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ギターの力を感じさせたティボー・ガルシア

29歳のフランス人若手クラシック・ギタリスト、ティボー・ガルシアの来日コンサートへ行ってきた。

期待を裏切らない素晴らしい演奏。なんといっても奏でる音色が美しい。高度な技術を持ったギタリストは他にいても、心を鷲掴みにする音色を持つ人はそうそういない。

座った席はホールの最後列だったが、浜離宮朝日ホールの音響がいいのか、ティボー・ガルシアが上手いのか、生音でも音の小ささが気になることはなかった。

つねづね、ナイロン弦のギターは非力だと思っていた。でも、ティボーはそんなことはないと証明してくれた。

音に吸い込まれる。そうすると音の大きさよりも、音が語りかけるものに心が揺さぶられ、距離を忘れる。

前半は近作のアルバムで取り上げたアグスティン・バリオスの作品を中心とした演目、後半は19世紀の作曲家からセルジオ・アサドやレオ・ブローウェルなど現代ラテンアメリカのギター作品まで、持ち味が引き立つバランスのとれた構成だった。

華やかなパッセージよりも、内面的な曲調、ダイナミクスよりもエモーションに、彼のよさがあらわれていた。

アンコールで演奏したタンゴの有名曲「ラ・クンパルシータ」には、若々しさとイタズラっぽさが入り交じり、観客を大いに沸かせた。

クラシック・ギターの演奏会としては珍しく、観客席には若い女性の姿もちらほら。ティボー・ガルシア人気の幅広さが感じられた。

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