今回は、グーテンベルグ21という出版元に焦点を絞った内容にしようと思います。
全体に古めの作品が多いのですが、必ずしも著作権切れという訳でもないようで、パブリック・ドメイン作品をインターネット上で無料公開することから始まったグーテンベルグ・プロジェクトとは共通性もあるようで違ってもいるようで・・・。
知っていれば非常に貴重な作品・名作が転がっているのですが、ある程度文学史の知識がないと、知らない作家ばっかり~、ということになるやも知れません。私も部分的にしか分からないのですが、、知っている範囲で分類整理してみようと思います。
含まれている作品を、読者目線でざっくり大分類してまとめてみようと思います。
クラシックSF
SF作品についは、過去には早川書房か創元推理文庫でリリースされていた作品が多いです。いや、推理小説もかな?
なんと!!!、こんな短編集が先月電子書籍化されて、今月読み放題だと!!!
大事件です。今月はこれ1冊で気分は大満足という事件です。
60年代に早川書房の「異色作家短篇集」という叢書で翻訳が出ました。ところが70年代に新装版となった時にはラインナップから外れてしまったのですよね。そのため80年代から2000年代までずっとプレミア価格が付いていました。
2005年に遂に再刊されました。
しかし電子書籍もなく、やはりそれほど入手が容易とは言えませんでした。
そこからさらに18年! 今なら実に安価で容易に入手できます。
これは日本国内においても、60年にして一度目の大チャンスなのです!
現在Amazonのカタログで見つかる原書は以下のものです。
元々の出版は1953年。
この短編集には「ビアンカの手」というとても有名な短編が収録されているのです。あちこちでスタージョンの名前と「ビアンカの手」という作品名を目にするのに、実物が手に入らない・・・。80年代、90年代のSFファンの多くは似たようなやきもきした気持ちを味わっていたのではないでしょうか?
ついでに、スタージョンの代表的な長編である「夢見る宝石」も今なら読み放題です。
これまた奇妙で奇怪で美しくて怖い、忘れられない作品です。
こちらも正に古典的名作。
フレドリック・ブラウンはSF、ミステリ、サスペンスなどかなり幅広いジャンルの作品を書いており、SFオンリーの作家ではありません。多作で、全てが傑作というわけではないのですが、名作も多く残している、そんな独特な作家です。
これまた、その後のSF作品に多大な影響を与え続けている名作。
あまりに魅力的な未知の生き物の創造、高度に専門化した科学の陥穽。
4編の内最初の一編を読むだけでも十分感動できます。
大宇宙の魔女 Kindle版 C・L・ムーア (著), 仁賀克雄 (翻訳)
これハヤカワSF文庫から出ていたとき、表紙が松本零士だったんですが、実に内容にぴったりな絵でしたね。
ホント、このイラストのイメージ通りの、幻想的な宇宙SFというかファンタジーというか。
かつてサンリオSF文庫でリリースされていた作品。
短いけれど恐ろしく密度が高い、ディレイニーの代表作。
ディック初期の短編集。これはハヤカワ文庫のNVで出ていたと記憶しています。奇妙な味わいの作品を書く作家として扱われていたのでしょうか?
