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【小説】クお白チ 050【第一期】

普通の建築物は、1階か屋上に受電用設備振り分け用の大きなブレーカーボックスの部屋があり、各階には振り分けられた電源のブレーカーボックスが独立して付いている
この建物は、1階南側が幅2m位飛び出していて、そこに全てのブレーカーが入っている。その部屋を観察していたら、1年生が全員集まってきた。あれ?ボックスに下からの配管が来てない?上を見上げると、天井から太い配管が4本突き出ている…ボックスの一カ所の配線カバーを取ってみたら、電線が上から入って上から出てる…あれ?高圧受電設備だけ屋上?…天井に突き出たパイプが不自然だ…外工なのかな?
俺「みんなちょっとどいて」
「はい」×5
南側のドアから出て、外から見てみると、二機の高圧受電設備がその部屋の屋根に乗っかってる…こんなの見た事ない…建物が古いからか?受電設備は意外に新しい作りのものが設置してある。だからこの部屋だけ鉄骨の柱や梁が沢山あるんだ…
部屋に戻って、配管を見てみるが、結構新しい。何回かやり直してるんだろう
三カ所あるボックスの配線カバーを外し、端子をむき出しにする
俺「ラブ。ブレーカー側を背にしてテスターを俺が見えるように持っててくれ」
横から見てもすごいマツゲが長い…超可愛い…
ラ「分りました」
チ「なんでラブちゃんばっかりなの?」
俺「こういう時にはラブが好きだからかもね」
「えーーーー!」×5
ラブまで驚いてる
俺「あぁ、誤解させた。ラブは背が高いからこういう所ではラブが好きなのさ。俺はみんなの事が好きだよ」
ラ「誤解するようなこと言わないでくださいよ!もう!」
俺「ごめんごめん」
ラ「ビックリした…」
俺「それぞれみんなの得意そうな事で振り分けてるの分かるだろ?」
小「私とチビ先輩がコンセントだったのもそうですか?」
俺「そうだよ。香、ちがうページに記録を取って」
香「はい」
ブレーカーの電圧を測っていく。三カ所のボックス全部ほぼ正常値だった。記録を取らなくても平気だったかもしれない。ここで行き詰まってしまった。平静を装っているが、ドキドキは治まらない。昼の10分前
俺「原因特定不可能」
チ「分かんないんだ…」
俺「うん」
あれ?最後の配線カバーを付けようとした時に気がつく。電灯とコンセントでは配線の古さがちがう…これかもしれない…
俺「ノギスって分かる人いる?」
ム「私分かる」
俺「ね?得意分野で振り分けてるでしょ?」
香「あぁ、そうですね」
俺「ムック。青い工具箱の中に、グレーの箱が二つあるの。そのうちのどっちかがノギスだから箱ごと持ってきて」
ム「分かった」
ブレーカーを全部落とし、ムックが戻ってくる間に、コンセントと電灯の配線を二本ずつ外しておく。ムックが戻ってきたのでノギスを受け取り、配線の太さを測ってみる。電灯は2mm、コンセントは1.6mm…これかもしれない…
俺「ムック。戻してきて」
ム「うん」
俺「たぶん原因が分かったかもしれない」
チ「なに?」
俺「ムックがいる前で話したいから、先に裏庭に行ってて」
「はーい」×4
残りの配線カバーを閉じて、1~3階教室のコンセントのブレーカーだけ上げて、裏庭に向かう
チ「原因分かったの?」
俺「たぶんね。親方に聞かないと確定じゃないんだけどね」
香「なんなんですか?」
俺「説明して分かるかなぁ…」
チ「気持ち悪いから説明してよ」
俺「コンセントは配線が1.6mmで、蛍光灯は配線が2mmなんだよ」
チ&ム「あぁ…」
ラ「チビ先輩もムックちゃんもこれだけの説明で分かったんですか?」
ム「抵抗値の違い」
俺「おぉーすごい!さすが優等生」
チ「どう例えればいいかな?」
俺「太いホースと細いホースがいいんじゃないかな?」
チ「あぁ、なーがーいホースの場合、同じ圧力の水を流しても、細いホースの方が水の出が悪いんだよ。これが電線に変わっただけ」
小「なんとなく分かりました」
俺「厳密にいうとちょっとちがうんだけどね」
ラ「なにがちがうんですか?」
俺「銅線の抵抗率が同一とすると抵抗値は長さと断面積で変わっちゃうの」
ラ「ごめんなさい…分からないですよ…」
俺「知らなくてもいい事だからいいんだよ。さっきのチビの説明で十分だよ」
香「チビ先輩もムックちゃんも凄いですね」
俺「見かけによらず、二人とも優等生だからな」
チ「私はまだしも、見かけによらずってムックちゃんに失礼だろ!」
俺「じゃ、見かけによらずはチビだけにする。ムックごめんよ」
チ「なんで私ばっかりそうやって意地悪してさ!」
俺「自分で 私はまだしも って言ったじゃないか!」
チ「ブーーーーー!」
「あはははっ」×4+俺
俺「ムック、工具の名前はほとんど分かるのか?」
ム「おにいさんが腰に付けてるのは全部分かる」
俺「電線の皮むきに使う道具は?」
ム「ワイヤーストリッパー」
俺「おぉーすごい!どこで勉強してるんだよ?」
ム「カタログとかいろいろ見てる」
俺「俺の腰道具、右から言ってみ」
ムックが俺の後ろに回り込み、しゃがんで
ム「プラスドライバー、マイナスドライバー、ペンチ、ニッパー、腰袋、枝切りバサミ、ウォーターポンププライヤー、パイプレンチ、ハンマー、電工ナイフ、スケール」
俺「全部正解」
「すごい…」×4
俺「得意な学校に行けるといいね」
ム「うん♪」
クッキーと白とおしゃべりが同時に現れた
俺「おっと、話し込んでしまった。飯にしようぜ」
「はーい」×8

ムックの将来とチビの弁当が楽しみだ…

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