さかなのせかい
魚を見ていた。
海と川がまじりあうその場所で、
わざわざ狭いところにひしめきあって。
魚は、私たち人間のことを認知しているのだろうか。
石をぽとんと落としてみた。
波紋が拡がった水の中で、魚は四方に散らばった。
この石を、魚はどう思ったんだろうか。
人間が落としたと、知っているのか。
もしかしたら、災害のようなものだと思っているのか。
台風がきたり、地震がおきたり、雨が降ったりするようなものだと。
あれ、ちょっとまって。
ということは、私たちも魚と同じかもしれない。
私たちが地震だと思っているのは、もしかしたら大きな巨人が歩いた音かもしれない。
雨は巨人の涙で、台風はくしゃみかもしれない。
さかなのせかいと、私たちのせかいは違う。
水面を隔てたその向こうのせかい。
けれど、なんだかちらっと絡まっている。
せかいは違うのに、お互いに干渉し合っている。
私たちにとっての魚は、食べ物だったり、ペットだったり。
水の中にいるいきもの。
でも魚からすると私たちは、避けようのない災害。
仲間が殺されたり、ごはんが撒かれたり。
お互いに見えているものはだいぶん違うんだろうな。
私たちのせかいは、絶対にまじりあうことはない。
違うせかいにいる人は、人間の中にもいる。
そもそも頭の中からまったく違う。
私からするとそれは、他人を否定することしかできない人や、
自分の考えを絶対に曲げない人。
その人たちのせかいと、私のせかいがまじりあうことはない。
何かが起こっても、それは災害ってことにしてしまえばいい。
絡まれたら災害。悲しい気持ちになったのは、雨だから。
雨は時間が経てば止む。
雨の世界で、どうぞたのしくお過ごしくださいませ。
私は私のせかいで楽しく過ごします。
言葉を綴ることで生きていきたいと思っています。 サポートしていただいた分は、お出かけしたり本を読んで感性を広げるのに使います。 私の言葉が誰かに届きますように。