恋愛小説 ⑬

この人は一体、何を考えているのか。果たして生きて帰れるのか。浴びたことのない感情が僕の心を襲う。
バイクを3分ほど走らせた頃、ようやく赤信号に差し掛かった。
「ほんとに何をする気ですか?せめて命だけは。」
「大丈夫。それだけはしっかり補償するよ。そもそも殺そうとか思ってないから。後、強引なことして本当にごめん。後で事情は詳しく話すから、もうちょっと捕まっておいて。」
相手が優しく僕に話しかける。
「行くよ。もうちょっと先のファミレスまで。」
青信号になり、相手はそのままバイクを走らせる。
それから5分ほど走り、一軒のファミレスが、ポツリと現れた。
「ここでいいや。」
彼女はバイクをゆっくりと駐車場に停める。
「着いた。降りていいよ。」
僕は一息つき、バイクを降りた。
すると、その直後、相手がヘルメットを外した。
その瞬間、僕は思わず自らの目を疑った。
スラっとした背丈
くっきりとした目鼻立ち
年相応の凛とした顔立ち
愛嬌のあるかわいい笑顔
この全てに心当たりがあった。
「ってか、お前…。」
僕は思わず呟いた。
相手は、僕に目を合わせ、ゆっくりと頷いた。

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