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美容室と私

わたしは子供のころ、美容室が嫌いだった。

知らない大人のひとがたくさんいて、
髪を切られている間もどこを見てればいいか分からないし、美容師さんと話すのもすごく緊張したからだ。
シャンプーしてもらってる時、顔にかけてもらってるタオルがずれてきちゃって、「あー気まずいな」とかね。
美容室に入った時のアウェイ感をすごく感じていた。切ってもらっている最中も、本を読んでいるようで、全然情報が頭に入ってこない。
特に、男性の美容師さんだと、普段頭を触られることなどないから、余計緊張していた。笑

高校生になって、染髪禁止の校則から抜け出したわたしは、hotpepperで探し出した安い美容室を毎回転々として、髪を染めた。
部活をしていたのと、何からやっていいのかわかんなくて、化粧はしていなかったが、髪を染めることで、精一杯の背伸びをしていた。割と自分を奮い立たせて美容室に通っていた。

あるとき、お姉ちゃんが以前カットモデルになった、アシスタントの美容師さんが、ボブカットの練習モデルを募集しているということで、私もやることにした。

アシスタントさんは、日中スタイリストさんのお手伝いをしているので、カットモデルは、営業終了後の20時、21時くらいから。

学校帰りに時間を潰し、制服のまま、美容室へと向かった。
表参道からちょっと奥に入ったところに、その美容室はあった。

辺り一面の暗闇の中、ガラス張りの建物から、眩しすぎるくらいの照明の光がぱぁーっと放たれている。その中で、美容師さんたちが髪を切ったり、忙しく動き回ってる光景がとびこんできた。


なんだこの美しい世界は。
とにもかくにもめちゃくちゃかっこよかった。


私はとてもワクワクした。


そこからは、魔法にかけられたみたいだった。
髪を切ってもらって、鏡に映った自分が別人みたいで、帰り道も喜びの余韻に浸りながら、うきうきしながら帰った。ちょっと大人への一歩を踏み出せたような気がした。


諸事情があり、一時期はその美容室を離れたこともあったが、
10年弱たった今も、その美容師さんのもとへ通っている。
当時アシスタントだった彼女は、今は店長になっていて、私ももう社会人。お互いに人生の歩みを進めてきた。


私の美容師嫌いは直った訳じゃない。特に大人になって、他の美容室に行くと、各々の独特の雰囲気があって、やはり苦手だな〜感じてしまうこともある。

だからこそ、私は、この美容室に出会えてよかったなぁと思う。髪を切っている間も、リラックスして話ができるし、新しい自分になって、また今日から頑張ろうと思うことができる。


高校生で初めてあの美容室に行ったときの高揚感、
あまり味わったことのない不思議な感覚だった。

なんでここまで猛烈に記憶に残っているのかは分からないが、私の人生の大事な1ページである。


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