見出し画像

イニシェリン島の精霊【岡田斗司夫おすすめ映画】

イニシェリン島の精霊


まず風景が凄い

イニシェリン島の精霊は評価96点
何よりもね
風景がすごいんですよ
映画の冒頭が漁港、港で
そこに主人公がぶらっと歩いてるシーンから始まるんですけど
港のド真ん中に虹がかかって、すごい近い場所に
よくこんな画撮れたなって
よくこんな画撮れたなの連続なんですよ
風景がすごい

イニシェリン島ってどんな島?

イニシェリン島っていうのは
あのアイルランドの西に浮かぶですね
アラン諸島の中の一つの架空の島なんですね
本当にその名前の島はなく、架空の島なんすけども
アラン諸島の島々っていうのはですね
紀元前に謎の巨石文明を持つ民族が
島全体を低い石垣で覆ったんですね
低い石垣で網の目の
ちょうどメロンの模様あるじゃないですか
あんな感じで島全体に
高さ1mぐらいの石垣がですね
びっちりあるんですね
それがですね
アラン諸島にものすごい風が吹いていて
多分もうどんな農作物の種植えても飛ばされちゃうんですよ
それを防ぐためだと思うんですけども
石垣ないと
土もあの海に持ってかれちゃってですね
荒れた岩地ばっかになっちゃうんですね
それをですね
何千年か前の巨石文明を持っていた民族が島全体を
このメロンの網の目みたいにしてくれたおかげですね
人が住めるようになってるんですけど
その後にケルト部族が入植してですね
紀元前0年あたりですか
もう本当にケルト文化圏にあったと思うんですけども
未だにアラン島のあたりっていうのは
イギリス王国連邦の一つなんですよ
なんだけど
イギリスとは違う言葉、英語とは違う言葉
話してる島もあるしですね
違う神様を信じてる人たちも多いというですね
もう本当に世界に残された最後の秘境の一つです

まあ地図で見ると
こういう場所ですね
これはイギリスです
ここがアイルランドですね
アイルランドのですね
全体の地図を見ると
僕らにとって
僕にとって馴染みが深いのは
このベルファストですね
機動戦士ガンダムで
ホワイトベースがオデッサの戦いをした後で
寄り道したベルファストですね
ミハルの兄弟がいてですね
スパイ行為をやってその後いろんなことがあった
あとベルファストは同時に
あのタイタニック号ですね
実際のタイタニック号の造船でお馴染みですね
あとこの近くはですね
ここにマン島っていうのがあって
このマン島とイギリス本土を結んでる辺りにですね
ソドー島という架空の島が
これ機関車トーマスの舞台になってるところですね
アイルランドって僕ら知らないようでいて
割とイギリスの西に浮かんでる
巨大な島で一つの大きい文化圏を持ってるんですね
機関車トーマスや機動戦士ガンダム、タイタニックなんかも
関係してるというような感じだと思っています

そのアイルランド西の果て
もう大西洋の冷たい水に面した辺りにですね
ゴールウェイっていう港があってこの近くのこの赤い丸のところが
アラン諸島です
大きい島が一つ、小さい島が二つ三つあるんですけども
僕らはこのアラン島を舞台にしたアニメを
見たことがあるんですけども分かりますか?
かつてアラン島を舞台にしたアニメをですね
多分皆さんも必ず見たことあると思うんですけどね
ちょっと待ってみよ

  • マスターキートン(コメント)

  • ロードス島(コメント)

  • なんだろ?(コメント)

  • 知らない(コメント)

