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EBPM(Evidence Based Policy Making)を考える/「区民の声」とは何か?

こんにちは、台東区議会議員 木村佐知子です。
今日は政策立案の手法、EBPMについて書いてみようと思います。
EBPMとは、Evidence Based Policy Makingの略で
証拠・根拠に基づく政策立案
のことです。

政策に根拠があるなんて当たり前だろう、と思われると思いますが、
どういうことかといいますと、
ある政策を提案するときに、「自分がこれをやりたい!」とか、「自分がこれがいいと思う!」とか、主観的・感情的な理由に基づく場合、というのがどうしてもあるわけですね。
例えば私ですと、二児のママなので
「学童の待機をなくしてほしい」とかというのがこれにあたります。
これだけだと単なる自分の感情です。

しかし、これが
「自分の周りのママ・パパも、学童の待機に困っており、学童を増やしてほしいと言っている」
になると、少し説得力増さないでしょうか?
自分一人だけの意見ではなくなるからですね。

でもそれって、自分の周りの人がたまたまそういう人たちだっただけなんじゃないの?
学童別にいらない、という人もいるけど言わないだけなんじゃないの?
という疑問はまだ拭えません。

そこで、
国も待機学童の問題を問題視して取り組んでいる!
2023年5月のデータでは全国で1万6000人待機児童がいる!

参考:学童保育の待機児童解消へ こども家庭庁などが対策取りまとめ | NHK | こども家庭庁
と付けると、どうでしょうか。
より説得力が増した感じがします!

台東区で学童クラブの待機児童の問題を取り上げるなら、台東区での待機児童数のデータがあれば、なおベターということにはなります。

現在、台東区では実際に学童クラブの待機児童の問題に取り組んでいますし、私も一般質問などで提言をしてきましたが、このような立論があるとわかりやすく、政策が前に進みそうです。
(もちろんこれだけで進むわけではないのですが・・・)
なお、区役所の職員に聞いたところ、政策が進む(≒予算がつく)ためには、
・立法の根拠があること(条例も含む)
のほか、
・議員の提案
が根拠になり得る、とのことでした。
議員は一応選挙で選ばれているので、その議員が言うことであればそれなりの根拠があるんだろう、っていうことになるものと思われます。

しかし、だからといって、議員が思いつきで何でもかんでも提案して、認められるということにはなりません。
どこまでが、「思いつき」や「主観」なのか、
どこから「証拠」や「根拠」があるということになるのか、
線引きは実は難しいです。
区民(市民、国民)の声を聞いています!とは言っても
実は自分の身の回り数名だったり、町会等の限られた団体内での意見だったり、本当にそれ「みんな」が言っていることなの?

という疑念が、実は私も常にあります。。。

そんな中、私が区役所に来るといつも読んでいる(議会図書コーナーにある)、月刊ガバナンス(ぎょうせい)の12月号に、興味深い記事がありました。
金井茂樹「市民の声からどう政策課題を把握するか」(同19頁)によれば、
「集まるデータ」「集めるデータ」
の軸が重要であるとのこと。

簡単に言うと、
「集まるデータ」(受動的広聴活動)とは、
陳情、意見等が面談、メール、電話、SNS、懇談会等において議員(政策立案者)の下に自ずから集まってくるデータ
「集めるデータ」(能動的広聴活動)とは、
世論調査、意識調査、ウェブ調査等の定量的・構造的データ
のことです。

傾向として、
「集まるデータ」は、量はたくさん集まるが、まとまりがない、また主観的な意見も混じってくる
「集めるデータ」は、たくさんの人から定量的にデータを取るため、個別具体的な意見がなかなか出てこず、質的には淡泊になるけど、より多くの人の意見をくみ取ることができる
というものがあります。

筆者によると、集まるデータだけではダメで、集めるデータを効果的に使っていくことで、より説得力のある政策提言に繋がる、とのこと。さらに、国や地方自治体が出している客観的な統計データと組み合わせることで、より政策立案の透明性が高まるとも。

現在、AIの活用含めて、データの取得手法は多様化しており、またそのコストも下がっている(?)中で、集まるデータのみならず集めるデータの利活用までが、議員に求められている役割なのではないかと思います。

「私の周りの人はこう言っている!」というだけではなく、もっと説得的で透明性のある提言を行っていくことが、政策実現への近道ではないけど王道と言えるのではないか、と改めて思ったのでした。

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