレドリック・ブラウン (著), 稲葉明雄 (翻訳)

突然イタズラ好きで人を困らせることが大好きな火星人が10億!も現れ、地球は大混乱。小さな緑色の小人の姿をした彼らは姿は見えるし、声もするが触ることはできない。クイムする、と称して瞬間移動できるし、透視も出来るので、公私を問わず秘密というものがまったく無くなってしまう。彼らの目的は侵略ではなく、ひたすら人間に嫌がらせをすることだった。奇才ブラウンが「迷惑な隣人」を突き詰めたブラックコメディ。

こちらも正に古典的名作。
フレドリック・ブラウンはSF、ミステリ、サスペンスなどかなり幅広いジャンルの作品を書いており、SFオンリーの作家ではありません。多作で、全てが傑作というわけではないのですが、名作も多く残している、そんな独特な作家です。

宇宙船ビーグル号の冒険 Kindle版 A・E・ヴァン・ヴォクト (著), 能島武文 (翻訳)

ダーウィンが進化論の仮説を深めるきっかけになった「ビーグル号」による南半球の航海は有名。本書はこの航海にちなむ宇宙航海アドベンチャーで、銀河系のかなたを旅する超光速宇宙船「ビーグル号」の「未知の生き物」との遭遇を描く4編からなる。次元を超越する不気味で不可思議な存在と必死に戦うグローヴナーら科学者たち。

これまた、その後のSF作品に多大な影響を与え続けている名作。
あまりに魅力的な未知の生き物の創造、高度に専門化した科学の陥穽。
4編の内最初の一編を読むだけでも十分感動できます。

大宇宙の魔女 Kindle版 C・L・ムーア (著), 仁賀克雄 (翻訳)

熱線銃一丁を手に星から星へと渡り歩く宇宙の無宿者ノースウェスト・スミスを主人公にするSFファンタジー──スミスは火星植民地で、群衆に追われている一人の娘を救った。脈動する瞳をもち、「シャンブロウ」と呼ばれる彼女は、愛らしいが、地球の生物ではなかった。スミスは一瞬不安を覚えたが、その妖艶な美しさに魅せられて……。女流作家ムーアの手によるSFファンタジーの名編ノースウェスト・スミス・シリーズ第1巻。

これハヤカワSF文庫から出ていたとき、表紙が松本零士だったんですが、実に内容にぴったりな絵でしたね。

ホント、このイラストのイメージ通りの、幻想的な宇宙SFというかファンタジーというか。

エンパイア・スター Kindle版 サミュエル・ディレイニー (著), 岡部宏之 (翻訳)

独創的な展開とリズムにこだわるニュー・ウェーブSFの旗手であり、アメリカ黒人思索小説の先覚者の、初期の代表作。『エンパイア・スター』は少年が銀河文明の中心に向けた旅において、無知なるシンプレックスからマルチプレックスへと成長していく過程を言葉の魔術を駆使してつづっている。この作品に登場する「マルチプレックス」という考えは、多面的な世界を包むとともに、作品そのものを多面的に読むことを示唆する。「本格派、気楽な読者、文学的ファン、ニューウェーブ派…彼はすべての読者にとってすべてのものだ」これはジュディス・メリルの言葉だ。

かつてサンリオSF文庫でリリースされていた作品。
短いけれど恐ろしく密度が高い、ディレイニーの代表作。

地図にない町 Kindle版 フィリップ・K・ディック (著), 仁賀克雄 (翻訳)

フィリップ・K・ディックが黄金の50年代に発表した色とりどりの短編から、ブラッドベリ風の幻想味の濃い12編を訳者が独自に選んで訳した傑作集。存在するはずのない駅で列車は止まった。駅前にひろがるのは地図にない町だった……この表題作のほか、「おもちゃの戦争」「薄明の朝食」「レダと白鳥」「森の中の笛吹き」「輪廻の豚」「超能力者」「名曲永久保存法」「万物賦活法」「クッキーばあさん」「あてのない船」「ありえざる星」を収録。

ディック初期の短編集。これはハヤカワ文庫のNVで出ていたと記憶しています。奇妙な味わいの作品を書く作家として扱われていたのでしょうか?