アラン島って実は"魔女の宅急便"のあの場所

やっぱりなかなか皆さん覚え、ないですね
はいはいはい分かりました
正解これなんですね
あの魔女の宅急便のですね
キキが猫のぬいぐるみを届けに行くこの家
これがアラン島なんですよ
多分、司馬遼太郎さんが書いたですね
街道をゆくっていう本があるんですよ
こんな文庫本があるんですけども
置いときますね
この本で有名になったんですよ
この街道がゆくの表紙でも
何が写ってるのかよくわかんないと思うけども
これ見ると断崖絶壁なんですよね
海から直にものすごい角度で90度で崖があってですね
そこの遥か上ですか
本当に何十メートルか、百メートルぐらい上にですね
陸地があってそこにこういう低い石垣があると
こんな構造になってるんですけども

映画を2倍以上楽しめる

この本で有名になって
宮崎駿さんや鈴木敏夫さんが
1988年に旅行してるんですね
鈴木さんの仕事道楽って本の中でですね
1988年ぐらいに
宮さんや僕を含め何人かで
一緒にアイルランドのアラン島に行ったことがある
アイランド西の果てでアランセーター
フィッシャーマンズセーターとも言います
発祥の地として有名なところです
人口800人で交通機関が何もないと
日本に帰ってしばらくして
魔女の宅急便に取り掛かります
映画の中で
ジジにそっくりなぬいぐるみを届ける家がありますが
彼がその家の絵を描いていた
大体描いたところで
彼が珍しく、僕のところに持ってきました
鈴木さん覚えてる?
あ、アラン島の民宿じゃないですか
という会話が載ってるんですね
まあこの家だってことがわかります
さらに細かく
ジブリの哲学っていう本を見るとですね
このアラン島で何があったのかと
宮崎さん達は一週間ぐらい滞在するつもりで
行ったそうなんですけども
こんなのとても無理だと言って
何日かで引き上げちゃったんですね
その理由は何かと言うと
時間の流れが違いすぎて
この島にいたらもう日本に帰って来れなくなるよって言って
早々に引き上げたそうなんですけど
その時宮崎さんがこの島には何かいる、何かいる
ってずっと言い続けてて
帰りの飛行機に乗るときに
鈴木さん、どうしよう俺何か連れて帰っちゃったよ
って言ってそれ以降ですね
そのアラン島の精霊みたいなものを
宮崎駿は自分が連れて帰ったと
信じてたそうなんですけど
今はどうか知りませんけど
そんな話もジブリの哲学の
前書きの所に載ってますので
本屋さんで割と
ジブリ関係の本っていっぱい置いてるんで
よかったら
この前書きの部分だけでも
立ち読みしてみてください

で、どんなにすごい島かっていうのが
やっぱこのジブリの哲学の本に書いてあるんで
本当に何もないとはこんなことかっていうか
地の果てというのは
こんなところかっていうのは書いてるんですけど
これ読んだらですね
この映画イニシェリン島の精霊は
2倍ぐらいに面白くなると僕は思ってるので
見てくれたらありがたいですね

ここから本題

で、さっき地図で見せた通り
島から小さい海峡を挟んで
向こう岸がアイルランドなんですけども
この映画の舞台になってる
1920年代っていうのは
アイルランド対英国で内戦やってたんですね
未だにねアイルランドと英国は仲が悪いんですけども
この時代は
島から見てもですね
戦争やってるのが
戦火として
もう昼間でもパンパンパン
って明かりが見えるぐらい戦いやってるのが見えた
そういう時代なんですね

内戦やってるアイルランドと英国が島の向こうに見えながら
この島のパンフレットの向こうに見えますよね
これがアイルランド本土なんですよ
ここで戦争やっていて
二人がいて
この二人のじいさんが
ある日急に意味もなく喧嘩をしだす
って映画なんですね
お互いの憎しみがどんどん上がっていってしまう
誤解と憎しみがどんどん上がっていってしまったやつで
だから政治的な寓話として見てる人多いんですね
僕がyoutubeでいろいろ感想拾っても
この二人の中年のちょっとした諍いが
だんだんだんだん憎み合いになって
お互いに許せなくなっていくのが
アイルランド内戦を表しているという
そういう解説してる人多いんですよ
その解説はわかりやすいんです
決して間違いじゃないんですけども
なんか僕ね
カモフラージュだと思うんすね
みんなね実際にこの映画見た人は気が付いてるけども
口にしない
何かポイントがあるんですね

