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映画#3『モービウス』

今回はソニーピクチャーズによるSSU(ソニー・スパイダーマン・ユニバース)3作品目にあたる、『モービウス』の感想を語っていく。
『ヴェノム』そして続編の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』に続く今作は、スパイダーマンに敵対するヴィランである吸血鬼・モービウスの誕生譚を描いたものだ。
予告編の時点で数多くの伏線が貼られ、今後のMARVELの映画作品に一石を投じるものとして期待されていたが、新型感染症の影響による公開の延期を余儀なくされ、遂には『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の後に続いて公開される形となってしまった。
中々に可哀想な映画ではあるが、満を持して公開された今作をようやく鑑賞できたことはとても嬉しいことである。

※ネタバレ注意。

全体的な感想

正統派吸血鬼ヒーロー物としては上手く仕上がっていた。

物語全体としてはうまく吸血鬼のダークヒーローとしてまとまっていた。重度の血液病を患う天才医師マイケル・モービウスが、自身とコウモリのDNAを掛け合わせて血液病を治療するが、副作用として身体が血を欲しがる「吸血鬼」となってしまい、人間としての自分と吸血鬼として目覚めつつある自分の葛藤が描かれていた。

やはりSSUでは定番となりつつあるのか、上映時間が短くそれに伴いストーリーも比較的ハイテンポで進行していた。ここで個人的に思ったのは、上映時間の短さからか主人公の葛藤があまり感じられなかった点である。血に飢え、人工血液を飲みまくるシーンなど、吸血鬼化したことで苦しむモービウスを沢山見た反面、肝心の「人間か、吸血鬼か」葛藤する姿はもう少し欲しかった所ではある(むしろ、吸血鬼化したことで手に入れた察知能力などを割と積極的に使っていたし、物語が終わっても人間には戻っていなかったので、本人はかなり受け入れているのかもしれない)。

そんな今作の主人公を演じるのはジャレッド・レト。『ミスター・ノーバディ』の主演や、DCコミックの映画作品である『スーサイド・スクワッド』のジョーカーを演じた彼は、今作においてほぼ100点満点のハマり役だったと言える。彼の醸し出す色気、そして悲壮感は正にマイケル・モービウスの心情を的確に表していた。

※ネタバレ※エンディングの結末

彼も予告編に登場したことで話題となったが、
肝心の本編に絡むことはなかった。

エンディングでは、MCU作品『スパイダーマン:ホームカミング』にてマイケル・キートンが演じた「ヴァルチャー/エイドリアン・トゥームス」が登場した。前作の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』と同じく、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』での出来事に影響を受けMCUの世界線からこちらにやって来た様子である。再びヴァルチャーとして蘇ったこととなる彼は、モービウスと接触し「スパイダーマンに関係してこちらにやってきた。手を組まないか?」とモービウスに語りかけ物語は幕を閉じる。

スパイダーマンのコミック作品を読んだ人なら察しがつくと思うが、スパイダーマンのヴィランが手を組んだチーム「シニスター・シックス」結成の伏線であることに間違いはない。そこにヴェノムが参加するかは不明だが、今後単独作品として展開されていくスパイダーマンが、シニスター・シックスと対決する日はそう遠くないのかもしれない。

しかし、予告編で登場したマイケル・キートンが、『モービウス』本編ではなくエンドクレジットのみの出演だったのは少しガッカリではある。もし予告編には出さずに、サプライズとして出演していれば多少は印象が違っただろう。

「Murder(人殺し)」と書かれたスパイダーマンのポスター。
よく見るとサム・ライミ版スパイダーマンのスーツが描かれている。

この映画全体で言えることは、とにかく「予告編の作り方が稚拙だった」ことに尽きる。「予告編で告知されていた展開・シーンが思った通りに出なかった」ことが、この映画ではかなり多く見受けられた。
しかし本来はヴェノムの続編、そしてノーウェイホームの前に公開されるはずだった作品である為、予定を狂わされてしまった点については少し可哀想な映画だったと思う。
或いは、「NWH」にてSSUとMCUが繋がったことで、我々がこの作品に過度に期待しすぎたのかもしれない。ヒーローの1人1人が織り成すドラマ、広がる世界観、そしてエンドクレジットのサプライズ。これらはほぼ全てMCUが構築したジンクスであり、人気たる所以でもある。反面この作品は、「吸血鬼と化したダークヒーロー」「人と吸血鬼の葛藤」「親友を止める為に大切なものを切り捨てるヒーロー」を90分もの短い上映時間で描いていた。そういう意味では、この映画はヒーロー映画の「原点回帰」を果たした、現代においては希少な作品なのかもしれない。

それでは『ザ・バットマン』のレビューにてまた。

出典

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