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野球の審判をAIにさせるだと?

うーん、Yahoo!の記事に「大リーグでストライクボールの判定にAIを試験導入」という記事を見つけて、ちむどんどんしている。
僕も野球部の監督を17年間、そして神戸市の審判員を23年間、それぞれ務めてきた、いわば「野球の関係者」なのでひと言書いておこうと思う。

正直、反対だ。
確かに審判の判定にはミスがある。というより、ミスだらけだ。AIが判定すると確実にボールと判定するであろうボールに右手を上げる。その逆もある。プロでもそうだ。野球の経験者ならストライクはどこかと問われると、だいたい高低は胸のマークから膝までで、左右はホームプレートを通過したらストライクと言うだろう。

しかし、しかしだ!それならプロ野球中継を、審判のコールだけに注目しながら見ればよろし。ベルトより上の球はほとんどボールとコールされる。ホームプレートを少しでもかすったらストライクのはずが、捕手が球を捕った位置がホームプレートから外れていたらほとんど「ボール!」である。

選手もそんなことはわかっている。
実際のストライクゾーンは、上がベルトあたり、下が膝下。左右は捕手が捕った位置がホームプレート上であれば、だいたいストライク!なのである。つまり、実際のルールよりもかなり狭いのである。
 
そんなことは百も承知の捕手はフレーミングという技術を習得する。また、どんなボールでも、キャッチしたらミットを絶対に動かさない。よく捕ったあとにミットを動かす下手なキャッチャーがいるが、そうすると「卑怯なことをしやがって」と審判からムカつかれることになり、ミットを動かさねばストライクだったものでも「ボール!」とコールされる。

で、AI審判であるが、再度書く。反対だ。
理由:野球がHUMANじゃなくなる。

審判ってのは過酷なのだ。攻撃が終わって守備位置に飛び出していく選手たち、守備が終わってベンチに戻っていく選手たち、1塁と3塁コーチも入れ替わる。監督はスコアラーと会話したりヘッドコーチと会話したり。

審判だけが動かない。暑い。馬鹿みたいに暑い。死にそうだ。汗が滝のように背中をすべり落ちる。できることなら裸でやりたい。が、裸でやると逮捕される。変態扱いされてしまう。

冬はつとめて。
違う、冬は寒い。プロ野球はいいなぁ。11月と12月と1月は試合がなくてよぉ。アマチュアは年がら年中やっているので、したがって審判も年がら年中拘束される。最近は特に小雨が降っていたりなんかすると、もうどうにかなってしまうんじゃね?なぐらい寒いのである。

そんななか、スコアが8-0になったとしよう。それも4回や5回で。もう8点のほうが勝ちやんか。もうええやんか。暑いし(冬は寒いし)さぁ。コールドまでもう少しやけど、この試合は練習試合だからコールド無いよなぁ、まだ打つのかよぉ、そろそろ手加減してやれよぉ・・・

と思っているところ、ぎりぎりのコースにズドン!とボールが来るのだ。あぁ、ボールだなと思っても、脳はそれを許してくれず、巨大な声で「ストララィックゥゥゥ!」と声を出している自分を発見し、あぁ誤審だ、でももうチェンジでいいじゃないか、許してくれよと思っている審判が多いのだ。僕だけではないはずだ。

というわけで、AIを導入することで正確さは増すだろう。でも、おそらく捕手のフレーミング技術は下手になるだろうし、キャッチング技術も然りである。そして、イニングの間に「正確過ぎてなかなか終わらん」と悩む審判が増えることになるんじゃないのかなぁと思っているのである。

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