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幸せのカギ

昔々、胸に鍵穴のある人たちがいた。

「その中にあなたの幸せが眠っているよ」

小さい頃から、そう教わった。

彼らはこぞって自分に合う鍵を探した。

しかし、誰も胸の扉を開けるものは現れなかった。

それを見兼ねた神様。
ある日道に「幸せのカギ」を落とした。

そこを通りかった男。
拾った男は歓喜した。

「やっと自分の幸せが見つかった!」

早速、自分の胸に差し込むが、扉は開かない。

何度やっても。
カチャカチャと鍵は動かない。

「くそ!幸せのカギなんて嘘じゃないか」

男はポイと鍵を投げ捨てた。

それを見ていた少年がいた。
少年は鍵を拾い上げると、家に帰った。

少年には寝たきりの母親がいた。
「おお、おかえり」
目を細める母親。

「お母さん、プレゼントがあるの」
少年はそっと鍵を差し込んだ。

ガチャ。

扉は開いた。

「まあ。開けてくれて、ありがとう」
母親は息子を抱きしめた。

胸の扉の中には、もう一つの鍵が入っていた。

「じゃあ、お返しに」

母親は鍵を取り出し、少年の胸に差し込んだ。

ガチャ。

扉は開いた。

幸せのカギ。
それは「相手の心を豊かにしたい」と願う人にしか扱えないカギ。


少年の胸の中にも鍵が入っていた。

「さあ、誰かの扉を開けてきてあげなさい」

少年は頷き、笑顔で駆け出した。



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