顔のない博物館 Kindle版 フィリップ・K・ディック (著), 仁賀克雄 (翻訳)

すこし怖いような超現実世界を描く第一人者ディックの初期短編集。「ディックの原点ともいえるこの初期の短編に、センス・オブ・ワンダーと、それを超える何かを見い出し、楽しんでくれる若いSFファンの諸君に、本書を捧げる」と訳者はいう。「パパそっくり」「フォスター、お前は死んでいるところだぞ」「ドアの向こうで」「ハンギング・ストレンジャー」「消耗品」「根気のよい蛙」「廃品博物館」など11編を収めてある。

こちらも初期短編集。
本領発揮の黄金期作品は、大半がハヤカワからで、一部創元SFから出ているといった感じでしょうか。

失われた世界 Kindle版 コナン・ドイル (著), 永井淳 (翻訳)

頑固一徹の古生物学者チャレンジャー教授は、マスコミや学会の嘲笑をものともせず、アマゾン流域にむけて「失われた太古の生物」を探しに出発する。シャーロック・ホームズであまりにも有名な巨匠コナン・ドイルが、別の愛着をこめて書いたチャレンジャー教授もののSF名編。「ジュラシック・パーク」はこれをヒントにしている。原題「ロスト・ワールド」

その後多数の作品の原型となった作品。小学生の頃に読んで熱中しました(笑)。

トリフィドの日 Kindle版 ジョン・ウィンダム (著), 志貴宏 (翻訳)

緑色の流星雨という珍しい天体ショーに見とれた人々は、みな盲目となった。そのとき有用植物トリフィドの栽培場で働いていたビルは、たまたまトリフィドの毒を持った鞭で目をやられて入院中で、眼帯をかけていたため、盲目をまぬがれた。盲目の人でいっぱいの大都市ロンドン! 追い討ちをかけるように、得体の知れない疫病が発生し、3本足で歩行するトリフィドが次々と脱走して人間を襲いはじめる……イギリスの鬼才SF作家によって1951年に書かれた破滅テーマの傑作SF。

侵略テーマの古典作品。

宇宙戦争 Kindle版 H・G・ウェルズ (著), 宇野利泰 (翻訳)

透明人間 Kindle版 H・G・ウェルズ (著), 石川年 (翻訳)

モロー博士の島 Kindle版 ・G・ウェルズ (著), 能島武文 (翻訳)

H・G・ウェルズ発のSFイディオムは、さらにここに「タイムマシン」が加わる。時代のおかげか、個人の才能か、イギリスだったからか、その後も受け継がれるSFモチーフが詰まっていますね。その意味で正に古典。

推理小説

百万に一つの偶然 Kindle版 ロイ・ヴィカーズ (著), 宇野利泰 (翻訳)

スコットランド・ヤードの他の課が持て余した事件を引き受ける「迷宮課」の事件簿、第2弾! 恋人を奪った友人を殺した男があるが、殺しを目撃したのは友人の飼い犬だけだ。犬を始末しさえすれば完璧だった。死んだ犬が警察に通報さえしなければ……だがそんなことが起こったのだ。この表題作のほか、鮮やかな幕切れに終わる到叙ミステリー9編を収録。リアリティのある犯人のドラマ!

推理小説が好きなら、ロイ・ヴィカーズが残した「迷宮課事件簿」のシリーズは是非とも一度読んでみて欲しいです。珠玉の推理短編とはこういうものか!、と新鮮な感動を得られること間違いなし。確かエラリー・クイーンも大絶賛していたシリーズです。

元はハヤカワのポケミスで刊行され、ハヤカワミステリ文庫でも復刊されました。現在はグーテンベルグ21から3冊リリースされているようです。

「ゴムのラッパ」とか、身体が痺れるような衝撃というか、感動を覚える見事な作品なんですよ~。

ゴムのラッパ Kindle版 ロイ・ヴィカーズ (著), 吉田誠一 (翻訳), 村上啓夫 (翻訳) (読み放題対象ではありません)


毒蛇 ネロ・ウルフ Kindle版 レックス・スタウト (著), 佐倉潤吾 (翻訳)

史上最も風変わりな探偵…それが本書に登場のネロ・ウルフである。1日にビールを6リットルちかくも飲み、フランス料理の専門シェフを雇うくらいグルメで大食、おかげでぶくぶくに太って、大好きな蘭を1万株も栽培する屋上に行くのも専用エレベーターの世話になる。つまり自分では動けず、完璧な安楽椅子探偵。指示を仰いで動き回るのは有能な助手のアーチーだ。本書は47作にものぼるシリーズ処女作で、むろん最高の出来という折り紙つきの作品。そもそも本書巻頭で、見知らぬイタリア女の不意の来訪を受けたのは、49の銘柄のビールを一本ずつ賞味しているときであった!

