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もう一度、イギリスに行きたくなった

2月18日(土曜日)、沖縄県那覇市にあるジュンク堂書店でトレン・デインジャフィールド氏(以下、トレンさん)と対談を行った。彼は沖縄の学習塾である「沖ゼミ」の校長であり、英語科教員である。したがって、今回のテーマは「英語学習と未来」となっていた。

事前の打ち合わせを兼ねて、15日に那覇市小禄にある居酒屋で初対面。イギリス人らしく、長身の紳士であるトレンさんに迎えられた。私はあまり人見知りしないタイプなので、1の1から彼と心を開いて話をすることができたように思う。今まで4回英国に足を運んでいるので、その際のエピソードを聞いていただいたり、ブレグジットやスコットランド離脱について、現地の情報を教えていただいた。

また、彼が過ごしてきた鎌倉や長野でのエピソード、あるいは英国のあまり美味しいとは言えない食事について、大笑いしながら話をして、打ちとけることになった。「事前の打ち合わせ」は1秒も行われなかったけれども、その打ち解けた雰囲気が十分な「打ち合わせ」となった。

MCはジュンク堂書店の森本エグゼクティブ・プロデューサー。要するにほとんど事前の打ち合わせがないまま始まることになったが、私はまったく心配していなかった。対談の帰着点はおよそ常に同意の深化であり、決して相手を言い負かすことではない。東進ハイスクールの林修氏との対談でも、だいたいのところは事前に同意していて、それをどう深めていくかをお互いに探り合いながら対談を進めていったように思う。

その点で言えば、事前の懇親会で充分にトレンさんの朗らかで相手の意見を尊重する人となりを知ることになったし、英語教育に関しての考えを知ることになった。まともなプロであれば「文法など不要」などとは言わないし、「語彙などゴミだ」といった乱暴な言葉遣いをしない。言語のプロは言葉を大切にするのである。

さて、日本の場合は義務教育レベルがかなり高いので、然るべき勉強を続ければ英語ができるようになるし、そもそもすでに英語を話せるヒトが大多数なのである。なのに、自分は英語ができないと思い込んでいるヒトが大多数なのは面白いと常々考えている。

I can't speak English.と日本人が言う。You're speaking English now.と相手が言う。こういうシーンを世界のいたるところで見ることができる。

我々プロがすべきことは、さらに英語ができるようになるための扉を静かに、そして継続的に、開いてやることではないだろうか。どうすればできるのかを知らず、なんとなく学校に通っていても、なんとなく授業を受けていても、外国語を話せるようにはならない。教科書を真面目に読んでいたって、量的には少なすぎるし、そもそもつまらない。

一例としては英文法である。
教科書を粛々と進める教師の大多数が、a / the の違いを明確に生徒たちに説明していない(あるいは、できない)。したがって、英語を学び始めて何年も経つ、もしくはすでに大学に入学している知的人材であるのに、超基本的な冠詞の知識でさえ持っていない「英語学習者」が多いのは残念である。学び方を間違えている好例ではないだろうか。書店に並ぶ四択系の文法問題集をいくらやっても無駄である。まったく英語ができるようにはならない。

対談ではトレンさんの語る英語学習法に頷いてばかりいた。特に「できるだけたくさんの本を読んで」は、灘校生たちに常々言っていたことである。言い換えるなら、「できるだけ英語に触れて」ということになろうか。対策をして短期的な学習に勤しんでいる限り、英語力はいつまで経っても伸びない。語彙にしても、いかにロングタームの記憶に落とし込むかがテーマで、明日の単語テストのために必死になって勉強しても意味がない。

帰りにトレンさんから、イギリス料理の本を一冊いただいた。懇親会で彼にイギリス料理がいかに不味いかを語ったが、せっかくいただいたのだから料理してみよう。また、沖ゼミの中村様からは立派な花束を2ついただいた。片方は自宅に飾ったが、もう片方は沖縄平和祈念公園に持っていき、第二次世界大戦でお亡くなりになった方々に捧げてきた。

沖縄の方々が多数ご参加くださった。定員の30名を大きくオーバーし、立ち見の方々もいらっしゃった。深く感謝申し上げたい。皆さんが「もっと英語を勉強してみようかな」と思われたのであれば、イベントは成功であったと言えるだろう。

そして最後に。
トレンさんと話をしていて、イギリスに行きたくなった。せっかく英語が話せるのに、日本にいるのはもったいないなぁと、落ち着きのない虫が動き始めている。

木村達哉拝



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