こちらも初期短編集。
本領発揮の黄金期作品は、大半がハヤカワからで、一部創元SFから出ているといった感じでしょうか。
失われた世界 Kindle版 コナン・ドイル (著), 永井淳 (翻訳)
その後多数の作品の原型となった作品。小学生の頃に読んで熱中しました(笑)。
トリフィドの日 Kindle版 ジョン・ウィンダム (著), 志貴宏 (翻訳)
侵略テーマの古典作品。
透明人間 Kindle版 H・G・ウェルズ (著), 石川年 (翻訳)
モロー博士の島 Kindle版 ・G・ウェルズ (著), 能島武文 (翻訳)
H・G・ウェルズ発のSFイディオムは、さらにここに「タイムマシン」が加わる。時代のおかげか、個人の才能か、イギリスだったからか、その後も受け継がれるSFモチーフが詰まっていますね。その意味で正に古典。
推理小説
百万に一つの偶然 Kindle版 ロイ・ヴィカーズ (著), 宇野利泰 (翻訳)
推理小説が好きなら、ロイ・ヴィカーズが残した「迷宮課事件簿」のシリーズは是非とも一度読んでみて欲しいです。珠玉の推理短編とはこういうものか!、と新鮮な感動を得られること間違いなし。確かエラリー・クイーンも大絶賛していたシリーズです。
元はハヤカワのポケミスで刊行され、ハヤカワミステリ文庫でも復刊されました。現在はグーテンベルグ21から3冊リリースされているようです。
「ゴムのラッパ」とか、身体が痺れるような衝撃というか、感動を覚える見事な作品なんですよ~。
ゴムのラッパ Kindle版 ロイ・ヴィカーズ (著), 吉田誠一 (翻訳), 村上啓夫 (翻訳) (読み放題対象ではありません)
毒蛇 ネロ・ウルフ Kindle版 レックス・スタウト (著), 佐倉潤吾 (翻訳)
安楽椅子探偵ものであり、美食家が探偵というシリーズ。
長編は全部で33作書かれました。「毒蛇」はシリーズ第一作。
グーテンベルグからは7冊リリースされ、内4冊が読み放題対象です。
有名な、「Xの悲劇」「Yの悲劇」「Zの悲劇」「最後の悲劇」という4部作です。今月は4冊とも読み放題対象になりました。4冊ともなのは初めてじゃないでしょうか。
1932年から33年に掛けて、エラリー・クイーンはバーナビィ・ロスという別名でこの4部作を発表しました。1940年代以降はエラリー・クイーンの名前で出版されるようになったようです。
要は4部作を通じて、先入観無しに読者に謎を楽しんでもらいたかったのでしょうね。
皇帝の嗅ぎ煙草入れ Kindle版 ディクスン・カー (著), 宇野利泰 (翻訳)
帽子蒐集狂事件 Kindle版 ディクスン・カー (著), 宇野利泰 (翻訳)
ディクスン・カーと言えば密室トリック、とすぐ連想されるくらい、密室とか不可能犯罪という題材を追求した作家です。あとはオカルティックな要素を多分に含んだ作品なども書いています。
小説としては若干古さを感じるところですが、推理小説の歴史を追う上では外せない作家、作品でしょう。
ディミトリオスの棺 Kindle版 エリック・アンブラー (著), 村崎敏郎 (翻訳)
ハメット、凄いですよ。実際読むと。
発表当時の衝撃は想像するしかありませんが、相当だったでしょうね。
木曜日の男 Kindle版 チェスタートン (著), 橋本福夫 (翻訳)
ブラウン神父シリーズで有名なチェスタトンの作品。
非常に風変わりで、一応推理小説扱いされていますけれど、独特な文芸作品です。
毒入りチョコレート事件 Kindle版 アンソニー・バークレー (著), 加島祥造 (翻訳)
推理小説史上外せない作品がまたひとつ。
こんな感じで、推理小説は結構読み放題対象になっています。
アガサ・クリスティ作品も結構ありますよ。
イギリス小説
70年代から80年代に掛けての大人気作家、アーサー・ヘイリーの作品が実はグーテンベルグから出ていました。いや~、今まで気付きませんでした。
映画にもなった「0-8滑走t路」とか「大空港」はないですね。医療業界の「最後の診断」もない。でもこの「ホテル」を初めとして、代表作がいくつか読み放題です。
特定の業界事情を深く取材し、ありありと描きながらも人間ドラマとエンターテイメント要素を盛り込んだ、重層的な作品が特徴でした。「事実に深く根ざしたフィクション」を「ファクション」と評したのでしょう。
大体新潮社から出ていた作品がグーテンベルグに収録されたようです。
マネー・チェンジャーズ Kindle版 アーサー・ヘイリー (著), 永井淳 (翻訳)
ストロング・メディスン Kindle版 アーサー・ヘイリー (著), 永井淳 (翻訳)
他にも西洋古典やイギリス、アメリカ、フランス、ドイツの古典小説などがいろいろあるのですが、最もピックアップしたかった作品は今回の内容です。
もしかしたら第2弾を書くかも知れませんが、とりあえず本日はここまでで。