安楽椅子探偵ものであり、美食家が探偵というシリーズ。
長編は全部で33作書かれました。「毒蛇」はシリーズ第一作。

グーテンベルグからは7冊リリースされ、内4冊が読み放題対象です。

悲劇 (全4巻) エラリー・クイーン (著) , 田村隆一 (翻訳)

有名な、「Xの悲劇」「Yの悲劇」「Zの悲劇」「最後の悲劇」という4部作です。今月は4冊とも読み放題対象になりました。4冊ともなのは初めてじゃないでしょうか。

1932年から33年に掛けて、エラリー・クイーンはバーナビィ・ロスという別名でこの4部作を発表しました。1940年代以降はエラリー・クイーンの名前で出版されるようになったようです。

要は4部作を通じて、先入観無しに読者に謎を楽しんでもらいたかったのでしょうね。

皇帝の嗅ぎ煙草入れ Kindle版 ディクスン・カー (著), 宇野利泰 (翻訳)

江戸川乱歩はこの作品について、「物理的に絶対なし得ないような不可能を、不思議な技巧によってなしとげている」と評して激賞した。カーは、謎解きの妙味を骨の髄まで心得ている作家、謎はとうてい解決不可能だと読者に信じこませれば、それだけあざやかに解決したときの感銘は深い。それを十分承知しているのである。

帽子蒐集狂事件 Kindle版 ディクスン・カー (著), 宇野利泰 (翻訳)

「不可解な謎とその合理的な解決」を信条としたディクスン・カーの本格ミステリーの代表作のひとつ。舞台は陰惨な伝説にみちみちたロンドン塔、その中の、そのむかし反逆者が夜、テムズ川から船に乗せられてこの塔に収容されるときに使われた逆賊門(トレイターズ・ゲート)で、殺人は起こる。濃霧につつまれたなか、昼なお暗いその構内に、シルクハット!をかぶり、中世の鉄矢で背中を射られた死体が発見されるのだ。

ディクスン・カーと言えば密室トリック、とすぐ連想されるくらい、密室とか不可能犯罪という題材を追求した作家です。あとはオカルティックな要素を多分に含んだ作品なども書いています。

小説としては若干古さを感じるところですが、推理小説の歴史を追う上では外せない作家、作品でしょう。

ディミトリオスの棺 Kindle版 エリック・アンブラー (著), 村崎敏郎 (翻訳)

派手なアクションを避け、地道にスパイの心理を追うスパイ小説の王道を切り開いたアンブラーの初期の代表作。「探偵小説味のある作品を書いている現役の作家で、文学者として最も優れた人は誰かと考えてみると、英のグレアム・グリーン、仏のジョルジュ・シムノン、それから英のエリック・アンブラー、この三人が特別に際立っている」江戸川乱歩はこう書いた。イスタンブールを訪れた英国人作家ラティマーは、秘密警察長官から、国際的犯罪者ディミトリオスが死んだことを聞かされる。だが、ディミトリオスの死体を眺めているうちに、ラティマーはこの男の謎につつまれた過去を洗ってみようという衝動にかられた。

血の収穫 Kindle版 ダシール・ハメット (著), 能島武文 (翻訳)

ハメットの長編処女作。この一作によってハードボイルドは誕生した。舞台はポイズンビル(毒の町)の異名をとる鉱山町パースンビル、新聞社社長からの「頼みたい仕事」があるという依頼を受けてサンフランシスコから派遣された「わたし」こと、コンチネンタル探偵社のオプ……だが待っていたのは依頼主の射殺事件だった。派閥のボスたちの争いは、血は血をよび、果てしなくつづく。

ハメット、凄いですよ。実際読むと。
発表当時の衝撃は想像するしかありませんが、相当だったでしょうね。

木曜日の男 Kindle版 チェスタートン (著), 橋本福夫 (翻訳)

無政府主義者のグループは「日曜日」と呼ばれるボスによって統括され、幹部はそれぞれ曜日の名前を冠された7人で構成されていた。たまたまメンバーの「木曜日」が急死したため、まぎれこんだ詩人のサイムは「木曜日」に任命された……スパイもの? ファンタジー? 思想小説? チェスタートンならではのエンターテインメント。

ブラウン神父シリーズで有名なチェスタトンの作品。
非常に風変わりで、一応推理小説扱いされていますけれど、独特な文芸作品です。

殺意 Kindle版 フランシス・アイルズ (著), 宮西豊逸 (翻訳)

田舎町の開業医ビクリーは妻のジュリアの抹殺を決意する。周到完璧と思われる殺害計画にもとづく実際の犯行、捜査警察官との虚々実々のやりとり、緊迫感あふれる法廷での尋問、そして意想外な結末……倒叙形式ミステリの最高傑作のひとつであり、推理サスペンスの頂点をなす代表作。フランシス・アイルズという名は「毒入りチョコレート事件」で有名な英国を代表するミステリ作家アンソニー・バークレーの別名である。

毒入りチョコレート事件 Kindle版 アンソニー・バークレー (著), 加島祥造 (翻訳)

