見出し画像

映画#5『THE BATMAN -ザ・バットマン-』

『モービウス』をも凌駕する、圧倒的なダークヒーロー

アメコミ史上最も実写化がされたと言われるバットマンだが、今回のバットマンは従来のシリーズと全く異なる点がある。その最たるものは、ブルース・ウェインがバットマンとして活動している年数が未だ浅いということだ。その年数はたった2年。(加えて、ウェイン産業に関する活動は全く行っておらず、昼間は家に籠りっきりの生活をしている。まるで本当のコウモリのよう。)『ジャスティス・リーグ』にて登場する、ベン・アフレック演じるバットマンはかなりの年数を重ねたベテランのヒーローといった風貌だが、今作はそうではない。自らを「復讐」と名乗り、ゴッサムシティに蔓延る悪を圧倒的な暴力を以て制裁する……正にダークヒーローそのものである。

心にも深い影を落とす「病んだバットマン」

クリストファー・ノーラン監督の『バットマン ビギンズ』では、大企業の息子らしく金を湯水の如く使い、おおらかに笑う「ブルース・ウェイン」の姿があった。
反面今作は、毎日悪を倒し、しかし一向に良くならないゴッサムシティに絶望を感じ、それでもバットマンとして活動を続ける、シリーズとしてはまさに異例な「病めるバットマン」が主人公だ。事実、今作はコミカルなシーンというものは一切ない。ブルースは常に顔に影を落とし、誰にも笑顔を向けることはない。まるで「ブルース・ウェイン」と「バットマン」の2つの人格が存在し、混同しているかのよう。

「闇の騎士」であり「世界最高の探偵」でもある

今回のヴィランを務めるのは、連続殺人を繰り返し、殺人現場に「なぞなぞ」を残す知能犯・リドラー。今作のバットマンは彼の足跡を追う、言わば探偵のような役割も果たしている。
単身で殺人現場に訪れることもあれば、ゴードン警部補や「キャットウーマン」ことセリーナの協力を仰いだり、果てにはヴィランたちの本拠地に単身殴り込みに行ったりと、あらゆる手段を駆使しリドラーを追っていった。

コミックスでも「World's Greatest Detective(世界最高の探偵)」と呼ばれるバットマンだが、彼は同時に「Dark Knight(闇の騎士)」でもある。クリストファー・ノーラン監督による「ダークナイト・トリロジー」や「DCEU」でのバットマンに比べると今作はあまり戦闘シーンがない(その分探偵活動にあてている)のが特徴だが、それでもゴッサムシティを守る「闇の騎士」としての活躍は十分に描かれていた。

例えば、もう1人のヴィランであるペンギンとのカーチェイス。戦闘シーンが少ない今作では稀なスピード感のあるアクションシーンだが、ヒーローであるハズのバットマンをあたかも悪役のように描いていたのが特徴的だった。ペンギンがバットマンから逃走する姿を主観的に描き、そして最後に追い詰められたペンギンの目に映るのは、炎をバックにこちらに歩み寄ってくるバットマン。

正に「ダークヒーロー」と言うに相応しいシーン。

もはやどこから見ても悪役にしか見えないシーンである。
従来のバットマンの映画に比べてダークさが増している今作は、バットマンが「闇の騎士」と呼ばれたる所以を描き切っている。

「復讐」から「ヒーロー」へ

序盤ではチンピラに向かい「俺は復讐だ」と自身を呼んでいたバットマン。しかし、キャットウーマンとの出会いや自身の父親が犯した「罪」を受け入れ、そして最終的にはリドラーの野望を打ち砕くことのできた彼は、やがてゴッサムシティの「」から「」となっていった。
街の指導者を失ったゴッサムシティは、瞬く間に混乱へと飲み込まれていくだろう。つまり、バットマンの物語は始まったばかりなのである。

総評

上映時間は3時間とかなりボリュームのある作品だったが、個人的にはとても楽しめた作品だった。
ラストのクレジットシーンでは、リドラーと何者かが会話しているシーンがある。監督曰く、彼は『エターナルズ』にも出演した「バリー・コーガン」演じる「ジョーカー」だという(とは言え、かなり予想はついていたと思うが)。
実は未公開シーンにてバットマンとジョーカーが対話する場面が存在していたが、かなり物語の核心を突いた発言をしている為ボツとなってしまったらしい。(というか、リドラーのキャラが完全に潰されてしまう笑

今後は今作を含め三部作としてストーリーが展開されていくらしい。非常に楽しみである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?