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一日だけの回顧録

 私はソシャゲを基本的にやらないタイプの人間だ。

 ある一定の期間だけ集中的にハマることはある。しかし、本来は通信機器であるはずのスマホが占有される、あるいはスマホが発熱してバッテリーを劣化させるのを嫌って10日もすればアンインストールしてしまう。
 付け加えるならログインボーナスも煩わしくなってしまう理由のひとつ。
 ともかく、私はソシャゲとの相性があまり良くないのだ。
 そんな私が数年にわたってプレイしてきたゲームがひとつだけある。

 「駅メモ! - ステーションメモリーズ! -」(以下、「駅メモ」)というアプリがある。

駅メモ!

 これは大人気ゲームPokemonGOやドラクエウォークのように位置情報を利用して遊ぶスマホゲームで、特に電車などの駅にフォーカスしたもの。

 駅へアクセスして既に他のプレイヤーがいれば攻撃、攻撃が成功すれば駅に居座って防衛をするというゲームだ。

 普段ゲームをしない私は一時期、駅メモをはちゃめちゃに遊んでいた。
 当時は例の感染症はまだ存在すらも確認されていない時代で、鈍行列車を乗り継いで15時間近く遠征をして駅を渡り歩いたり、時には飛行機に乗って北の果てまで旅立ったこともある。知らない駅を渡り歩くのが面白かったのだ。
 とは言え9000以上ある全国の駅を踏破したわけではなく、駅メモ遠征もあくまでも観光のついでだったので四国や九州南部は私にとっての白地のままだったが。

 駅メモの魅力は駅をめぐって記録を付けていくことだけではなく、でんこというキャラクターもその一翼を担っている。
 でんこは実際の電車車両をモチーフにした女の子の擬人化キャラクターで、それぞれに特殊な能力が備わっている。朝や夜の時間限定で強化されたり、仲間のでんこを強化したりとまさにゲームらしい特性が盛り込まれている。


 私はでんこというコンテンツが好きだった。キャラクターがかわいいというのもあるが、電車をモチーフにしているおかげで調べれば調べるほど知識が増えていく。車体だけでなく車両が走っている路線や駅まで芋づる式に歴史と知識が掘り出されていくのだ。

 私の好きなでんこはドイツで活躍した後、福井県でも活躍している某黄色い電車をモチーフにした子なのだが……これはまた別の機会に。

リト=フォン=シュトゥットガルト かわいい


 先日、手持ち無沙汰で家にいたとき、ふと思い出して駅メモをインストールした。
 なぜ思い出したのかは記憶にない。たぶんtwitterで何か見たのだろう。
 当時使っていたスマホはずいぶん前に買い換えたのでバックアップは取っておらず、チュートリアルから始めることに。

 初期に配布されるでんこを懐かしんだり、キャラ一覧からかつて愛用していたでんこを見たりして一時は楽しんでいた。その時間、おそらく三時間程度。

 駅へのアクセスは自宅の最寄り駅に2回チェックインしただけ。他プレイヤーに勝つには至らないまま、面倒くさくなってアンインストールした。
 でんこへの思い出補正がかかっていても、私のソシャゲ苦手には到底打ち勝てなかった。

 

 一日だけの里帰りで得たものは郷愁ばかりではなかった。
 当時は知らなかった名鉄の1700系が元になっているでんこをみつけたり、既にラストランを迎えた車両を知ったりと新たな発見にもなった。鉄の世界はまだまだ広く私たちを待ってくれている。
 だがそれもゲームを継続してプレイする原動力にはならなかった。
 きっと紙の地図を開いて路線を塗りつぶすゲームだったとしても、興味は続かなかっただろうと実感している。
 また時間とお金と体力に余裕のあるときにでも駅巡りの旅に出たいと思う。その頃には廃線や引退車両も増えているだろう。

 未来に待ち受けるセピアな記憶も既にノスタルジーである。(そ)


遠征で出会ったウサギたち かわいい

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