不可解な殺人事件の解決に乗りだす犯罪研究サークルの6人の会員たち。それぞれが得意にするアプローチに頼って、推理をおしすすめるが…本格推理の種々の手法を縦横に駆使して読者をうならせる傑作。高村薫氏いわく「バークレーは名投手のピッチングのように、速球、変化球、内角外角、高さ低さを見事に使い分け、向かってきます」「解決場面だけが続くようなミステリーがあったら…と空想する人にはたまらない、夢のような本です」。

推理小説史上外せない作品がまたひとつ。


こんな感じで、推理小説は結構読み放題対象になっています。
アガサ・クリスティ作品も結構ありますよ。

イギリス小説

ホテル Kindle版 アーサー・ヘイリー (著), 高橋豊 (翻訳)

「ファクション」作家アーサー・ヘイリーの名を一躍高めたベストセラー。ニューオーリンズ最大のホテル、セント・グレゴリーは、深刻な赤字を抱えていた。あらゆる融資を拒否されて苦悩する頑固な老経営者と、彼の片腕となって奔走する精力的な副総支配人。やがて、買収をもくろむチェーン・ホテルの総帥が乗り込んでくる。巨大な組織の内部をえぐり、極限状況の中で展開される群像劇。そこには客と従業員にも多種多様な人間が登場する。客の不始末を種にゆすりをかける警備主任、ホテルを餌食にする専門の盗人、チップをピンはねするボーイ長、黒人医師の宿泊拒否トラブル…次々に展開する多彩なドラマ!

70年代から80年代に掛けての大人気作家、アーサー・ヘイリーの作品が実はグーテンベルグから出ていました。いや~、今まで気付きませんでした。

映画にもなった「0-8滑走t路」とか「大空港」はないですね。医療業界の「最後の診断」もない。でもこの「ホテル」を初めとして、代表作がいくつか読み放題です。

特定の業界事情を深く取材し、ありありと描きながらも人間ドラマとエンターテイメント要素を盛り込んだ、重層的な作品が特徴でした。「事実に深く根ざしたフィクション」を「ファクション」と評したのでしょう。

大体新潮社から出ていた作品がグーテンベルグに収録されたようです。

自動車 Kindle版 アーサー・ヘイリー (著), 永井淳 (翻訳)

作者へイリーは徹底した取材を武器に巨大組織を描いた作品を次々に生み出し、その長編ドキュメンタリー・フィクションは「ファクション」という流行語を生んだ。本書もその一編。アメリカの巨大な自動車会社のダイナミックなメカニズムを、新車「オリオン」の開発をめぐる全活動を通じて、あらゆる角度から詳細に描き、現代企業の全貌を描ききった。幹部の面々、デザイナー、工場長、パーツメイカー、広告代理店、ディーラー、レーサー、映画監督まで登場し、虚々実々の駆引き、野心と欲望に火花を散らす男女をからませ、抜群のストーリー・テリングを駆使した、話題の長編。

マネー・チェンジャーズ Kindle版 アーサー・ヘイリー (著), 永井淳 (翻訳)

銀行内部の人間模様を、詳細に、赤裸々に描ききった長編野心作。アメリカ中西部最大の銀行の次期頭取の椅子を争う二人の副頭取は、地域開発計画への出資をめぐって鋭く対立した。利潤の追求か、それとも公共性の重視か。大企業シューナトコーヘの大口融資を図って主導権を握ろうとするロスコー、その危険な経営内容を知ってこれをはばもうとするアレックス。ついにロスコーは賄賂を受けとった……。暗躍する大クレジット・カード偽造団や、取付け騒ぎなども絡んで、事態は緊迫の度を深める。アーサー・ヘイリーは緻密な取材に基づいて様々な業界の内幕を活写した作品群でよく知られる英国生まれの作家。2004年に亡くなった。

ストロング・メディスン Kindle版 アーサー・ヘイリー (著), 永井淳 (翻訳)

企業における利潤追求と社会的使命の調和という、永遠のテーマを追求する、著者の会心作。大手製薬会社で働くシーリアは、医者たちに新薬を紹介する仕事に情熱を注いでいた。利潤追求のみを目的とした新薬開発競争を目にし、男性社会が持つ様々な偏見や障害と闘ううちにも、彼女の健全な良心は揺らぐことはなかった。アメリカの製薬業界で、鋭い直観力と強烈な野心を武器に成功していく一人の女性と、その周辺に展開される多彩な人間模様を描ききる。


他にも西洋古典やイギリス、アメリカ、フランス、ドイツの古典小説などがいろいろあるのですが、最もピックアップしたかった作品は今回の内容です。

もしかしたら第2弾を書くかも知れませんが、とりあえず本日はここまでで。

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