今、登山者にできること

新型コロナウィルスが蔓延している。自粛ムードが続き、気分転換に山登りにでも。そう思うひとは多いことだろう。けれど、こんな時こそ、私たち山を愛するひとたちが最重要課題として認識すべきが「山でケガをしないこと」「コロナを出さないこと」だと思う。

確かに、山歩きは気分転換にもよいし、適度な運動は免疫力を上げるためにも効果があることだろう。けれど、仮にこうした状況で、山中で遭難を起こしてしまったら…。世間一般として山は遊びであり、遊びによって医療資源を当てることにでもなれば、非難されることは明らかだ。また山で、例えば山小屋などで集団感染などが起きた場合、当然ながら山小屋は営業できなくなるだろうし、場合によっては山自体の入山制限が検討される可能性だって充分にある。

なにも山に行くな、と言いたいわけではない。

むしろ逆で、まだその状況に至っていない今だからこそ、登山者にできることはあるということをいいたいのだ。山に行く際は、咳エチケットなどのふだんから行っている基本をしっかり守り、ケガや遭難については充分に注意することを前提に以下3つを提案したい。

第一に、メジャーな山域(東京でいえば高尾山など)は一旦避け、近場の自然を楽しむことにも目を向けてはどうだろう。これは、感染を防ぐという意味もあるが、身近な自然を楽しむことで山登りの世界が広がるという面もある。そう考えれば、日帰り低山や自然歩道、歴史道など遊べる場所は多々あるはずだし、感染リスクが減るので一挙両得である。また、日帰りの山であれば遭難する危険性はそこまで高くないはずである。

第二に、集団行動を伴う活動は控えること。登山に向かうまでの公共交通機関、車の乗り合わせなど、充分注意して欲しい。例えば集団登山などがあるが、いくら山中は密閉空間ではないとはいえ、集団行動をしていたら、それなりのリスクはあるだろう。直接的な集団行動とは異なるが、仮に宿泊するのであれば、こうしたリスクにも配慮は必要である。

第三に、ひととひととの距離をとること。仲間と山に登ったり、また登山が終わった後の食事や入浴などは不特定多数と接する機会であり、気をつける必要があるだろう。もちろん、前提としてはそうした状況は避けるべきだが、仮にそうした状況が避けられないのであれば、ひととひととの距離は2m程度を確保して欲しい。この数字は海外で実際に運用されている数字であり、どこまで実効性があるかは不明ではあるが、ひとつの指針となりうるだろう。

以上の提案は、今後実践していくなかで訂正も必要となり、「山ヤのためのコロナ対策」なるものがブラッシュアップされていくのかもしれない。けれど、こうした状況でも山を楽しめる環境をこれからも維持できるよう、みなさまの協力をいただきたいと切に願っている。シェアはもちろん、意見、アドバイスなどあればぜひお願いしたい。

この夏の輝かしい夏山登山に向け、みなさんもこの一歩を。

『山歩みち』編集長
木村和也

※『山歩みち』034号(4月下旬刊行予定)ではカナダの実例を紹介しながら、コロナウィルスと山登りについての記事を掲載予定

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