『マザー・スノー』浪漫飛行へ良いんですかい?①
" 『おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。』
君は知らないかもしれないけど、この地球でも有名な『ことば』だ。
これはお金とか、物質的な話をしているんじゃない。
目に見えるものの話じゃない。
目に見えないものの話をしているんだ。
内面の塩分量のことだってそう。
例えば他人を苦しめ、痛めつけ、その人から総てを奪い取ったとしても、本当は逆なんだ。
他人から奪い取った人は、奪い取った分、奪い取られる。
自分の中の塩分量を、ごっそりと。
そして、傷つけた相手に与えられるんだ。決してお金で買うことなど永久に叶わない、貴重な貴重な自分の塩分を。
相手は豊かな豊かな『塩け』に充たされる。"
何やら難しい話をし始めた宇宙人アデル。
優希の頭では理解が到底追い付かない。
掛け布団からそっと脱皮した彼女は、ベッドの上にちょこんと正座する、お人形サイズのアデルに目を移した。
ファウンテンブルーの真っ直ぐな瞳で、こちらを見つめる小さな宇宙人。
" もう少しここでお菓子を食べていたいのだけど、そろそろ戻る時間だ。
君も一緒に来てもらうよ。君と、君のお菓子も一緒に。それから、ミルクも。"
流石にヒトのモノを食い過ぎだろう。
そう突っ込もうとしたら、ベッドの頭側の窓の外が突如眩しくなった。
緑・赤・青・黄のランプがグルグルと、何かの周りを忙しなく回っているような…。
すると目の前に正座していたホログラム状態のアデルは、徐々に霞んで消えていった。
優希は恐る恐るカーテンを開ける。
すると何と、一軒家の丸々2階部分ほどの大きな大きな宇宙船のようなものが、隣の家の上空辺りに浮かんでいるではないか…!!
その船は円形で、いくつもの丸い窓とランプとを船の中心部分に張り巡らしている。
カラフルなランプがご近所中を照らしながら、船は水平回転していた。
そのランプの回転はどんどんどんどん早くなっていく。
優希はその忙しない動きを目で追っていたが、途中で『プツッ』と意識が途絶えた。
彼女は薄っすら目を開ける。ぼやけた視界をクリーム色の光が包み込んだ。
「ようこそ!カムナ☆マイ・ハウス!!」
脳内に直接ではなく、耳に聞こえる宇宙人の声。
仰向けで横たわっている優希を起こすべく手を差し伸べるのは、等身大サイズのアデルだった。
宇宙人は左手を差し出して来たが、自身の右手には何かを持っている。
「?!あーーー!!それ!私の牛乳が入ったグラスやん!!いつの間に持ち出したん?!というか、ここはどこやねん!!」
「僕の宇宙船の中だよ♪」
アデルは何やらモソモソした声でそう答えた。
「アンタ今、私のクッキー食べてるやろ…。」
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