見出し画像

vol.6 「マーケティングコンテンツ制作の外注予算がない」BtoB企業が、かなり危険な理由

こんにちは。BtoBマーケティング コンテンツ コンサルタントの宮﨑晃彦です。2019年8月に『 [デジタル+オフライン] BtoB企業のためのマーケティングコンテンツ制作ガイド』を出版後、noteで何本か記事を投稿しました。

今回は、内容がセンシティブなため書籍に収録できなかったことを、包み隠さず本音でお話しします。BtoB企業の経営者の方はもちろん、「自社の経営層がコンテンツ制作予算に対する理解がない」とお悩みの担当者の方にもぜひ、お読みいただきたい内容です。

■前提:
BtoBマーケティングを推進時、
コンテンツ(最適な営業情報発信)制作がボトルネックとなり多くの企業が“疲弊“している


*この前提についてはVol.1でも書きましたが、さらに詳しくお話しします。

マーケティング領域では2010年代前半頃から「コンテンツマーケティング」というワードが用いられるようになりました。

15年以上、マーケティングのコンテンツ領域を専門に活動し「コンテンツマネジメント」というソリューションを開発し多くの企業に提供してきた私は、このワードが登場した時、「おぉ、マーケティングにおけるコンテンツの重要性がようやく認知されるようになったなぁ」と感慨もひとしおでした。「いよいよ時代が自分の主張に追い付いてきた」なーんて、偉そうなことを感じたのです(笑)。

なにせ2000年代前半、「コンテンツ」は放送やエンタメのキャラクターライセンスとしての認知しかなく、BtoBエリアでは「コンテンツマネジメントシステム=CMS」の認知度の方が圧倒的。私が提供する「コンテンツマネジメントソリューション」は「Web構築の仕組みですか?」と勘違いされるありさまでした。それが徐々に浸透し、2015年に「コンテンツマーケティングEXPO」が初開催された際には真っ先に出展しました。

ところが。その後の普及に伴い、いまでは私はこの「コンテンツマーケティング」というワードがキライです。
その理由は、私の考える「マーケティングコンテンツ」とは乖離があり、誤解を生んでいるからです。

***

私が「コンテンツマーケティング」というワーディングがキライな理由

なぜ好きじゃないのか。BtoBの現場を長年見続けてきた(いまも継続中)私は、まだデジタルだけですべてが解決するほど、BtoBマーケティングと市場は成熟していない、と感じているからです。

もちろん、デジタルは重要です。いまやBtoBにおいても見込み顧客の製品比較・検討はWeb上で行われ、そこをクリアしないとリアルな商談にたどり着けない時代です。言ってみれば、デジタル空間で一次予選が行われているワケです。

しかし、BtoBの本選は、いまもってフェイストゥフェイスの商談です。その際に活用されるのが、オフラインコンテンツ。印刷されたパンフレットやリーフレット(チラシ)、提案書のパワーポイントなどのことです。

ですので、BtoBのマーケティングにおけるコンテンツは、デジタルとオフラインの明確な役割分担を基に、トーン&マナーを揃えて、メッセージの粒度やレイヤーを整えて全体最適の視点でその両方を整備する必要があるのです。

BtoBにはメーカー・卸・リセラー(二次店/販売代理店)などの商流があります。社内にも、取引先にも担当者、情報システム部門、事業執行層、経営層など複数の意思決定部門と人が複数、重層的に存在します。この点がBtoC、ECなどとは大きく違います。自社の対面商談からの上申、そしてパートナーやリセラー企業の彼らの営業活動が、メーカーのWebページやブログ記事(デジタルコンテンツ)だけで、本当に対応可能でしょうか?どう考えても答えはNoですよね。

そのあたりをまるきり無視して、「コンテンツマーケティング≒オウンドメディア≒ブログ」みたいなデジタル一辺倒の論調に、猛烈な違和感を覚えるのです。

***

ではなぜ、誰も「オフライン×デジタルのコンテンツ」を語らないのか。

その理由は2つあると考えられます。

理由その1:コンテンツを「語りたくない」から

マーケティング活動ではKPIが設定され、効果測定が行われます。その時にオフラインでの商談、コンテンツは数値測定が不能で、含めると都合が悪いのです。だから多くのマーケティング屋さんのロジックでは、オフラインは「ないもの」としてスルーされます。

さらに、BtoBのマーケティングコンテンツ制作業務自体が高度で難解で、一点もののカスタムメイド。超・労働集約型でスケールしにくいビジネスモデルです。オマケにBtoCに比べ、予算も少額。多くのマーケティング屋さんはその受託制作ビジネスを卒業し、スケールアウトするサブスク型のプラットフォーマーを目指しています。誰も、タフすぎるコンテンツ受託制作という泥沼にはまり込みたくないワケです。

理由2:コンテンツを「語りたいけど語れない」から

BtoBは内容も商流も複雑ですし、固有の問題もいろいろあって難しいと言われています。私から見るとBtoCの方がよほど大変だし、高度な施策が実施されているのですが、BtoBは数値化されない部分が多く、別の難しさがあるのは事実です。

