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子宮で恋をしたことがあるか。3〜次のステージ編〜

第3章。

第1章。
https://note.mu/kimonoeru/n/nc39b9f296e1c?magazine_key=m8cc2be20cb2e
第2章。
https://note.mu/kimonoeru/n/n8321ba43b384



前回のお話のおばちゃんの出来事があって、

私は自分の気持ちをはっきりと自覚した。

どうしようもなく彼が好き。

私の扉を開けてくれて、新しい風を吹き込んでくれた。

でも同時に、私には受け止めきれない葛藤や苦しみを抱えていることもわかった。

それからというもの、とにかく苦しかった。

一緒にいて幸せだけど、それはまやかしだということも理解していた。

彼には彼女がいたし、仮に別れたところで私には支えられる自信がなかった。

素直に好きと言いたい。

その腕に飛び込みたい。

大きな心で、彼を受け止め愛したい。


でも、できない。

好きだと言っても、なにも変わらない。

彼は絶対に別れないし、私のところにも来ない。

だから私は、断固として好意を口に出さなかった。

結果がわかっているからじゃない。

口に出してしまえば、もう引っ込めない。

滑稽なほど、心が言っていることと口からでる言葉がぜんぜん違っていた。

認めるのが怖かった。

自分がどうなっちゃうのかわからないから。


彼はいつも、何かを相談すると

「本当は?」

と聞いてくる。

本当は?と聞かれたら、より心の声に近い答えが湧き出て来る。

心の声に素直にしたがって生きている人は少ない。

食べたい。会いたい。生きたい。話したい。

そういう、理由もなく湧いて来る欲望に忠実に生きることはなかなかできない。

でも彼はそうやって生きていた。

行きたいところに行き、会いたい人に会う。

いつだってシンプルに、自分の感じることにまっすぐだった。

それは世間一般から見るとよく映らないこともあるかもしれない。

パートナーは1人だけ、と決められた世の中では彼は浮気者でひどい男だ。

でも、自分の本当すらわからなかった私にとって、その生き方は魅力的だった。


だから、「本当は?」と聞かれたら

あなたが好きだ、と叫んでしまいたかった。

でも私は物分かりが良すぎた。

自分の与えられたポジションを理解し、理性で押さえ込んでいた。

あの頃私は、後ろから抱きしめられるのが好きだった。

愛情と、切なさと、葛藤でどんな顔をすればいいかわからないから。

そのまま静かに涙を流すこともあった。

相反する気持ちを同時に感じて、頭と心が戦った。

子宮が疼く。

頭で抑えきれないほどに子宮が疼く。

この人だ、と全身が言っている。

そんな経験は初めてだった。

だけど、私には全身でぶつかる覚悟がなかった。



そうしてある日。

いきなり彼にこう告げられた。

「次のステージに進む時がきた。もう泊まりにはこない」

ついに来てしまった。

恐れていた日が。

私の心の中は、

いやだ、いやだいやだ。

そんな気持ちや、

次のステージってなんだよ。

そんな怒りや、

やっぱりね。だと思った。

そんな諦めでぐちゃぐちゃだった。

結局私は、自分の気持ちを素直に伝えることはできなかったし

そんなのとっくにバレていた。

いろんな感情の海に溺れた。

よくある光景じゃないか。

ドラマや小説でなんどもこんな場面を見てきたはずだった。

でもこれほど心を、というか体ごと持っていかれるのははじめてだった。

そしてもう忘れよう、やめようとぐちゃぐちゃの顔に誓った。


そして2ヶ月後、止まっていた針が動き出した。


つづく。


#エッセイ #恋愛 #実話

言葉を綴ることで生きていきたいと思っています。 サポートしていただいた分は、お出かけしたり本を読んで感性を広げるのに使います。 私の言葉が誰かに届きますように。