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東北のおいしいこころ〜陸前高田のプリンと牡蠣〜

 陸前高田は交通があんまり便利ではありません。電車はありません、バスはあるけれど観光するにはなかなか不便なタイムテーブル・・・なので、自転車をレンタルしてまちをまわることにしました。

 まちの中心部から大船渡市方面に伸びる道「アップルロード」を走ると、山に沿ってりんご畑が広がっていました。たわわに赤い実をつけた様子がかわいくて、思わずスケッチしました(ペイントしたものが見出しの絵です)。
 丘をのぼると、穏やかな海と畑が見えました。美しい景色だなぁ、日本って美しいんですよね。

 お、なんだあれ。目の前には「プリン」ののぼり、お菓子屋さんのようです。吸い込まれるようにお店の横に自転車をとめて、お店に入りました。はーい!と店の奥から元気な女性の声が飛んできました。「いらっしゃい、奥で作業をしてたもんで〜いま主人が配達に行っててひとりなんですよ」「あの、プリンをひとつください」「プリンですね、お店の中で食べます?」自分の家にきた親戚を迎えるような親近感で迎えてくれた奥さんを、一瞬で好きになりました。

 しばらくして、奥さんがプリンとコーヒーを持ってきました。「飲みものはサービスね」わぁ、なんて気前がいいんだろう。ありがとう、いただきます。プリン、やさしい甘い香り、たまご風味で硬めのプリン、好きだなぁ、おいしい。カップの下の方におさじを入れるとじわぁっと出てくるカラメルも一緒に口に入れる、あぁしあわせ。おいしいってしあわせ。

 お店にはお菓子が所狭しと並んでいました。この南部せんべい、パンプキンシードが乗ってる、珍しいなぁ。「それ、うちで作ってるオリジナルの南部せんべいなの」「へぇ〜じゃあこれもください」「じゃあこれもおまけしちゃお、主人がいないから、今のうちにね」パパパッとお菓子を紙袋に入れてくれました。一個の南部せんべいが、5つくらいになりました。
「コーヒーも頂いたのにおまけまで・・なんだかすみません」
「いいのよぉ、遠くから来てくれたんだし、ウチもヒマだしね、時間があれば何かしてあげたくなっちゃうのよね」
「そういうけどさ、奥さん、忙しくてもこれくらいのおもてなし、しちゃうでしょ?」
奥さんは、豪快に笑っていました。

 中心部に戻り、自転車を返す前に行かなきゃならないところがありました「生牡蠣」の看板を見つけていたから、寄らないわけには行かない。
 10年前の震災の時に、海で育てていた牡蠣が津波に流されてしまった、けれど、事態を知ったフランスの牡蠣養殖をやっている人たちが助けてくれて三陸の牡蠣は復活を遂げた、というお話はとっても有名です。そういう牡蠣を食べずには帰れないですもの。

「困っている人がいたら、自分のできることで助ける」文化や宗教や世代などの違いに関係なく世界共通で、人間が生まれた時から持ち合わせている心意気だと、思っています。「忙しい」って「心を亡くす」っていう字です。忙しくしていたら誰かを想えなくなっちゃう感じ、私にもわかります。だからできるだけ心にゆとりを持っていたいと思います。私は、そういうふうなのが好きです。
 牡蠣は、こんな感じです。あぁ、食べたくなっちゃった。

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 今日も、最後まで読んでいただきありがとうございます。
 自転車で走っている時に、かさ上げ工事の方へ向かうダンプカーを運転しているおじさんが手を振ってくれたり、立ち寄ったコンビニの店員さんに「よい旅を」と声をかけてもらったり、お菓子屋さんのおもてなしを受けたり。土地で生きる人が、できる範囲のことをして、食べて、寝て、誰かを思いやる。心地よいこころの循環を、陸前高田で感じました。人って、あたたかいねぇ。

それでは、また明日。


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