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#012 短い秋を探していたとき

9月に入ったと同時に、わたしが住む街も急に涼しくなった。
昔から秋が好きだ。

秋物の服が店に並び始めると
まだ暑くて着れないとわかっていても
暖色はちょっとなぁと思っても
テンションがあがって買ってしまう。
秋の始まりはいつもそうだった。


10年前、雪国と言われる地域に引っ越したときも
季節は当たり前に4分割だと思ってた。
全部平等。それが当たり前の感覚。

住んでみてすぐにそれが間違いだったとわかった。

秋がない…
衝撃的だった。


いや、厳密にはあるよ。

8月も下旬の頃には、朝晩涼しいなと感じ始める。
9月になれば
『あ、肌寒いな』
と思う日が増えてくる。
そしてうっかりしていると寒い季節に踏み込んでいる。
気づけば長くて長くてしんどい冬だ。

そう、秋は一瞬だ。
何年かそこで過ごすうちに、わたしは秋物を買わなくなった。


それでも秋は好きだった。

半袖のまま毛布にくるまる感覚とか
朝起きたときのひやっとした空気とか
ちょっと自然の匂いが強くなる雰囲気とか
ますます綺麗に見える夕焼けとか。

秋になったかを確かめるために
仕事終わりにちょこちょこ車で山に行った。
そこにコスモスが咲いたら、『秋』だ。

スキー場よりさらに奥にあるその場所は
コスモスが見事な場所だった。
そこで見る夕暮れの景色が
わたしの好きな景色ベスト10に入るだろう。

大好きな場所だけど、ひとつ難点がある。
行きたくなくなるくらいの強大な難点だ。

〝ブユにめちゃくちゃ刺される〟
お気をつけて。

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