治験

大学出てから就職に失敗し、だらだらフリーターをやっていた

何個かバイトを経験した中で、治験が一番楽に稼げて何度も繰り返した

治験には薬を飲むだけではなく、飲んだ後の行動を指定されるものもある

中でも一番変だったのは寝ないという条件

他に比べ厳しい条件だったが、支払いが2桁だったのですぐに応募

即採用され、バイトは自分一人だけだった

テレビしかない4畳半の簡素な部屋で

朝昼晩の服薬と4泊5日寝ないこと、それだけ

1日目、初日からめちゃくちゃ眠くなったが、立ちながらテレビを見て我慢

2日目、全く眠気が無くなり気分良好

3日目、初日よりも強い睡魔、視界がぼやける、常に頭の中で重低音が響く

4日目、重低音が声のようになり、小学生時代の担任の幻覚、いつのまにか気絶、、

気がつくとビルの一室で仕事をしていた

スーツ姿で、商品開発部部長

歳は58、10個下の嫁に社会人1年目の息子と大学生2年の娘

住まいは勝どきのタワーマンション

たまのゴルフと晩酌

それから1年近く経ち、何不自由なく暮らしている

ただ、なぜか、スカイツリーという建物とラーメンという料理に関しては既視感が無く

同僚に注意されるまで存在を知らなかった