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Mountain Trail Running  ー山が教えてくれたことー

第13章 波動の会

 量子力学という概念がある。まだ科学として証明されていないらしい。分子の話ということは何となく理解できる。オーソモレキュラーも分子栄養学と邦訳されるもの。分子がキーワードのようだ。
 カンパニーでは「波動」が大流行りだ。スピリリチュアルやオカルトと混同する者もいるが私は至って大真面目だ。”引き寄せの法則”なる物に近いらしい。かなり大雑把に言うと同じ帯域の分子同士が引き寄せ合うとイメージしてほしい。偶然の出会い、予感がした、虫の知らせなど、誰もが科学では説明できない出来事に遭遇したことがあるだろう。これを全て偶然と片付けてしまったらもったいない。
 オーソモレキュラーの世界では、チアミン(ビタミンB1)、ナイアシン(ビタミンB3)、EPA(オメガ3系不飽和脂肪酸)の大量摂取でIQが劇的に向上したという論文の存在が知られている。(ルース・ファレル博士による実験)おそらくエネルギー産生が亢進し脳内活動が活性化するのかもしれない。これに中強度の有酸素運動でニューロンが新生するという事実をマッチさせると、ここ最近、自分自身が齢五〇にして頭の回転が早くなり冴えを感じるようになった理由が見えてくる。目の前がすっきりクリアとなって今まで見えなかった物がくっきり見えるようになる感覚に近い。
 私は運命論者ではなかったが、人の一生は波動によって引き寄せられていき、あたかも何かに導かれるように好転したり暗転したりすると考えるようになった。絶対的真理ではないかもしれないが、オーソモレキュラーとランニングで活性化した脳内活動が”偶然の出来事”を必然の物とし、それを可視化できれば全てがつながってくるという思考だ。たとえばある知人に何十年ぶりかに偶然街で出会う。でもこれは偶然ではなく何かの波動(同じ分子)で引き寄せられていると考えれば、その波動が何なのかを探れば新しいヒントが見つかる。「この次は何をすべきなのか」この思考を習慣化すると”偶然の出来事”に驚くことがなくなり、「さて、次は何をしようか、どこに行こうか」を意識的に探るようになる。好転の波動はスパイラルのように登っていきヴィジョンの実現につながるのだ。
 「起きることは全て必然であり、必ず意味がある」こんな言葉に置き換えられるだろうか。こうした思考になったのもここ三年くらいの間だ。
 「事実は一つ、解釈は無限」この言葉を知ってから気持ちが落ち込むことがなくなり、目の前に起こる全てのことを受け入れられるようになってきた。思考は自らの脳が作り出すものなのだから、セルフコントロールが可能だ。私は、
 「起きたこと=事実」は「必然であり意味がある=解釈」するように心がけている。この思考法が身につくと不思議なことに次々とヒントが生まれ、アイデアが閃き、事態が好転していく。そして、いつも楽しいことに力を注ぐようになる。嫌々やることに成果が出ないのは当然で、そのメンタルが負のスパイラルを呼びかねない。だから、本当に必要だと考えれること以外、少しでも気持ちに?が出たことはやらないことにしている。
 人付き合いはその典型で友人や仕事仲間も時とともに変わっていく。会いたいと思った人からは連絡が入ったり、街でばったり出会ったりするから縁が深まる。疎遠になった人に執着はしないし無理に追いかけない。
 こうした考えはカンパニーの顧客対応にも反映されている。顧客も様々で、セラピストと波長が合う(波動が合う)人は改善速度も早いし、改善精度も高くなる。体験レポートも積極的に記載してくれたりとサロンに協力的だ。一方、最初から施術に懐疑的な人は警戒心が強いので筋肉は緩みにくく結果も芳しくない。こういう人は、サロンにお越しになった段階で何かしらの波動が合ったのだろうが、それは必ずしも正のヒントではなく負のヒントの可能性がある。私たちが大切な何かを見落としているかもしれないのだ。
 「起きることは全て必然であり、必ず意味がある」
 と考えれば、施術の結果が芳しくなかった顧客接遇でも何かしらのヒントが見つかるものなのだ。これが私が解釈する「波動」の概念だ。

 二〇一九年一月一〇日、第一回の「波動の会」が開催された。これは、私が勝手に名付けたのだが、信頼すべきビジネスパートナーの鵜川が、縁ある仲間に声をかけてLabの側にある焼き鳥屋で新年会を主催してくれたのだ。集まったメンバーは、引退後一年以上会っていなかったがFC東京でクラブコミュニケーターとして新たなスタートを切った石川直宏、湘南ベルマーレに移籍して一年でエースとして活躍するまでに復活した梅崎司、この二人の縁をつないでくれたCRIACAOの岡本達也、石川やCRIACAOとも深い縁があり、梅崎のドリブル指導を買って出てくれたドリブルデザイナーの岡部将和らだ。彼らは、向上心とバイタリティに溢れ、何かあれば直ぐに吸収しようと意欲的なので、会話も自然と知識や知恵の応酬となる。
 梅崎は石川に先輩ドリブラーとしての矜持を感じていたし、岡本と梅崎には同級生アスリートとして長く切磋琢磨してきた同志の絆があった。岡部はいつも新しい知識を貪欲に探っている。それが彼をドリブルデザイナーとして飛躍させたのだろう。初対面同士という構図もあったが、同じ波動帯域にいれば何か共通項(共通分子)があるものだ。至る場所で面白いアイデアが飛び交っていた。実現するかどうかはタイミング次第。帯域が同じであればきっといつか実現するだろう。私のこの二年がまさにそういうタイミングの連続だったからだ。そんな楽しい会話が弾み、和やかな雰囲気で今年一年のヴィジョンを全員で共有した。 

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私はこの席でも、もっぱらタンパク質とランニングの話を熱弁していた。参加していたメンバーがほとんどプロレベルのアスリートばかりだったこともある。怪我で苦労してきた選手はこれからの人生でさらにタンパク質が必要となる。焼き鳥屋での新年会にはタンパク質をたくさん摂ろうという裏テーマがあった笑。そして、ランニングはここ一〇年でも栄養に勝るとも劣らない新しい発見だった。栄養と運動。現代人にとって当たり前すぎて本質が見えない典型だろう。走る仕事をしているアスリートたちにど素人がランニングの重要性を説く。確かにまだたったの400kmしか走っていない。今は熱病に冒されたハイ状態なのかもしれない。しかし、一年かけたらそれなりの成果が出せるとの確信があった。
 「均さん、完全にランナーズハイでしょ?笑」この人、また変なこと始めちゃったよと達也が茶化す。
 きっと、そうなのかもしれない。目の前に起こる全てのことを受け入れて、日々の暮らしや仕事を楽しむ。あたかも恍惚と走るランナーのように、人生のランナーズハイに浸りながらずっと走り続けるのだ。(つづく)


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