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『マザー・スノー』育った環境か、性質か。

『龍』

彼は優希と、ボケナススカタン野郎との間に産まれる『はずだった』。

優希が自身の働くドラッグストアで、全国のスタッフに募集中のキャラクターデザインコンテストに優勝してしまったら、彼女はそのボケナススカタン野郎の目に留まってしまう。

優希は龍を産んですぐ、ストレスの為に亡くなり、龍の生い立ちはボケナスによって悲惨なものになる。

そんな誰も幸せにならない未来を捻じ曲げる為、宇宙人アデルはわざわざ未来から来たのだ。

正直、こんなのは反則技だと思う。

「ねぇ、私の息子?の龍って子は、一体誰が育てたの?そのボケナスが1人で育てたの?」

宇宙船の中をウロウロ散策しながら、優希は尋ねた。

「シッターさんが居たから、龍が赤ちゃんの頃のお世話をしてくれる人は居たんだ。
おむつ交換とか、ミルクとか離乳食とか。

どんな赤ちゃんでも、抱っこされたり、笑顔であやされたりしたことが一度も無いと、
2歳までに命を落とすっていう実験結果があるんだ。

昔、そんな恐ろしい実験をした人が地球に存在したんだよ。

ボケナスはね、大金持ちなんだ。
アイツのお祖母さまがね、大地主で。
皇太后みたいな人さ。

一番末の孫息子のアイツを、それはそれは溺愛していらっしゃった。他の孫より特別に。

不動産や資産を生前贈与してたみたい。

アイツはアルバイトすらしたことがない、超が付くおボンボンって訳さ。

アイツの手に入らないものなんて、何も無かった。
高校も大学も、真面目にお勉強なんかしなくたって卒業出来た。超、お金持ちだから。

解るだろう?
そんなふうに育ったら、人間はどうなるのか。」

丸窓から銀河を覗き込みながら、優希は考え込んだ。

「お金持ちに産まれることは、全然悪いことじゃなく、むしろ良いことやと思う。

貧しい家庭に生まれ育って、悲惨な目に遭ってきた人の話を、ネット掲示板で読んだことがあるから。

だから、その龍って子にはベビーシッターさんが居てくれてて、ほんの少しだけ安心した。

要するに、そのボケナスは育てられ方が間違っていたってことやんな?

ソイツのバアさんは、無責任に甘やかすことを愛情やと思い込んだ、と。」

「そうなんだよ。

でもきっと、甘やかされて育てられた人の中にも、優しい人間は居るのだろうし、厳しく育てられた人の中にも、ヤバい性格の人間は居るのだと思う。

僕も総ての人を見てきた訳じゃないから、はっきりとは言い切れないけど。

持って生まれた素材なのか、前の人生の性質を引きずっているのか…。

君の関西弁なんて、完全に前の人生を引きずっているだろう?

君は全く持って、関西で生まれ育ってはいないのだから。」

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