アカデミー賞の最有力候補の理由

このイニシェリン島の精霊って
今年のアカデミー賞の最有力候補と言われてて
何でこの映画アカデミー賞の最有力候補になったのかと
理由があってですね
アカデミー賞には実は特徴があるんですよ
特徴が分かりやすいように
一覧にした表なんですけど
分かりますかねえ
アルジャーノンに花束を
って映画があって
これは元々チャーリーという映画なんですけど
最近、DVDになる時にアルジャーノンに花束をに変わりました
1969年アカデミー主演男優賞です
レインマンですね
1989年に作品賞・主演男優賞など、あと監督賞も取ったはずです
主要部門取りました
フォレストガンプは95年の作品賞ですね
グリーンマイル、2000年の助演男優賞です
ギルバートグレイブは1994年の助演男優賞にノミネートされました
アイアムサムも2002年主演男優賞ノミネートされました
これ全て同じ特徴があってですね
実はこれ全て
主人公または相手役が
知的障害か適応障害の登場人物が出てくる映画なんですね

例えばフォレストガンプ、95年の作品賞です
これのですね
もう冒頭の方のシーンにフォレストガンプが
公立の小学校に行きたいと言ったら
その小学校の校長先生が
アメリカの小学校に入るには知能指数が80必要です
あなたの息子さんの知能はココですって言って
これ上下って書いてあって
ノーマルって書いてある
この知能指数80よりやや下のところですね
鉛筆で刺してるところですね
そういう話なんですよ
これまでね
もちろんさっき見せたアカデミー賞の一覧で
イニシェリン島の精霊までの
知的障害者とかもしくは適応障害者が出てくる映画はですね
大体が主人公もしくは登場人物は
知性は低いかも分かんないんだけども
すごくいい人だとか純粋だと
その分なんかキラキラしてるというような
そういう描写が多かったんですね
日本でも
アルジャーノンに花束をって
テレビドラマにもなったんですけど
やっぱその書き方するんですね
だから純粋だというような
描き方するんですよ

この映画の実はここが凄いところ

しかしですね
このイニシェリン島の精霊は
真っ正面から描くんですね
これさっきも話したように
この爺さん2人がいきなり仲違いするんですけど
こっちのですね背の低い方
こいつがですね
どうもちょっと知能指数低いみたいなんです
映画の中でほとんどそれ台詞として出てこなくて
ただ単にもうお前とは話さないって
こっちのじいさんの方が言うんです
なんでだって言ったら
理由教えてくれないですよ
散々後になって、理由
喧嘩になってから教えてくれるんですけども
お前といるのが退屈だからだ
と言うんですね
お前といても何か意味のない会話ばっかりする
そんなことないぞ
俺はいい奴だぞと皆いい奴だって言ってくれる
お前はいい奴なんだけど退屈なんだよ
退屈で何がいけないんだ
毎日楽しくお喋りしてたじゃないかって
俺はその退屈なお喋りに20年間も耐えてたんだ
もうお前とは話したくない
みたいこと言うんですね

妹と二人暮らしなんですよ
家に帰ってですね
妹にそのことをグチるんですね
あいつと喧嘩したからもう俺はパブに行かない
パブに行かなくなると
そしたら妹が怒り出すんです
昼間から家にいないでパブにさっさと行ってよ
って言うんですよ
妹も自分のお兄さんが話し相手にならないとか
退屈な人間で家にいると邪魔だから
実はすごいお兄さんに尽くしてる良い妹なんですよ
ただお兄さんがいると友達も呼べないし
友達と話してる時に間に入ってきて邪魔になるので
お兄さんをパブに追いやるんです
パブに行ったからといって
その親友と喧嘩してるからといって
パブの他の人達が友達になってくれるわけでもない
そういう人達の人生
生活したらどんなものかっていうのが
もうなんか
こういう表現は変かも分かんないすけど
真綿で首を絞めるように
分かってくるわけです
全然言わないんすよ、この映画の中で
ただこの島の中で本を読むのは
この友達の人と一緒に住んでる妹ぐらいで
その他は
島で魔女とか死を呼ぶと恐れられてる
黒い服をいつも着てる婆さんがいるんですけど
その婆さんぐらいだ
って話が出てきて
じわじわとその平凡な島の
何もない暮らしの中で
自分の近くにそういう人がいたら
自分はどんな態度を取るんだろうか
みたいな話になるんですね

