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「美大いくの?デザイナーになるの?」 (2/2)

以前書いた内容ですが、私にとってデザインを学ぶことの意義は、

「アプリのインストール」ではなく
「OSのアップデート」である

ということだと認識しています。


では、デザインを学ぶことがどうOSのアップデートにつながるのでしょうか?

前提として、「デザイン」という極めて曖昧な言葉を定義する必要があります。

私は「デザイン」を、「アート」の対比として理解しています。
「デザイン」と「アート」では、意識のベクトルが反対です。

アートとデザイン_1


そしてその語源が意味するように、
「デザイン」の行為は観察解釈描写であるのに対して、
「アート」の行為とは意思表示です。

アートとデザイン_2

「デザイン」におけるこれらの行為は、クライアントやユーザーへ意識を向ける「コンサルティング」に通底しています。コンサルタントも日々、様々な具体度と粒度で観察・解釈・描写を積み重ねています。

前提が長くなりましたが、僕にとって、「デザイン」を学ぶことは、

「観察・解釈・描写」の各機能を拡張すること

だと捉えています。


観察機能の拡張>
コンサルタントは何かビジネスを見たときに、お金の流れが見えています。一方のデザイナーは、モノ・コト・サービスを見たときに感情の流れが見えています。
この”流れ”は、両方の視点から複眼的に見えていることが重要なはずです。
①「お金」は「感情」の流れの裏返しとして流れているから
②ビジネスにおける意思決定は、「お金」の天秤だけでなく「感情」の天秤にもかけられているから
です。
優れたコンサルタントやデザイナーは(無意識的に?)この複眼的な観察ができているように思います。

解釈機能の拡張>
観察によって得た情報の整理/比較/判断や、得た情報を基にした着想の獲得/ 発想の飛躍には、情報を解釈するための個人の「触媒」が必要です。
「触媒」の精度は、インプットをアウトプットにつなげようと解釈を試みた経験の種類と量が物を言うと思います。
解釈にもがき苦しむ中で、様々な「往き来」をする経験が触媒を洗練させるはずです。

アートとデザイン_3

描写機能の拡張>
観察し、解釈した内容を人に伝えるためには描写が必要です。

解釈を可能な限り正確に伝えるためには、描写の手段はできるだけたくさん持っておく必要があります。
例えば、語彙を多く持っている人は伝えたい内容に最も適した言葉を選択することで、概念を正しく伝えることができます。

ただ、描写機能の拡張の一番の目的は、「観察」と「解釈」の拡張につながることです。
描写機能としての”語彙”をたくさん持っている人は、同時にたくさんの視点と概念を持っています。
描写機能としての”カメラ”の登場は、それまで人の目では認識できなかった「ピンボケ」という見え方や、「星が円を描いて動く」という概念を明示的に示しました。

新しい描写機能を持つということは、新しい視点と新しい概念を操れるようになるということだと思っています。


観察・解釈・描写の拡張によって、「コンサルタント」でもない「デザイナー」でもない、面白いOSになることを目指しています。

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