そして、コンテンツ制作会社のスタッフにビジネスマインドがある人が少ない。多くはデザイナー、Webコーダーなどのクリエイターで、ビジネスパーソンではない。そのためお客さんから見ると違う世界の人に見える。モノ作りやデザインの専門家ではあるけれど、ビジネスがほんとうにわかるかと言われるとわからない。だからどうしても「下請け業者化」せざるをえない。

これらの要素が絡み合って、誰もデジタル×オフラインのコンテンツを語らないのではないのではないでしょうか。

その結果、BtoB企業の多くは

「コンテンツを誰に頼めばいいんだよ……」
「予算はいったいいくらぐらいかかるのよ……」
「どう依頼したらいいんだよ……」

など分からないことだらけで、「自力で頑張るしかない」、となってしまっているのです。

事実、この1年余り、私のところに寄せられる相談の多くは

「コンテンツ制作がマーケティング実行のボトルネックになっている」
「内製で何とかしようとしてきたが限界を感じている」
「いま依頼している制作会社がビジネスを理解してくれず、単なる作業者でやり取りの負荷が高い」

といったものが激増しています。

実際にお話を伺うと「コンテンツ制作がこんなにシンドイとは思っていませんでした」と、皆さん疲弊しています。

***

■本題①:コンテンツ制作に予算をつけられない理由とは?

ここからが書籍で丸々カットした部分です。

テーマ:なぜBtoBマーケティングのコンテンツ制作に、なぜ企業は「予算がない」のか。

コンテンツは(マーケティングも含めて)コストセンターと捉えられています。売り上げを稼ぐプロフィットセンター(=営業部門)には含まれません。そのため、何かコンテンツを作ろうとしたときの制作費はコスト=削減対象と見なされます。そこで必ず言われるのが「費用対効果(ROI)を示せ」、というお言葉です。

当然の要求ですし、気持ちはわかるのですが、もうその考え方自体が古いのです。
以降、その理由を説明します。

***

第一の理由。「ROIの解となる数字をBtoB企業が把握できていない」

「コンテンツ制作の費用対効果を示せ」という要望に対して、私はお客様企業によく次の質問をします。

「それでは、自社の商談の平均成約率は何%ですか?」
「CPA(顧客獲得単価)はいくらでしょうか?」

すると、ほとんどのBtoB企業は答えられません。営業活動がデジタルで完結せず、属人的なブラックボックスの中で展開されています。さらに自部門、ヘタすると自社でもセールスプロセスが完結しません。だから、正確に数値化できないのです。

一方で、BtoC企業はこれらの数字は必ず把握されています。例えば通販、ECサイトなどでこの数字を持っていなければ何もアクションできないくらい、基本中の基本の数値です。これがあって初めてROIが算出できるのです。しかし、BtoBではここが誰にも見えていません。

***

第二の理由。マーケティングもコンテンツも商談を生むための施策であり、残念ながらその成果は売り上げ=数字ではないから

BtoBはマーケティングやコンテンツでいきなり売上!ではなく、その後の商談によりクロージングになるまで、現場の営業の方々が汗水垂らして活動されています。なのに、「このうちの●%はマーケティング、コンテンツのおかげ」と誰が判断できるのでしょう。実は外資では、初めから売上の●%がマーケティング、コンテンツの成果、と決めて測定する企業も存在します。そうしないと、成果が数値として見えないからです。しかし、日本企業ではその考え方は理解されません。

***

第三の理由。コンテンツは複数年でだんだん価値が増大していくから

実例ですが、コンテンツは3年前に書かれたブログ記事から、ある日突然、問い合わせが来て商談に至ることがままあります(Google指標では、コンテンツが表示された年月が評価基準にも含まれるため古い記事が上位表示されやすい)。また、ある特定の施策用に作られたコンテンツが、当初予定していなかったところで活用され、効果を発揮することもあります。営業用の企業紹介ビデオが採用にも活用されたり、製品紹介パンフやビデオで、協業が生まれることもあります。これを単年度会計のROIで評価しようとしても、カンタンにはいかないお話なのです。

ですから、「コンテンツ制作のROIを示せ」という問いは、「答えのない方程式を解け」と言われているのと同義なのです。

その矛盾を解消する考え方として、ROIでなくてKGI、どちらかといえばKPI。「施策のプロセスごとの指標を定め、それに対して、到達している/到達していないで考えましょう」、ということが、何年も前から言われています。

確かにマーケティング、コンテンツは=売上ではなく、それを作るための「仕組み作り」なので、KPIの考え方が合うのは、間違いありません。

しかし、この議論もかならず苦しくなります。

KPIを設定し評価することは試作実行上必要ですし、そのために努力する必要があります。しかし、そこだけで判断して「効果が見えないから(コンテンツ制作を)実行しない」と決断を下すのは、もう古い考え方ですよ、というのが私の主張です。

それでは、どのように考えるべきなのでしょう?

***

ここから先は

3,437字 / 1画像

¥ 800

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?