見出し画像

映画缶01「ピエロの赤い鼻」

映画缶

1本目「ピエロの赤い鼻」

だいぶライトなレジスタント2人が、なりゆきで大それた破壊活動に手をそめるとどんなことが起こるのか。英雄じゃない人間が英雄ぶったばかりに覚悟以上の事態が追いかぶさってきてしまった、その喜劇・悲劇。
こういう事件をこんな風に柔らかに描くこともできるんだなあ。

作戦失敗して連行されてからの主人公ふたりの言動、ピントの外れぶりがいい。いかにも事態の大きさについていけない様がおかしくも悲惨で、どこまでも無事に帰るチャンスをつぶしたくなくてどんどん手遅れになってくあたりの小物感が本当にリアルだ。私があの時代にいたなら、きっとこんな俄かレジスタントになっていただろう。

「先生はそんな大それたことできる人じゃない」

印象的な台詞はたくさんあるが、一番響いたのはこの一言。場違いにも胸が痛んでしまった。
自分は確かに小心で善良なだけの人間なのだ、「そうじゃない」といおうとしたがために逆にそれを証明してしまった、 救いようのないふがいなさ・・・(もうどんどん自分に重ねてしまう)。

だからこそ、この大それたことのできないふたりが唯ひとつやりおおせた事の重さに胸を衝かれる。人ふたりの命とひきかえに救われた自分の人生を、ほかならぬその村でしあわせに生きてまっとうしようと決意することは、どれほど凄まじい判断だっただろう。 爆破よりはるかに勇気の要る決断だったはずだ。
自転車を引き返してドアを再びたたくあの瞬間、赤い鼻をつけるあの瞬間。そこには、間違いや醜態を抱えて、それでも誠実に越えていこうとする精一杯の決意が結晶している。

鑑賞後にドイツとフランスの共作だったことに気がついて、再び胸が熱くなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?