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「情報整理大全」シリーズvol.2 創刊に際して〈後〉-手帳は紙に限るのか? -

前回の記事では、日本のデジタル手帳の市場にて、Evernoteがトップに躍り出た過程を見てきました。

一時は覇権を握ったかに見えたEvernoteでしたが、それでもデジタル手帳への移行を促すには至りませんでした。その過程を見ていくところから始めましょう。

スマホアプリとスケジュール管理が手厚くなかったEvernote

熱心なユーザーにしてみればとても不思議なことに、Evernoteのスマホアプリは決して「あらゆるユーザーに優しい」とは言い難いサービスでした。

よくいわれるほど「使い物にならない」ものでは決してなかったのですが、スマホやiPhoneからEvernoteを使うケースと、パソコンのEvernoteを使用するケースでは求められる機能が異なります。そしてスマホに求められる機能のほうは、はっきり言ってしまえば貧弱なものでした。

スマホで「ノートの情報」を本気で扱うのは、多くの場合には「移動中」や「出張先」です。駅のプラットホームやタクシーを待っている最中に必要とする情報は「行き先」や「予定時刻」や「乗換案内」や「食事」のはずです。

そういったときに、情報を「取り出す」ための時間はあまり確保できません。できれば一分、理想的には数秒で「情報」を得たいと思うものです。

それにもかかわらずスマホアプリのEvernoteは、しばしば起動自体に1分以上かかっていたし、検索にいたっては1分以内に終わることのほうが少ないくらいでした。

また、Evernoteにはカレンダーという機能がありません。つまり何月頃に入力した情報が欲しいとか、何月何日に使う情報が欲しいとき、直感的に操作する手段が最初から抜けているのです。

信じがたいことではありますが、アプリだけでEvernoteを使いこなすのは数年を経ても困難なまま、Evernote一強時代は終焉を迎えつつあります。起動も検索も速くはなりましたが、一般的なデジタルメモアプリに比べてお世辞にも軽快とはいいがたいままです。

なにより、小学生でもスマホをもっている時代を迎え、
・情報がクラウド上にあるのはすでに当たり前
・タブレットやスマホしか持っていない(PCは買わない)人が増えてきた

なかで「スマホで手軽に情報を扱える」印象がEvernoteには薄いのです。

依然として紙の手帳なのか?

 Evernote一強時代が終わり、再び「浮動票」をめぐってたくさんのデジタルノートサービスがしのぎを削るようになったのが最近の傾向です。

名前だけを適当に列挙するなら

Scrapbox
Notion
Obsidian
Todoist
Dynalist
WorkFlowy

といった「デジタル情報整理サービス」が次々と登場しています。今後しばらくの間はその数を増やしていくはずです。

これらはすべて「クラウド対応」であり「スマホで使用可能」であり「検索が容易で軽快」です。

この中から「自分にあった最強のデジタルノート」を使えるようになれればいい、と考える人が少しずつ増えているはずです。

本書は、そのような人のためのオリエンテーションとして位置づけられればという気持ちで作りました。

最後に1つだけ気になることを書いておきます。

私は上に列挙したデジタルノートの「顔ぶれ」からして、話は簡単なようで、そうでもないという気がしています。

上にあげたツールに、Evernoteと似ているものはひとつもありません。
たぶんデジタルノートは「Evernoteのようであるべきだ」という発想は、Evernote一強時代の終わりとともに、終わったのかもしれません。

ポストEvernoteとして上のツールのどれかを選んでみても、しっくり来ない人が多いかもしれないのです。

ためになりそうな情報をウェブクリップして、仕事で使う連絡事項をメールからコピペして、後で使いそうなアイディアを直接放り込み、旅行先で必要となるチケットなどを後から取り出すために、デジタルノートを使いたい。

こういう発想なら「Evernote」はわかりやすかったわけですが、最近のデジタルノートは決してそうしたものではないのです。

本書を作りながら私は「どうしてそうなんだろう?」といったやや込み入った「根源的な」問題について頭を悩ませているところです。

ぜひ読者の皆様も、とくにポストEvernoteを求める方には、次のこれは本当にこれでいいのだろうか?という点を深く自問しつつ、次なる一手を選択してみて欲しいのです。

そのためにぜひとも本書を手に取って頂き、役立てていただければ幸いです。

前回の記事はこちら👉


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