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”初期衝動”の保ち方 《PART1》

どうして子供が暴れ回っていたりする時に私たちはそれを”初期衝動”と名付けたりしないのだろうか。もしくは子供の犬が走り回っていたら初期衝動と名付けないのだろう。また、ライブや作品などを見ても初期衝動を感じるものとそうでないものを私たちはどうやって区別しているのだろうか。

本記事では初期衝動とは何か。初期衝動をどのように保つのか。ということについて書こうと思う。やや難解であるかもしれないが、分かりにくい部分はコメントに書いていただければと思う。

筆者はパンクバンドのボーカルである。今年の6月頃、筆者が4月に出したアルバム『『2020/Les Demoiselles d'Avignon(2020年/アヴィニョンの娘たち』の感想をハナレグミのボーカルたかし君に「初期衝動だね」という言葉でもらった時に、この初期衝動という言葉を本格的に考え始めた。

私がそれに驚いたのはバンド響心SoundsorChestrAは結成7年を得ているのに、それが初期衝動として伝わったからだ。初期衝動についての哲学はその日から本格的に始まった。

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初期衝動とは、芸術の分野、特に音楽特。バンドによく使われる現象の描写の一つ、または、それらを行う者の精神のあり方そのものさす言葉である。初期衝動とは形容詞なのか名詞なのか、副詞なのか分別しにくい。ただそれが日本語特有の文脈で語られるときに、私たちはある程度その初期衝動というシニフィアンに対して特有のシニフィエを持っている。すなわち私たちは何となくシニフィエとして初期衝動を理解できている。
※シニフィアン→海、シニフィエ→海のイメージ

表現者の目線としての初期衝動

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Photo by 村上虹郎

今回は表現者ーの側面としてそれについて考えたい。
私が務めるバンド響心SoundsorChestrAは初期衝動の塊として受け入れられてきたし、確かに初期衝動的であったと思う。多くのバンドが上手く大人になってく中徹底的に初期衝動的だった。下手くそだった。絶対にうまくならないような工夫をしていた。出演時間も守らなかった。というより守れなかった。MCで対バンを批判したり、ドラムにダイブしたり、幕張メッセでもギターをへし折ったり、とにかく衝動のままだった。

それができたのは、本気でライブをしていたからだ。客受けを一切狙わなかった。自分の中にできるだけ他者を排除していた。ただ、湧き上がる衝動を音と同一化していた。ただ、体を超えて、声を超えて衝動そのものになろうとしていた。すべての記憶が遠のくほどに、誰の音も聞こえないほどに自己の内側から湧き上がる龍のような衝動にただなりたかった。その場がライブハウスというところだっただけだった。でも他者を排除するライブはライブとしてレベルが低いことも知っていた。排除じゃなくて、他者として自己と同化して天高く舞う龍のようにideaに上昇するのが良いライブだ。

常に泣きたかったし、常に意識をなくすほどに死にたかった、常に怒っていたし、常に笑っていた、常にそれだけだった。

明日のことも、昨日のことも、全部が邪魔だった。今を忘れて今と一体化すること世界に溶け出してしまっていなくなれれば最高だった。ただ”あること”しか知りたくなかった。

無意識に抑圧していた、あの子の優しさだけが暗い世界の真ん中に優しくイエローと桃色の混ざった残像みたいにそこにあった。

初期衝動を保てたのは、常に自分が死んで新しく生まれ変わっていたからだ。だからずっと初期だった後は衝動に従うだけ。簡単だ。初期衝動は。

ライブの度に常に燃え尽きていた。もう明日もないと思っていた。生きていたらね。という約束しかできなかった。今もそうだ。全部新しかった。不死鳥みたい。

うまくライブができるようになると、逆算ができるようになる。”上手い”ライブができるようになると70%くらいがちょうどいい塩梅としてライブができる。

なんなら良い意味で”抜き”ができるようになる。全力すぎるとお客さんはお腹いっぱいになる。だからあえてまた来たくなるように一曲少なくライブをおわったりする。大切なのはお客さんの満足度、そして物販のうりあげだ。
こうしてどんどんプロっぽくなる。

そして初期衝動とは無縁のものになっていく。
そう、初期衝動を保ちたい時にやってはいけないことは”無意識的な計算”だ。
経験が増えると計算できるようになる。こうやったらこうなる。とか。
でもそれじゃいけない。でも無意識と戦うのは超難しい。

無意識を超克するのは難しい。そう頼れるのは全思考と感性を委ねられる、自分そのものの衝動だ。その初期衝動とそれに身をまかす、同化する。その時、自分は人間ではなく初期衝動そのものになる。どうなっても知らないぜ!という勇気さえも遠くの様にように感じた頃、それはすでに起こっている。

結論:初期衝動は現象であり起こすものではなく、勝手に起こるものである。

と一度しておこう。狙った瞬間ダメ。

今日はこの辺で。読んでくれてありがとう。

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