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【小説】クお白チ 006【第一期】

親方がむかえに来た。車に乗って、ちょっと感傷的になって黙ってた
「どうした?疲れたか?」
「ちょっとだけ」
「一人で大丈夫か?」
「あと1階だけだから平気」
「現場が一箇所少なかったら、手伝えたんだけどな…」
「あと8日位で終わるから大丈夫でしょ」
「無理せんでいいぞ」
「少しペースを落としていい?」
「もう夏休み中で終わるって分かってるからまかせるよ」
「じゃ、少しだけゆっくりやるよ」

家に帰って風呂に入ると、彼女達一人一人の顔が思い浮かんで離れない。良い子達だよなぁ…助かったなぁ…みんな可愛いしなぁ…どんどん感傷的になっていく…朝が早いから夜は10時頃には布団に入ってた。彼女達の事で頭がいっぱいで、全然眠れない。眠ったのは0時を回ってからだと思う

正門前で
「無理せんでやれよ」
「分かった」
って会話をして現場に歩いた。ハードだった仕事の疲れと寝不足と感傷的な気分で足取りは重い。ゆっくりやれば良いやって思って、一番北側から始めた…

8時頃、クッキーと白が現れた。えっ?二人?
白「おはようございます」
ク「おはようございます」
俺「あぁ、おはよう、今日はなんで二人なの?」
白「クッキーちゃんが一人で会いに来た事を教えてくれたんです」
俺「ん?意味が分からないよ?」
ク「私と白ちゃんは親友だから隠しておくのが辛くなって話したんです」
俺「うん、なんとなく分かったけど、話してどうなって二人で来たの?」
白「クッキーちゃんがまたお菓子を作るって言うから、私も行きたいって…」
ク「それじゃ二人で何か作ろうって事になったんです」
俺「なるほど、二人で作ったんだ?」
白「はい」
ク「何時から仕事してるんですか?」
俺「7時前だね。集合6時でここに着くのが6時半位」
白「朝ご飯食べてきてますか?」
俺「朝の5時には食ってるよ」
二人でがっかりした顔をしてる
俺「なにを作ってきたの?」
ク「サンドイッチです」
白「ハムサンドです」
俺「あぁ、食えるよ」
この時間になるとすでに小腹は減っていた
ク&白「よかったね♪」
二人で笑顔。どうせゆっくり仕事するつもりだから良いやぁ。近くにあった椅子に座ったら、二人は俺が見えるように並んで座った。フワッと女の子の甘い香りがした
紙袋からラップで包んだサンドイッチが出てきた。続けてジョ○ジア二本
俺「ジョー○ア買ってきてくれたんだ、ありがとね」
ク「昨日○ョージアって言ってたから探して買ってきました」
俺「いくらだった?」
ゴソゴソと財布をさぐる
ク「あぁ、大丈夫です。それくらいのお金は持ってます」
俺「そっかぁ…じゃ、ごちそうになるね」
ジ○ージア開けた。冷たい。サンドイッチ一口。冷たい。両方とも昨日用意したのが分かった
俺「昨日作ったね。美味いよ」
白「なんで昨日作ったって分かったんですか?」
俺「普通サンドイッチは一晩寝かせた方が美味い。パンがレタスの水分を吸ってるからしっとりしてるしハムもなじんでる。あと、冷蔵庫から出したばっかりだから冷たい」
ク&白「……………………」
俺「なんか変?」
ク「料理するんですか?」
俺「好きだね。最近は時間が無いから出来ないけど」
白「なんでも出来るんですね」
俺「手先が器用なだけだよ」
ク「裁縫はできますか?」
俺「ミシンから編み物まで出来るよ。嫁さんいらない」
ク「不得意な事はないんですか?」
俺「あぁ、掃除ができない。やっぱ嫁さんいるね」
ク&白「あはははっ」
サンドイッチをほおばってた。なんか心地良い…
俺「どうして二人はずっと敬語なの?」
白「えっ、あっ、意識してなかったです」
俺「どうしてサッちゃんって呼ばないの?」
ク「なれなれしいと思われたくなかったんで、私達はそうしようと決めました」
俺「二人で決めたの?」
白「はい、私が風邪の時にクッキーちゃんと約束しました」
俺「会ってもいないうちから約束したんだ。あははっ」
白が笑顔で照れてる。クッキーはクスクス笑ってる
俺「あぁ、そうだ。おしゃべりは何年生なの?」
ク「同じ2年生です」
俺「他の子は?」
ク「チビちゃんが2年生であとの四人は1年生です」
好みのショートカットだったが、チビが2年生ってのは驚いた。一番チビで幼児体型で女の色気を感じない。って俺はどこを見てるんだ!
俺「あれ?3年生は?」
ク「もう、引退しました」
俺「あぁ、なるほど…」
白「あのぉ…」
俺「ん?」
白「年齢を聞いてもいいですか?」
俺「あぁ、二十歳。もっと若く見えるでしょ?」
白「十代だと思ってました」
俺「夜中に歩いてて、補導された事があるよ」
ク&白「あはははっ」
俺「時間大丈夫なの?」
ク「電話じゃなく待ち合わせ場所に集合になったんです」
白「全員そろったら学校へ行く事に決まってます。でも9時には戻ります」
俺「それなら平気か…どうでもいいけど、よくみんなこんな奴に時間使ってるね」
ク「夏休みが終わったら会えなくなるからみんな必死なんです」
俺「だ・か・らー俺なんかに必死になってもいい事ないでしょ」
白「みんな憧れてるから…」
俺「白も?」
うつむいちゃった…嬉しいんだけどどこかでまずいよなぁって思ってる自分がいる。悪魔と天使が取っ組み合いの喧嘩してる感じ…
ク「お仕事、時間大丈夫ですか?」
俺「あぁ、今日からペースを落としていいって親方に言われてるから」
ク「よかったぁ♪」
俺「なにがよかったの?」
白「あまり会いに来ると、お仕事の邪魔じゃないかと思ってたんです」
俺「二人とも誠実だねぇ」
ク「ぬけがけしてるのもあります」
俺「明日から毎朝来れば?」
白「私の家はおしゃべりちゃんの家の近くで、ばれるかもしれないんです」
俺「そかそか。でも二人ともおとなしそうなのに大胆だね」
ク「おとなしくないです。おにいさんの前だと緊張して…」
俺「じゃ、一日中緊張じゃない」
白「お仕事を見てる時は緊張してません」
俺「話すと緊張するの?」
ク&白「はい」
俺「じゃ、ぬけがけまでして話しに来なくてもいいじゃない」
ク「緊張しててもおにいさんと話してると楽しいから…」
このあと9時ぎりぎりまで話しをして、彼女達は帰った。そのあと仕事に戻るわけだが、なんか空虚感があって思うように仕事が進まない。眠いとか疲れてるって事じゃない切なさがあった気がした

しっかり仕事しろよ!って感じ…

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