見出し画像

【小説】クお白チ 005【第一期】

教室は飽きたし…時計を見ると3時まで1時間半強。教室は絶対終わらない。材料は全部用意してあったので、渡り廊下をやる事にした。重い腰を上げて脚立担いで教室を出ようとすると
チビが
「どこいくのさ?」
「渡り廊下」
手伝ってもらって悪いとは思ったんだけど、ちょっとウザくなってきてる…

2階にある渡り廊下。もう一つの校舎と繋がっているんだけど、そっちは扉が閉じてて入れない。コンセントとスイッチは付けてあったので灯具だけ。全部で8灯。天井も低いし机も無いので楽勝。東から西って計画を立てた。ゴミを捨てやすい順番
作業を始めると彼女達は廊下の脇に座ってるんだけど、クッキーと白い子は立って見てる
「なんで二人は座らないの?」
「初めて見るからよく見ていたいんです」
って白い子
「クッキーは?」
「えと、お仕事を見ていたいだけです」
見下ろすと、一番背の高い子と、ほとんどしゃべらない子の二人は廊下の脇に座ってジーっと見てる。他の子はガヤガヤ話してる。まぁ、いっかって思って仕事する。しばらくすると、立ったままジーっと見てる二人の視線が気になってしょうがない
「白、感想は?」
「電気って難しいですよね?」
「プラスとマイナスしかないからそんなに難しくないよ」
「私は物理が苦手なんですごいと思います」
ってクッキー
「俺は理科と数学しかできないから電気屋なんだよ。二人とも文系?」
「はい」×2
「でも、スポーツが出来るからうらやましいよ。俺は運動音痴だから」
「お仕事を見ているとそういう風には感じません」
って白い子。クッキーはうなずいてる
「二人は何年生なの?」
「二人とも2年生です」
ってクッキー。なんかかわりばんこに返事してるなってちょっと笑えた

なんだかんだ言いながらも、3時ちょっと前に終わらせた。机がないと早い。裏庭に行って、座ったら脱力。彼女達の相手をするのが辛い
「ちょっとさ、買い物行ってきてくれる?」
「アイスぅー?」
おしゃべりはいつも語尾を伸すよな…
「アイスとサンドイッチ。レタスとハムのやつかツナ。チーズはだめ」
「チーズ食べられないの?」
「食べられない。あぁ、あと缶コーヒー二本くらい欲しいかな」
「甘いコーヒーでいいのぉー?」
「ジョー○アがいい、無かったら何でもいいけどU○Cはきらい」
「了解♪」
お金わたして三人位で行こうとしてるから
「全員で行ってきて」
「なんでぇー?」
「ちょっと仕事の事を考えたいんだよ。一人にして?」
「分かりましたー」×8
みんなでぞろそろ歩き出した。ホッ…クッキーと白は2年。おしゃべりは3年だろうな…リーダーだな。あとが1年か?全然仕事の事考えてないしー
静かなんで、ぼーっとしてた。木陰を通り過ぎる風が心地よかった…

突然!
「サチーーー!」
「サチーーーー!」
親方の声。校舎に駆け込んで窓から
「ここーーー!」
親方が入ってきたと思ったら、彼女達が戻ってきた!俺パニック!
「おまえ作業服は?」
「3時だから脱いだ」
「どこにある?」
「渡り廊下」
「着て仕事してるよな?」
「ヘルメットは暑すぎてダメだったから、ハチマキ」
「渡り廊下終わったのか?」
「終わった。あとは1階だけ」
「点灯試験は?」
「なんとか終わらせた。点かなかったの一ヶ所だけだね」
「おまえ早いなぁ…で、この子達は?」
「あぁ、テニス部。仕事見てるのが好きみたいで、見てるだけ。たまに買い物に行ってもらって助かってる」
「おまえもてるなぁ…あやかりたい」
「この人、俺の親方ね」
親方は優しい人なんだけど、角刈りで目が細くて見た目が怖い。そしてものすごい口下手で女性が苦手
「よろしくお願いします…」×8
「あっ、あぁ…よろしく」
親方動揺してるし…
「親方、涼しいところあるから行きましょ」
「おっおぅ」
歩き出すと、彼女達もついてくる。ベンチに座ったら
「これ食べないとぉーとけちゃうよぉーあとジ○ージア無かったぁー」
「U○C以外なら何でもいいよ。アイスみんな好きなの選んで」
一個足りないから俺はサンドイッチ食って、アイスは親方にあげた。親方が道具袋から
「ほれっ」
ってアク○リアスを俺にわたす。クッキーが微笑んでる
「あぁ、どうも。なんでこんなに早いの?」
「移動の途中だよ。ちょっと寄った。すぐ違う現場に行く」
「何ヶ所抱えてるの?」
「うーん…ここを入れて4ヶ所だな」
「毎日違う現場行ってるの?」
「いや、その時々で違う」
「回りきれてるの?」
「おまえがここを一人でやってるから回りきれてる」
彼女達、だまってアイス食ってる…親方がアイス食い終わって、時計を見て立ち上がって
「女の子に怪我させるなよ」
「いや、手伝ってもらってないから」
「下にいた時に灯具が落ちたら大変だぞ」
「あぁ、そう言うのは注意してるから大丈夫。だよね?みんな」
「はーい」×8
「俺がこの現場やればよかったなぁ…」
「だって俺、運転免許持ってないからダメじゃん」
「いや、その前に俺にはこんな事する宰領さいりょうがないからダメだ」
「あははっ」
「じゃ2階、3階見たら行くから、怪我させるなよ。あとでな」
「気をつけて」
もっと彼女達の事を突っ込まれるかと思ったのでまた、ホッ…
「親方さんこわいねぇー」
「こわいこわい」×?
「私には優しく見えたよ」
「見えた見えた」×?
「親方は俺より優しいよ。見た目はちょっとあれだけど口下手で損してる」
「サッちゃんもぉー優しいよぉーしゃべるとおもしろいしぃー」
「あの人には仕事じゃかなわないよ」
「サッちゃん、カッコいいからいいじゃん♪」
「こんなぼさぼさ頭で、きったない俺がカッコいい?」
「お仕事見ているとカッコいいです」
って白。白に言われてまた照れそうになる…我慢
「さぁーて、仕事仕事ー!」
「はーい」×8

彼女達が帰って、薄暗くなってきたので渡り廊下の点灯試験。これは一発で成功。道具と材料と廃材を片付けて、完了!
親方が来るのを待つ間、この仕事ゆっくりやってもあと7~8日位だなぁ…って考えてたら、彼女達が愛おしく思えてきた…

真夏の夕暮れ時…缶コーヒーが苦かった…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?