ほとんどの人が昔通り抜けてきた感覚

だからそれはこの映画の感動する時にね
皆言葉に出来ない感動したって
感想書いてる人多いんですよ
映画の感想書いてること見てください
言葉にならない感動って言ってんですけど
その感動というのは何かって言うと
感動というのは
罪悪感の解消なので
僕らも子供の頃ですね
自分の友達とか知り合いに
これぐらいの人いたはずなんですね
これぐらいの人がいて
未だにいる人もいっぱいいると思うんすけど
そういう人たちのことを僕達は
無意識じゃないんですね
ある程度は分かりながら
切り捨てていった結果なんです
切り捨てていって
結局話が合う人とか
何か愉快な人とか何か色んな作品知ってる人とか
そういう人達だけ見えるようにして
可視化して見えるようにして
自分が人生やってくとそうじゃない、なんか付き合いたくない人は
なんとなく外していって
自分でも見えなくして
じゃそれは誰が引き受けてるんだって言ったら
その人の家族だったり
特に優しい人が引き受けてた

このおじさんがその優しい人なんですね
優しい人として引き受けてくれてたんだけど
もうだめだって言うんですよ
で、もうだめだって言い方がすごい
これからお前が俺に話しかけてきたら
その度に俺は指を切るぞ
っていう風に言うんですよね
よし、これから始める
もう俺に話しかけるなっていう風に言って
指切るぞって脅してですね
さあそれでも
この主人公のおじさん
話しかけちゃうんですね
もうどうなるのか、と
すごい話なんですけど

罰というのはわかる者のみが背負ってしまう

基本的に俺に話しかけるな
お前退屈だと言って
話しかけてきた時に
罰するのは何かっていうと
相手を罰するんじゃなくて
自分を罰する話でもあるんですね
こんな辛い事を
俺が言ってる意味もわからないような奴に
二度と話しかけるなと言って
そいつがそれを守れなかったら
こいつを罰するんじゃなくて
自分を罰するしかない
というですね
キリスト教とは何か
宗教とは何かという様な
話にもかかってるようなやつなので

一応ネタバレ注意というのを用意してたんですけど
これ敢えて出さなかったんですよ
なんでかって言うと
普通に見ても本当にわかんない様に作ってるんですよ
なので僕、ストーリーを
今言わないように話してるんですよ
どんな出来事があるのかっていうですね
プロット状態で話してるんですね
ちょっと見てもですね
十分面白いと思います
とにかくとんでもなく凄い映画です

現実という不条理を美しい風景で描く

それは言葉にできない感動というのは
僕らのここにある
さっき話した罪悪感と
まだそれが解決できてなくて
多分皆さんの心に
僕のさっきの話聞いたら
あーあのことかとか
出てくるあのモワっとした感じありますよね
それを美しい風景で描いてる
本当にすごい
さっきも話した様に
こういう映画はね
すごく高い確率でアカデミー賞を取るから
今のうちに見といた方がいいと思います
イニシェリン島の精霊でした


この文字起こしについて、
個人的に興味深いと感じた岡田斗司夫さんの動画を切り抜いて
文章化しております。
気に入って頂けたら、応援よろしくお願いします!

  • ショート動画にまとめました↓

  • 動画で見たい方はこちら下

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?