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時折最高:051 John Cage - Quartets (1976)

John Cageの名前は、現代音楽の歴史の中でも未だに賛否両論がつきまとうものです。音楽のあり方に大きな一石を投じた革命家とも、稀代のペテン師とも言われます。評論を仕事にする人ならばご自分の立場や見解を明確にせざるを得ないので、何かしら意見をまとめる必要があるでしょう。

ただ、普通の音楽愛好家やリスナーであれば、別に他の作曲家やポピュラー音楽のアーティストと同じように扱っていいんじゃないでしょうか?
すなわち、「好きになれる曲もある」「いい曲もある、悪い曲もある」「他は知らないけど、○○という曲だけは知ってる」くらいの付き合い方で。

さて、週末に向けて、ぼうっと聴きながらリラックスしたい方向けの音楽をご紹介しましょう。John Cage作曲の「Quartets」という曲です。

QuartetではなくQuartetsと複数形なところにご注目。

This work is entitled Quartets because at any given time, only four instruments play simultaneously. Other versions of this work were made for 41 and 93 instruments. All 8 quartets are derived (via subtractive method) from existing compositions: I. Lift up your heads, o ye Gates (Jacob French); II. The Lord Descended (William Billings); III. Old North (W.B.); IV. New York (Andrew Law); V. Heath (W.B.); VI. Judea (W.B.); VII. Greenwich (A.L.); VIII. The Lord is Ris'n (W.B.)

https://johncage.org/pp/John-Cage-Work-Detail.cfm?work_ID=157

オーケストラ曲なのですが、同時に鳴る楽器は4つ、ということから付けられたタイトルのようです。英文の解説によれば、既存の曲を利用して音を間引き、同時に鳴る音を4つにする方法で書かれているようです。

出来上がった結果はどうでしょうか?
なんというか、漠然として不明瞭ながら、響きとしてはなんだかいい曲の断片がちらほら見え隠れするような、安心感が曖昧さをはらんで漂っているような、そんな感触ではないでしょうか。

曲の仕組みなどを知らなくとも、どこにも辿り着かないこの音の響きの作品は、普段何かしらのゴールに辿り着くことを要求されている日常から離れるにはうってつけの一曲ではないかと思います。

この曲が似合うのは、「授業をさぼって」とか「仕事の休憩時間を勝手に延長して」とかしながら、日差しの中でしばしぼぉっとするような、そんなシチュエーションかなあ、と。

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