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喫茶ワキ毛

昔、好きだった喫茶店が愛知県にあった。老夫婦が切り盛りしていた。季節のコーヒーなんかあったりして良かった。当時は当たり前のようにコーヒーを啜りながらタバコを吸っていたのが懐かしい。
しかし、何よりも旦那さんである老マスターが作る和風パスタが格別に旨かった。
ある時、僕はいつものように和風パスタを注文。老奥さんが「おまたせしました」と持ってきた和風パスタの上にはちぢれ毛が乗っていた。おれは風か何かでどこかの毛が乗ったと思い、ピンと床にハネて和風パスタを食べた。
それが5回に1回は起こるようになった。「え?マスターのち◯毛!?」と一瞬ゾッとしたが、寡黙な長年喫茶店を経営してきたマスターがち◯毛を入れるような変態であるわけがない。何の毛なのだ?
年が明ける。5回に1回の和風パスタの上のちぢれ毛は3回に1回は乗るようになった。おれは気がついた。「これはマスターのワキ毛や!!」と。老化により、頑張った結果、半袖からワキ毛が和風パスタに降下していたのだ!!
「愛嬌(あいきょう)、愛嬌」と床にピンとマスターワキ毛をハネて和風パスタを食べるおれ。マスターワキ毛がある時、パチンコで勝ったり良いことがあったので「愛嬌、愛嬌」で済ませていた。
しかし、年が重なるにつれ、3回に1回は2回に1回となり、ついには100%1回に1回マスターワキ毛がインするようになった。「エンドレスラッキーやぁーっっ!」と僕は思ったが、その後その喫茶店は潰れた。
老マスターが天に昇ったのだろう。
ありがとう、「喫茶ワキ毛」
#おもいでぽろぽろ
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#和風パスタ

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