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取っておいた街の名前~ゲームデザイン事始め③~

『クーロンズ・ゲート』といえば「クーロンフロント」を連想する人が多いと思う。この「フロント」の出どころは、実はパソコンである。日本語変換機能をして「フロントエンドプロセッサ」という。元は機械のための前処理的な意味合いだが、日本語変換の仕組みが同じであることからこう呼ばれた。機械の側から見て最も人間寄りに位置するというニュアンスを感じる。この「機械側から見る」という視点が面白いと思った。
陰界とはヒトの思念が凝集して、平行世界の奥深くに再構築された場所だ。現在ではもっと設定を掘り下げてあるのだが、とにかく「向こう側」から見上げた時、陽界と接する最も「フロントエンド」な場所、それがクーロンフロントというわけだ。
クーロンフロントの設定が固まると、後は早い。フロントに接続するダンジョンを設定すればいいので、実際に九龍城砦にあった路地の名前を付けていった。「龍城路」「大井路」──
「龍城」という字の組み合わせ、とてもかっこいいのだが、実は魅力的な名前の路地がまだあった。陰界を漂う九龍城砦には極めてアイロニカルな名前で、いたずらに目立つ。それが「光明路」である。でももったいないから、取っておこう。なんか、そう決め込んだ。(この根拠のない決め込みこそがゲームデザイナーに求められる唯一の資質ではないかと密かに思っている)
その「お取り置き」が25年ぶりに活きてくる──
『クーロンズリゾーム』で描く街こそがまさにこの光明路だ。広さにしておよそ9ha(9万平米)、渋谷ハチ公口から道玄坂を登りきって今度は246号線を降りてくる範囲に相当する。光明路の街中には、光明路電脳中心、医療中心、図書中心、光明商場や光明飯店、金巴利(キンバリー)酒家、それに福建土楼の円形住宅まである。また出現と消失を繰り返す不思議なビルがあったり、クーロンフロントに繋がると噂されるビルもあったりする。この路地で構成された街区をひたすら彷徨って、シナリオを進めていく。今作のゲームデザインの舞台となる街である。
※九龍城砦では「光明街」であり「光明路」に表記されるのは公園に整備されてからだ

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