Is This Loveに関するあれこれ
イチゴの丘
世界中で売れ続けているモンスター・コンピレーション・アルバムLegendの一曲目に選ばれたため一躍有名になった曲です。
ひとつ前のアルバムExodusに収められたWaiting in Vain、Turn Your Lights Down Low同様、1976年の出会いからこの世を去った1981年まで愛し続けた女性シンディ・ブレイクスピア(Cindy Breakspeare)のためにボブが作った愛の歌です。
いろんなキーワードで検索をかけて調べてみましたが、曲の舞台になっているのは、誰にも邪魔されずCindyと甘い時間を過ごしたStrawberry Hillのようです。
Strawberry Hillはキングストンの北東、コーヒーの産地として名高いブルーマウンテン(Blue Mountains)山中にあるリゾートホテルです。
1972年から所有者はアイランドレコード(Island Records)社長としてボブを世界に売り出したクリス・ブラックウェル(Chris Blackwell)です。
Blackwellの計らいでボブはセキュリティ万全なStrawberry Hillを何度もCindyとの泊りのデートに使っていたと言われています。
銃撃事件の直後、姿をくらましたボブは2日間をここで過ごし、Smile Jamaica Concert出演後もう一晩だけ滞在してから飛行機で隣国バハマへと移動したそうです。
Strawberry Hillは高級リゾートホテルとして今も営業しています。ぜひ一度訪れてみたい場所です。
不都合な真実
ボブとCindyが二人っきりで時を過ごしたブルーマウンテンやバハマといったカリブ海のリゾートをどうしてもイメージしてしまう曲ですが、レコード会社はボブの奔放な私生活がセールスに悪影響を及ぼすのを何とかして阻止したかったようです。
この曲のプロモーションのために製作されたミュージックビデオがあるんですが、何とロンドンで子供たちのバースデーパーティに参加したボブが「これが愛だよね?」と踊りながら歌っています。
ここまで曲のイメージと合わないビデオも珍しいです。One Loveのミュージックビデオ(https://www.youtube.com/watch?v=1PDdCmJ84LI)とは対照的に、存在すらほぼ忘れられてしまっていますが、当然だと思います。
ちなみにこのビデオが撮影された場所、ケスキディー・センター(Keskidee Centre)は、イギリス初のカリブ海出身者コミュニティ(後述します)のために作られたアート&カルチャー施設でした。
過去形にしたのは1992年に閉館したからです。建物自体は現在教会として利用されているようです。
ナオミ・キャンベル
子役が大勢登場するこのミュージックビデオ、実はスーパーモデル、ナオミ・キャンベル(Naomi Campbell、当時7歳)の知られざるデビュー作でもあります。
インタビューでNaomiはこう振り返っています。
「私の家族はレゲエが大好きだった。私はまだ7歳で、撮影がどんなものかすら知らなかったわ。気がついたらボブがすぐ隣に立っていて、毛布の下に私を寝かせてくれた。彼は最高にハンサムで、骨格が美しくて、愛想が良くて、わが家で聞き馴染んでたのと同じ強いジャマイカンアクセントで優しい喋り方だったわ」
黒人モデルとして初めてTime magazineの表紙を飾ったNaomiは在英カリビアンです。お母さんValerieがジャマイカの出身です。
ウインドラッシュ世代
Naomiの家族はおばあさんもロンドン在住だったという話なのでおそらくWindrush Generationという呼び名で知られている1948年から1971年にかけて仕事を求めて移民船でカリブ諸島からイギリスに渡ってきた人たちとその子孫だと思われます。
ジャマイカ、トリニダード・トバゴ(Trinidad and Tobago)、バルベイドズ(Barbados)、バミューダ(Bermuda)といった島々からやってきた彼らは自分たちアフロカリビアンのコミュニティを形成しました。旧植民地から来た黒い肌の人間に対する差別や偏見に対抗するためです。
ウエイラーズのルーツレゲエの強い影響下、楽器を手にして黒人の誇りを歌にしてブリティッシュ・レゲエ・シーンを生み出した在英カリビアンたちはWindrush Generationの子供や孫たちです。
誰がどう歌っても最高
話をIs This Loveに戻します。
歌詞もメロディも極上のこの最高のラヴソング、当然世界中で今も大勢の人に歌われています。
お薦めのカバーをいくつか紹介しておきます。
原曲が素晴らしいんでどんな風に歌っても悪くなりようがないって感じですね。
今回は少し曲から離れてStrawberry Hillやミュージックビデオやナオミ・キャンベルやWindrush Generationに関してあれこれと書いてみました。それじゃまた~