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うろ覚えの「車馬通行止め」

 時折、条理解釈について思い出すことがあります。

 法学部出身者なら一度は聞いたことがありそうな「車馬通行止め」の例で説明されるアレです。

 以前は法律をバリバリに使う仕事をしていたのですが、もう3年くらいは実務で法律を使うことはなくなりました。

 それでもまだうっすらと覚えているのは、たまに取り出して面白がることができるからかもしれません。

 自分でも記憶があいまいになることがあるので、それとなくまとめてみます。

 おぼろげな記憶で書いていくので、気になったら調べてみることをおすすめします。

前提

 条理解釈の理解のため、伝統芸能ばりによく使われている例として「車馬通行止め」があります。

 簡単に言うと「この道は車や馬は入ってはいけませんよ」という注意書きですね。

 児童公園の入り口に掲示板が設置されているとイメージしてみてください。

 この注意書きをどのように理解するかがいろいろあって面白いんです。

文理解釈

 文理解釈は簡単です。読んだままに飲み込むというただそれだけ。

 車に乗った人が公園を通り抜けようとしたとき、「車馬通行止め」と書かれた看板を読みました。

 ああ、ここは車が通れないんだな。じゃあ迂回しよう。

 これが文理解釈です。

 当たり前ですが、これが基本にあります。

 法律を読むときも文字通り適用すれば足りることも多いです。

拡張解釈

 拡張解釈は拡大解釈とも言います。

 拡大解釈は昨今は自分の都合のいいようにルールを大きくしている印象が強いかと思います。

 法律以外でも一般的に使われる言葉ですが、拡大解釈というのは本来は中立的な言葉です。

 車馬通行止めを例に考えてみましょう。

 文字通りに考えると、公園に車や馬は入ってはならないという内容です。

 では、ここに牛を連れた人が来たらどうでしょう。

 看板は車や馬の進入を禁じていますが、牛のことについては記載がありません。

 では牛は入って良いのかを考えるときに拡大して考えます。

 掲示板が設置された趣旨から考えると、以下のようなことが想像できます。

 子どもたちが遊ぶ公園に車や馬などの大きな乗り物が入ってきては危険だから進入を禁じている。

 この場合は馬だろうが牛だろうが子どもに危険を及ぼす可能性があるため、牛も同様に進入禁止です。

 もちろんゾウでもドラゴンでも。

 これが拡大解釈です。

縮小解釈

 次に、やってきたのがウシを連れた人ではなく、乳母車を押しているお母さんだった場合はどうでしょう。

 乳母車も名前に「車」と入っているので、文字通りに読むと「車馬通行止め」の規制にひっかかります。

 とはいえ、先に挙げたように通行止めの注意書きは子どもたちが安全に遊ぶためです。

 では乳母車が公園に入ってきて子どもたちの邪魔をするかといえば、それは考えにくいかと思います。

 車や馬ほど大きくないですし、スピードを出せるわけではありません。

 ですので乳母車は車に含まれるように思いますが、注意書きの趣旨から車の範囲を狭めて考えて、進入できるということです。

類推解釈

 だんだん法律用語っぽくなってきました。

 類推解釈は明らかな記載がないときに似た事例に頼って解釈をする方法です。

 例えばヘリコプターが公園へ着陸しようとしている場合を考えてみましょう。

 この公園の注意書きは「車馬通行止め」だけ。

 ヘリコプターは車馬ではありませんが、子どもたちが遊ぶにはあまりにも危険です。

 ここでヘリコプターの着陸を規制しようとすると類推解釈が必要になります。

 注意書きの「車馬」を「乗り物全般」と考えると、ヘリコプターも乗り物として括ることができます。

 すると車馬とヘリコプターは似たようなものとして捉えられるので、ヘリコプターの着陸も規制することになります。

 同じ親(乗り物全般)から生まれた兄弟として考えると少しはわかりやすいかもしれません。

 類推解釈は行き過ぎると本来規制すべきだったものまで認めてしまうことになりかねないので、取扱注意ですね。

反対解釈

 文理解釈と近いような、ちょっと違うような考え方が反対解釈です。

 「車馬通行止め」と書いてあるところへ、成人男性がやってきたとしましょう。

 車馬の通行を禁止しているので、車馬ではない成人男性は通行を禁止されないという考え方です。

 言ってみれば「車馬以外の通行はOK」ということです。

 当たり前に思われるかもしれませんが、反対解釈は厳密にはちょっとややこしくて…

 立法趣旨や目的、制度などを広く考えないと不当に規制をくぐりぬけてしまう可能性があるので取り扱い注意です。

 類推解釈とは逆の立場ですが、どちらも妥当性に照らして正しく使いましょう。

 これら以外にも変更解釈や勿論解釈などもありますが、それらについてはまた興味が沸いたときにお調べください。

 法解釈は法律を読み解き、適用するときに使用されるものですが、仕事の場面や日常生活でもこれらの知識があると便利なこともありますので頭の奥底にしまっておくと、どこかで役に立つかもしれません。

 もし記載に誤りなどあればコメントください。

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